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映像制作会社 3/4 静かな戦闘

赤柳は、元々システムエンジニアとしてゾーンアングルに入社した。

学生時代から技術に対して並々ならぬ情熱を抱いていた彼は、特にAIに強い興味を持っていた。しかし、入社当初はまだ若手のエンジニアで、日々の業務に追われながらも、常に頭の中では「もっと効率的に、もっとスマートにできるはずだ」という思いを抱えていた。


彼の探究心は強かった。最新技術に対する貪欲な姿勢で、昼夜問わずAIとアルゴリズムの研究に打ち込んだ。時には、長い時間をかけて構築したプログラムが失敗に終わることもあったし、度重なる挫折が彼を一時的に打ちのめすこともあった。それでも赤柳は、くじけることなく新たな挑戦に挑み続けた。


その結果、彼は他社には存在しない、独自の経営管理ツールを開発することに成功した。このツールは、AIを駆使した高度なシステムで、業務の多くを自動化し、会社全体の効率を劇的に向上させたのだ。プロジェクトの進行管理から外部委託の管理まで、すべてが赤柳のシステムによって統制され、他の社員たちはそれに従うだけで劇的に生産性を向上した。


当時、会社の上層部はこの功績を高く評価した。もはやゾーンアングルのシステムは、赤柳の手によって生み出されたも同然だった。その信頼と業績が認められ、彼はわずか数年で数十人を束ねる制作部の部長に就任することとなった。しかしその頃は、自分が開発したシステムが悪用され、人の命が奪われる事になるなど夢にも思っていなかった。



この数日、赤柳は椅子に深く座り込んだまま、ぼんやりと天井を見つめていた。

彼の手には、一枚の紙が握られていた。あの日、あの女性がばらまいた不正を証明する物の一枚で、ゾーンアングルの裏帳簿を暴くための手がかりとなる発注書だ。それは単なる出発点に過ぎなかった。目の前に立ちはだかるのは、彼自身が築いたAIによる鉄壁の防御システム。その精緻さと堅牢さは、かつて彼自身が誇りに思っていたものだったが、今やそれは彼にとって最大の敵となっていた。


「作る時は楽しかったが、まさかこんな事になるとはな」

赤柳は苦笑しながら、無機質な光を放つモニター画面を眺めていた。パージ法によって与えられる無法の12時間、その時にシステムに侵入し、二重帳簿などの違法な取引の証拠を掴もうと考えていた。だが、赤柳が開発したシステムは、簡単には破れない。ID認証は毎分更新され、アクセスコードもAIによって自動でリセットされる。さらには複数の防護柵が仕掛けられ、一度侵入に失敗すれば即座に検知され、データ保存の為すべての接続が遮断されてしまう。


「残り数日…」

焦燥感が募る。パージまでの時間は刻一刻と迫っていた。


システムを突破する試みを何度も試みたが、強固な防の前に成す術が無く落胆しかけていた赤柳だが、とあるアイデアが閃いた。


「AIは人間よりも正確に、効率よく仕事をこなす。しかし、それは感情が無いAIだからこそであるがもし、そこに『人間らしさ』があった場合はどうなんだろう…。例えば、人が人を裏切るように、AIがAIを裏切る…そんな事が可能なら…。」


赤柳はラップトップに視線を落とし、自らのAIを欺くためのコードを書き始めた。標的は、ゾ基幹システムとAPI連動している業務運営システム。このシステムは、SNS経由やメールでの顧客問い合わせをリアルタイムで自動解析し、顧客が求める要望に対しサンプルや見積りを瞬時に生成して返答する、画期的なシステムだった。その精度は高く、まるで人間が対応しているかのような錯覚を相手に与えることが、このシステムの大きな利点だった。


「この『錯覚』に潜り込めさえすれば…」


一筋の光を見出した青柳はもはや周りの音など入って気にすることもなかった。


「明日、8月15日19時よりパージ法が発動します。国民の皆様は~」


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