ガーゴイルの蛇2
「怪しいもんじゃないよ」
両手をあげるその人影は、町の明かりに照らされ、輪郭が白く光っていた。紫のパーカーのような格好に、黒い長ズボンをはいたその女は、被ったフードから紫の髪をたらしていた。
「お困りのようだね。力を貸そうか」
「何?」
「あたしはニクロ、ニクロ・マンス。情報屋さ」
「情報屋?」
「『ガーゴイルの蛇』に仲間をさらわれたんだろ? 見てたよ。ってことは、今あんたたちは、『ガーゴイルの蛇』のアジトの場所が知りたいはずだ」
「知ってるのか?」
「知ってる。あたしゃなんでも知ってるよ。あんたのこと以外なら」
「は?」
顔をしかめる僕に、ニクロは距離をつめてのぞきこんでくる。そして、
「……あんた、この世界の人間じゃないだろ?」
「っ!?」
小声でささやいた。思わず、息をのむ。
「あたりかい? ハハハ、カマをかけたつもりだったんだけどね。まぁいいさ。それより、金はあるかい?」
「金?」
「ギルグだよ。あればあるほど良い」
「人の命がかかってんだぞ!?」
思わずカッとなってニクロの胸ぐらをつかんでしまう。しかしニクロは涼しい顔をしていた。
「知ったことじゃないね。知り合いでもない、身内でもない人間に、興味なんてない」
「そんな……」
「で、あるの? ないの?」
迷っている場合じゃない。僕はポケットから冒険者カードを取りだした。
「それでいい」
ニクロも冒険者カードを取り出す。両者を重ねることで、ギルグを転送できるのだ。
「『ガーゴイルの蛇』のアジトは、南の洞窟からさらに南西に向かった、バルグの洞窟にある」
「よし、酒場の人たちも呼んで、すぐに向かおう」
「うん!」
走りだそうとする僕の背中を、ニクロが引き止めた。
「待ちな、サービスしてあげるわ。アジトと言っても仮拠点だから、大勢で行くと勘づかれて逃げられる。少数精鋭で行ったほうがいいよ」
「……そうか、わかった」
ニクロの助言により、僕らは装備を整える時間も惜しく、二人で乗り込むことにした。早馬の馬車を雇い、すぐさまバルグの洞窟へ向かう。
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アキヒトたちが去っていったあと、ニクロは独り、笑っていた。
「ーーーーさて、この情報、やつらにいくらで売れるかしら」
高笑いするニクロ。そう、彼女は情報屋だ。誰の味方でも、ないのである。




