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スキルマイスターの苦悩  作者: 水田万里
12/22

美少女と臆病な野獣

気付くとそこはなにもない部屋だった。


無機質な部屋に似合わぬこれもまた無機質な

転移を取得しますか?という文字が目の前にうかぶ。


落ち着いていた。転移を取得するというその事が自分の精神安定剤の代わりになっていた……


ここに来た方法を鑑みるにこのskillを使用すれば、先程の場所に、もしくは街まででも帰還することができると直感的に感じている。



「ここは?なんの場所だ?ダンジョンの一部なんだろうな。」


孤独を払拭すべく一人で話す様は、自分でも失笑ものだ。


魔物がいるでもなく、宝箱があるでもなく、一体このトラップは何のためにあるのだろうか。


一頻りの思案を終え2つの可能性を導き出した。


1つはここはなにもない、即ちゲームオーバーだ。スキルマイスターを持っていない、

或いは転移のskillを持っていない人物がこの部屋に来ればどうなるものか。

答えは言わずもがなだな。


もうひとつは……ここが隠し部屋、もしくは何らかの細工がしてあるという事。


ただ、その細工を辺り構わず探す…なんていうことはしない。なぜなら前者の可能性が非常に高いからだ。


これがデス"トラップ"というならわざわざ出れるようになどしない。する必要が皆無だ。


ただそんなものは可能性であっていくら低くても事実は事実。

背後から聞こえてくるズシンっという音が開戦の合図なのだ。


「な、なんだ?びびるから、勘弁してくれよ。」


そう思い、振り返ると壁の一部せり上がり、その先に進めるようになっていた。


「こっちにおいでってか…恐いじゃないかよ…

本当に勘弁してくれ…よっ!」


不満を口にしながら通路の前まで"転移" した。


成功か…これでなにかあった時には直ぐに脱出できるな。


そう思いながら、通路に足を踏み入れた。







一時間は歩いただろうか。


一向に何かある気配がない。


「なんだよここ。ただの通路にしちゃ長過ぎるだろ。床自体がランニングマシーン見たいに動いてんのか?!」


そんなわけあるか。


しょうがないな。駆け抜けてしまおうか!


「紫電っ!」

ジジッジッ バチっ


瞬間身体が軽くなる。

「しっ!」

気合いを入れた声を皮切りに一筋のイカヅチとなる、自分の身体が風を切る音に包まれて。


5分ほど走った所で明かりが見えた…。

ここは?

「祭壇か?」

祭壇の中央には形容しがたい程に美しい水晶のような球体があった。


吸い込まれるように球体の前に立つ。


美しい。


なんの淀みもなく、一片の曇りなく透き通るような、この世のものとは思えぬような美しさ。


あぁ、欲しい。欲しい。


手を伸ばし掛けた所で気付く。


これは罠では?ダンジョンが用意した餌ではないか?


冷静に考えるとそうだ。


心に住むもう一人の俺が、口元を歪めながら近づき甘言を呟く。


いざとなれば転移して脱出すればいい。

何を怖れる事があるんだ?

これを手に入れられるなら指の2、3本飛んだって、いや、死んでもいいだろう?


たかだか美しい水晶のような石と命を天秤に掛けるなんてバカがやることだ。


ただこの水晶を自分の角膜が捉えているうちは思考の異常性に気付くことが出来なかった。


欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい


ゆっくりと手を伸ばす。


水晶に触れるその時、

メキャッ

音を立て割れる。


祭壇の奥から魔方陣が現れヒトの形をしたなにかが転移してくる。


「ふぁっ?!なに?!こわっ」


そこには小麦色の肌をした少女が立っていた。


「君は…」


「ぼく?ぼくはミュート見ての通りの半魔です。お兄さんはヒトだよね?

ということは今日でお仕舞いということなんだね……」


「はぁ?言ってる意味がわからないけど、どういうこと?」


「お兄さんは僕を殺しに来たんじゃないの?」


「何で俺が可愛い女の子を殺さなきゃならんのよ?」


「えっ?!じゃあどうやってここまでこれたの?!ここはダンジョンの裏側だよ?!

それにどうやって僕の封印を解いたのさ?!」


「お、落ち着いてくれよ。順を追って説明するから。」


それからダンジョンのデストラップに掛かったこと。水晶に触れたら割れたことを話した。


「ふーんそうなんだぁ。じゃあお兄さんは可愛そうだね。」


「えっ?何で?」


「ここは見ての通りなにもない場所。

僕の封印が誤って解けても出られずここで朽ちるようにね。」


「そうなんか、それは参ったな。」


「…お兄さん軽いね……もう少し焦るもんだとおもったけど、」


「んー、こういう性格だからなぁ。

んで何で封印なんかされてたんだ?」


「さっきも言ったけど半魔だからだよ?

ヒトと魔族が交わるのは禁忌なんだどっちの種族からしてもね。

だから僕は……僕は…」


目に涙を浮かべ俯く少女の頭を優しく撫でてやる。

「俺もちょっとこの世界から見たら異端児でな、知り合いも親も誰もいないんだよ。」


「辛かったな…こんな場所で一人で心細かったろ?」


「一緒に行くか?」


「……いいの?

僕と一緒にいたら強い魔族から狙われるかもしれないんだよ?!」


「それはやだなぁ…けどこんなところにミュートを一人残していくのはもっとやだ。」


「それに最近はいろいろあって自信がついてね」


そう、俺は強い


この世界じゃ多分異端の力を持っている。

それこそ神から貰った力だ。


「けど…ここからは出れないよ?分かってるけどすごい嬉しかったよ?君は「ナナシだ。俺の名前はナナシ。君を助ける男。そして今日から君を守る盾だ。話は後で聞く。なんかあんまり宜しくない雰囲気だ。」


回りの石壁が罅割れ、地震起こる。

このあとの展開は大体想像できる、

二人揃って生き埋めっていうパターンだ。


あくまでそれは俺が、スキルマイスターでなければの話だ。


急いでミュートの手を取り転移を発動させる。

先程転移してきたときとは違い、なんの予兆もなしに突然二人の姿がかき消える……。




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