ダンジョン攻略へ!2
翌日。酒場で昨日あったことを伝えてクエスト報酬を受け取り、僕らは例のショップに来ていた。
「ハンド・ニードル、か」
手に取ったそれはハンドアーマーよりも断然厚みのある立派な武器だった。指をいれる凹凸の部分からものものしい三本のトゲが飛び出している。
『ハンド・ニードル 武器 アビリティ:打撃、斬撃、防御力小UP、打撃耐性、斬撃耐性 説明:防具としても役に立つトゲの生えたコテ』
ステータスも大違いだった。アビリティを見てもハンドアーマーの完全上位互換だ。値段もそれなりにするが、これまでの打撃に加え斬撃属性まで加わっている上に、耐性までついているようだ。迷わず購入にして、ペティたちに見せると、
「へぇ。さまになってるじゃない」
「いいですね!」
「うん」
上々な反応が返って来た。右手にはめた具合も良く、ハンドアーマーと違ってほどよく重い。二つ買おうか迷ったが、回復薬やMPポーションは各自一定量持っていた方が良いらしいので、今回は我慢することにした、
結局、僕の装備は右手にハンド・ニードル、左手にハンドアーマー、防具として安くて動きやすそうだったメッキ製のライトアーマーとなった。こちらは胴部分だけの簡易的な装甲だが、店主曰く、付与されている防御力UPの効果は体全体に効果があるらしい。
ペティも短剣がカーブを描いた切れ味の良さそうなものに変わり、マードラは小枝のようだった杖が枝をけずった立派なものにグレードアップしていた。そしてイアンの大ぶりな杖は、茶色からより打撃力の高そうな灰色のものに変わった。ずっしりと重い感覚に慣れないようだったが、その分手応えも大きいようだ。
「よし。回復薬もMPポーションもたくさん買ったし、バッチリね」
「受付のお姉さんの話では、南の洞窟はつい先日のゴブリン討伐クエスト後で落ち着いているそうですし、これなら大丈夫そうですね」
「うん!」
武器を買い替えて高揚しているのもあってか、イアンとマードラも張り切っていた。
早速四人で南の洞窟へ。前回の森よりも遠いらしいので、今回は馬車を乗り継いで向かうことに。
道中の馬車の中、僕は気になっていたことを尋ねた。
「そういえば、冒険者共通の目的ってなんなんだ? やっぱり、魔王を倒して世界を平和に、とか?」
「うーん、それもあるけど、やっぱりーーーー」
顔を見合わせる三人。
「「「ーーーー億万長者になることでしょ!!」」」
「は?」
「魔王を倒すと、それはもうものすごい額のお金が国王からもらえるらしいのよ!」
「お、おう。そうなんだ……」
世界平和じゃないのかよ。
聞くところによると、魔王は世界全体の王ではなく、その国ごとの最強モンスターを指すらしい。つまりは国の数だけ魔王がいて、各々の国でモンスターを統率しているということだ。
「じゃあ、人型じゃない魔王もいるのか?」
「はい、人型の魔王はむしろ珍しいですね」
マードラが答える。
「そうなんだ」
「人型の魔王は魔王の中でも上位種で、相当手強いらしい、です」
イアンが珍しく口を開いた。
「へぇー」
「そんなことより! そろそろ南の洞窟の攻略ルートを練りましょう!」
身を乗り出したペティがバッと地図を広げる。描かれた線が心電図のようにうねっているその地図は、洞窟内部の見取り図だった。
「入り口はココとココ。初心者向けなのは、こっちのルートかしら?」
見取り図を見ただけでモンスターの配置がわかるのか、三人はあーでもないこーでもないと作戦会議を繰り広げる。初見の僕ではまったくついていけなかった。
「アキヒトはどう思う?」
「え? いや、どう思うって言われても。こういうの初めてだし」
「それもそっか。えっとねーーーー」
ペティはモンスターの湧き具合や道の険しさ、灯りの数などを丁寧に教えてくれた。
それによると攻略ルートは大きく分けて三つ。モンスターが多く灯りが少ないが、道が平坦な上級者ルート、灯りが多くモンスターの湧きも普通くらいだが、道が険しい中級者ルート、そして、道が平坦で灯りも多いがモンスターの湧きが少ない初心者ルートがあるらしい。だが、僕はここで率直な疑問を抱いた。
「これって、初心者ルートを中心に進みつつ中級者ルートや上級者ルートに寄り道してくんじゃダメなのか?」
三人がポカンとした顔で固まる。
「どうゆうこと?」
「いやだからさ、例えばこの分岐点。左の中級者ルートをちょっと寄り道して、ある程度いったら引き返して右に進んだら一番おいしくないか? 上級者ルートも、おんなじようにちょっとだけ進んでから引き返してさ。まぁ、その分攻略に時間かかっちゃうけど……」
「「「それだ!」」」
「うわっ!」
目を輝かせて身を乗り出す三人。びっくりして荷台から転げ落ちそうになった。
「アキヒト、あんた頭いいわね!」
「確かに、それならギルグも経験値も稼げますし、道のりも平坦なので歩きやすそうですね」
「いいと思う!」
三者三様で褒められ、なんだか気恥ずかしかった。




