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選ぶ距離
ある日のヴァルガスの館。
咳が、小さく響く。
結花の頬は、熱で赤い。
「……ごめんなさい。迷惑かけて」
冷たいお茶を持ってきたユーリスに、声をかける。
ユーリスは一度結花を見ると、わずかに視線を和らげた。
「……構わない」
濡れたタオルを取り、そっと額に触れる。
「まだ、熱いな」
タオルを桶の水で絞り直し、静かに乗せる。
「ちゃんと休んでくれ」
そのまま、離れようとする。
「ま、まって……!」
思わず、袖を掴む。
ユーリスが目を見開く。
結花の呼吸が、乱れる。
――はっとする。
「ご、ごめんなさい……大丈夫です」
視線を外し、手を離す。
その手を、ユーリスがそっと取った。
「……遠慮しなくていい」
一拍。
「寝るまで、そばにいる」
優しい赤い瞳。
結花の心臓が、跳ねる。
ゆっくりと、瞼が重くなる。
ユーリスは、そのまま結花を見守っていた。
夕陽が、二人の間をやわらかく照らしていた。




