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異世界転生がリアルすぎる!?  作者: 全州明
二章 勇者マサユキ編
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その勇者の名は

 両手剣を両腕で支えながら、ゆっくりと近づいて来るマサユキ。

「いいかアキヒト。努力は報われない。夢は叶わないっ!! それがこの世界の、答えなんだよ!!」

 振り上げられた大剣を、僕は籠手型の武器、ハンドバスターの拳で受け止める。肘までをおおうこの装備は、皮肉なことに対人用にも使える。

 拳と剣とでつば迫り合いになりながら、僕はマサユキに顔を近づけ、その瞳を覗き込んだ。

「だからって、なんで……」

 その瞳は、淀んでいた。

「憎いんだよ。なんの努力もしてないくせに、ヘラヘラ笑って幸せそうに!! そんなやつらが、憎いんだよ!!」

「ぐっ!!」

 剣に力を込め、無理やり弾き飛ばされる。しかしなんとか体制を立て直し、再びマサユキを見据えた。

「お前、何言って……」

「それにな、この仕事、結構儲かるんだぜ?」

 にやりと、牙をむいて笑う。その瞬間、ぞっとおぞましい寒気がした。同時に、体の底から熱が込み上げる。それはどうしようもない”怒り”だった。

「マサユキ」

「なんだよ」

「僕は、お前を倒さなくちゃならない。絶対にだ!!」

「ははっ。やれるもんなら、やってみろ」

 その目は、笑っていなかった。

「「はぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっっ!!」」

 同時に駆け出した僕ら。大剣を両手で横薙ぎに構えて走るマサユキ。一方僕は、右手を突き出してそれに迫った。

 けたたましい金属音とともに、両手剣が宙を舞う。

 仰向けに倒れ伏したマサユキのそばに、その剣は突き刺さった。

 お互い、息を切らして動けない。そんな中、口を開いたのはマサユキだった。

「……アキヒト。俺は、どうしようもないクソ野郎だ。はじめから、勇者なんかじゃなかった。誰かのために、そう思って動いたことなんて、ただの一度もない。ずっと、ユーリエを助け出すためだけに、奴隷商を襲って回ってただけだ。そうしたら、勝手に勇者って呼ばれるようになった。だけど、勇者は結局、ヒロインを救えなかった。笑えるよな?」

「笑えるかよ」

「アキヒト。ーーーー魔王を倒せ」

「は?」

「それが、元の世界へ帰るための、唯一の手段だ」

「!?」

「異世界人が、お前だけだとでも思ったか?」

 そう言って笑うと、マサユキは両手を投げ出し、仰向けのまま空を見上げた。

「ーーーーさぁ。殺せよ」

「……」

 返事は、とても返す気になれなかった。

 僕は地面に突き刺さった両手剣を抜き、マサユキをまたいで立つ。

「一思いにやれ。人一人殺せないようじゃ、この先やってけないぞ。ーーーー勇者アキヒト」

「……」

 どうしてか、ほほをしずくが伝う。

「早くしろ!!」

「うわぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!」

 僕は、剣を振り下ろした。それはマサユキの胸に深々と突き刺さり、鮮血が飛び散る。


 僕はひざから崩れ落ち、叫んだ。泣き叫んだ。

 いつまでも、いつまでも。

 シスターさんを見つけ出さなければいけない。

 魔王を、倒さなければ。

 けど、今だけは、泣いていたかった。


 騒ぎが収まった後、ペティたちが駆けつけてくれた。事情を察したらしいペティは、何も言わずに僕を抱きしめ、一緒に泣いてくれた。

 僕も泣き続けた。


 世界では、魔王軍の侵攻が起こり始めている。誰かが、立ち上がらなければ。

 涙ながらに、僕は決意する。

「ペティ。魔王を、倒そう」

 勇者アキヒトの冒険が、今、始まる。

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