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エネの家に過ごすようになってから5ヶ月ほど経った。
「おはようございます、ご主人様」
隣で寝ていたエネを見ていたら、彼女は目を覚ましてはそう言った。
「あ、起こしてしまいましたか?」
「いえ、元々この時間に起きる予定だった」
素っ気ない態度で彼女はそう言う。
「それにしてもご主人様、昨日は激しかった」
「おい、誤解されるようなことを言わないでください」
「同衾している仲ですのに、随分とひどい言い草かも」
「確かに同衾はしていますけど……」
だって、この家にベッドが一つしかない以上、一緒のベッドに寝るようになったのは自然の流れだった。最初の頃は遠慮してたんだけど、この家にはベッド代わりになるソファのないため、休もうとするには一緒のベッドで寝るしかない。
おかげで、寝てる間にエネの柔らかい箇所が当たるのでホント居心地が悪い。
「あと、僕はお前のご主人様じゃない」
なぜか、エネは僕のことをご主人様と呼ぶので、そのことを咎める。以前は僕のことを奴隷と呼んでいたのに。
ちなみに、理由を聞いたところ「ご主人様と呼べる存在がいないと寂しいから」というよくわからないものだった。
「ご主人様、そんな意地悪なこといわないでください。泣いてしまいそうになる」
といってエネは泣き真似をするが、その顔は無表情のため、なにを考えているのか全くわからない。
まぁ、彼女なりの戯れだろ。
「それで、今日はどうするもりなの?」
「いつも通り冒険者ギルドに行きますよ」
「そう。だったら、朝ご飯の用意をするね」
「あぁ、ありがとうございます」
それから朝ご飯を食べた僕は家を出て、冒険者ギルドに向かう。
それにしてもエネの作る料理はどれもおいしいんだよな。一生食べていたいと思うほどだ。
エネの家にお邪魔するようになってから、僕は早速、冒険者として魔物を討伐して生計を立てることを選んだ。
「アメツさん、今日も来てくれたんですね!」
「はい、おはようございます」
冒険者ギルドに入ると、受付嬢が笑顔で出迎えてくれる。
「アメツさんが来てから、魔物の脅威に怯える必要がなくて、大変助かっているんですよ!」
「そんな大げさですよ」
「いやいや、大げさなんかじゃないですよ。ホントにホントに感謝してるんです」
と、受付嬢は身振り手振りを使って感謝の度合いを表現しようとする。
「それで、今日は魔物の出現報告はありますか?」
「あぁ、そうでしたね!」
仕事モードに切り替えた受付嬢は必死に書類を眺める。
「ここから北東にあるアッカタ村に複数の子鬼の巣が見つかったようで、すでに被害にあった人が数人ほどいるようです」
「そうですか。すぐに、向かいます」
「はい、よろしくお願いします」
ぺこりと受付嬢は頭を下げる。
それから、僕は子鬼のでた村に向かった。
子鬼の討伐は特に何事もなく終わった。子鬼は魔物の中で弱いとされる部類なので、そう苦労することもなく討伐することできた。
それに、子鬼は何度も倒したことがあるしな。
「うわぁ、もう討伐してきたんですか!?」
夕方、依頼達成の報告をするために冒険者ギルドに寄ると、受付嬢に驚かれる。
どうやら二日はかかると思われていたらしい。
「ホント、アメツさんがきてからうちは助かっています」
「だから、大げさですよ」
何度と聞かされた感謝の言葉を受け流す。
「話は変わりますけど、アメツさんは王都の内乱に参加する予定とかないですよね?」
「いえ、ないですけど」
「よかったー。アメツさんまで、内乱に参加してしまうと、魔物を討伐してくれる冒険者がいなくなってしまいますので」
安心したようにそう呟く。
内乱勃発のため多くの冒険者が徴兵されたため、今、魔物を討伐するための冒険者が足りていないというのは、小耳に挟んだことがある。
ただでさえ、クラビル領は冒険者の数が少ないみたいだし。
「そういえば、内乱の様子について、なにか聞きましたか?」
「いえ、冒険者ギルドには、なんの情報も届いていないですね。あぁ、でも、クラビル伯爵が戦死したため、当主が長男に入れ替わったのは知っていますが」
まさか、クラビル伯爵を殺したのが僕だなんて言えるはずもなく、黙って聞き流す。
「これから、どうなるんでしょうねー。早く戦争が終わって平和になってくれればいいのですが」
「そうですね」
ホント早く戦争が終わって欲しい。
それは、僕が一番願っていることじゃないだろうか。
僕ができることは信じて待つことだけなのだから。
「ただいま」
「あぁ、おかりなさい、ご主人様」
家に帰るとそう言ってエネが出迎えてくれる。
「ご主人様、たった今、私の仲間から密書が届いた。内乱に大きな動きがあったとのこと。戦争の勝者が決まったようです」
エネの言葉に僕は大きく目を見開いた。
どうやら、戦争は終結したらしい。




