おはようとお叱りと
水の都レヴィ、朝日が水面に反射して中世ヨーロッパを彷彿とさせるような建物に照りつけて、幻想的な陰影を醸し出す。
異世界に転生させられてもこの景色を美しいと思う感性は失われていない。
そしてもう一つ変わらないものが……
「やっぱりソファーで寝ると身体が痛いっす。」
まだ寝てる寝坊助二人を布団をまくりあげ起こす
「うにゃ!なにするんですかぁ」
「僕まだ眠いよナナシ」
「だまらっしゃい!いつまで寝ているの!
年頃の女の子が!特にティア!遅刻するぞ!」
「ふふふ!今日もお休みなんだなぁ!残念でした!」
ガクッ
そーゆーことじゃぁないよ俺が言いたいのは。
「とにかく起きる!今日はやることがたくさんあるんだから!」
「僕やりたくなぁい!」
「メッ!」
「あははっナナシさんお母さんみたい」
騒々しい朝をクリアして急いで朝飯の席につく。
「おはようござ「おはようっす!昨日はお楽しみでしたね!」
やかましい
「違いますよ!それは「あっ!今日で延泊終わっちゃうんですけど、どうするっす?」
相変わらず話を聞かない……
「2部屋を3日延泊でき「僕、ナナシと一緒じゃないとヤダー。」
ここにも話を聞かないやつが一人……
「いやいや、女の子なんだか「はぁいわっかりました!1部屋を3日延泊ありがとうっす。」
もうどうにでもして……
3人で朝食を食べ、ギルドに向かう。
今日、ギルドに行く理由は2つ。
1つはマルバさんに昨日の話をミュートを交えてしてもらうということ、
もう一つは、あの魔物の討伐報酬があるから取りに行く、ということだ。
----ギキィ
ギルドのドアを開けると、そこには一人の修羅がいた。
「無断外泊をするとはいい度胸じゃないか。」
「ごめんなさいお父さん、でもミュートちゃんを一人にするのは可愛そうだったから……」
「言い訳無用だ。来なさい。」
まぁこれは、家庭の事情だからしょうがない、
けどこれは俺にも多大な責任があるよな。
ちょっと助け船を出すかな
「すみません、それは俺の責任なんです。
昨日の話の延長で申し訳ないですが、ミュートはあの、『あれ』ですし、この街にも慣れていないのでティアに頼んだんです。」
「だが、送り届けて帰ってくればいい話だ、年頃の娘が無断外泊をしていい理由にはならない。」
「ええ、その通りです、ですが、私の頼み方が悪かったんです。俺が『戻ってくるまで一緒にいてやってくれないか?』そう頼んだんです。
昨日ギルドで話を聞いてすぐ戻ってくる予定だったのですが、予定外の事があり遅くなってしまって。……紅茶が凍りついたりとか。」
「うぐっ」
会心の一撃、
「ちょっ、ちょっと待って!紅茶が凍りつく?
なにそれ!お父さんナナシさんになんかした?!」
「い、いやそれは、なにも……」
効果は抜群だ
「なにもあるわけないだろう?俺はただ、ギルドマスターであり、元A級冒険者であるマルバさんに魔力の使い方を教えてもらっていただけだよ。それにギルド管内での私闘は禁止、このルールをギルドマスターであるマルバさんが自ら破るわけないだろ?ねぇ……マルバさん?」
ニコリとマルバに笑いかけるナナシだが、その笑顔はある意味悪意に満ちていた
「ぐはっ!……もう無断外泊をしちゃだめだぞ。」
タダノシカバネノヨウダ
近寄ってきたティアが小声で「ありがとう。」
と言ってきた。頬をほんのり紅く染めながらそう言うティアにオトされてしまいそうになったのは内緒の話である。
「そういえば、マルバさんこの子がミュートです。」
「おぉ!まさしく!と、とにかく私の部屋に行こう。」
---マルバさんの執務室でティアが紅茶を入れてくれている。昨日とは趣の違う紅茶だ、しかし美味しい。
「して、この子はまさしく半魔の血だ。」
「見てわかるんですか?」
「ああ、まぁ分かるのはエルフのみだが、しかしこの目でみるのは二度目だ……」
「あるんですか?!見たこと?!」
「ああ、子供の頃に一度だけ、というのもあれは160年前位か……」
は?
「は?」
おおぅ、心とお口がリンクしてしまった。
「そうか、ナナシ君はエルフを見たことがないのか、私たちは長命な種族でな私で170だよ。」
嘘でしょ?30手前位にしか見えませんが?
「今は半魔は生まれないのだよ、というのも、
魔族が……いないんだ。」
「えっ?」
俺よりも先に声を上げたのはミュートだった。
「そんなわけないよ!僕のお父さんは魔族だった!それにお父さんやお母さんを迫害していたやつらだって魔族だった!!いないわけない!」
「ナナシ君、これから先の話は彼女にとっては辛い話になる。同席させるかどうかは君に委ねようと思う。」
合点がいったよ。
昨日、唯一興味を引いた話、『彼女を半魔だと言って迫害するやつなどこの世にはいない。』
昨日の時点ではあの魔物が言った狂言だと思っていた。
酒場で飯を食っていた時、『勘のいいやつ』といっていたが、俺は言葉と態度の矛盾からヤツが嘘をついていると気付いた。
奴からすれば気にする必要などなかったんだ。『半魔』ではなく『魔』そのものまではエルフにすら気付かれないのだから。
だが今までの流れから推察するに、ミュートの家族はもう……
ただ彼女ももう年頃の女の子だ、自分のおかれている状況を把握すべきだろう。
「……聞かせてほしい。」
俺が逡巡している間にミュートが自ら口を開いた
「マルバさん彼女はもう大人です。
自分の行く末は自分で決められるはずです。
それに必要なら俺が、俺が手助けします。」
そうか、なら……とマルバは口を開き語り始めた




