大学病院 2/4 5日前
パージ五日前の病院――医師や看護師の葛藤
パージ開始が迫る中、病院内では不安と緊張が日増しに高まっていた。大学病院は一部の有権者や慈悲深い人々により強固に守られ、いわゆる聖域として扱われているが、それでも全ての命を守れるわけではない。パージ法が発動される12時間、医療現場は限界を超えることが予想されていた。特に、ここ数日間は、病院に頼る人々が増えていた。財力のない弱者や立場の弱い人々が、次々と「かくまってほしい」と集まってきていたのだ。
医師の安藤は病棟の廊下を歩きながら、ドアの向こうで訴える群衆の声が遠くから聞こえるのを感じていた。病院の入口にはすでに集まった人々が押し寄せ、警備が急遽強化されていた。彼らのほとんどが財力や社会的な地位を持たない人々で、パージの混乱から逃れる手段がない者たちばかりだった。無法の夜に何が起こるかわからない恐怖が、彼らの顔に刻まれていた。
「医者として、助けを求める命を見捨てるわけにはいかないが…」安藤はそう心の中で呟きながらも、病院のキャパシティには限界があることも理解していた。全ての人々を守ることができない現実が、彼の心を重くしていた。
看護師の水原もまた、処置室で次々に運ばれてくる患者の対応をしながら、内心の葛藤を感じていた。パージが近づくにつれて、街中での混乱や小さな衝突による負傷者が増加する様に病院内の緊張も広がる一方だった。混乱する群衆に、病院側の対応も追いつかず、すべての命を救いたいという願いとは裏腹に、現実は非常に厳しい状況に追い込まれていた。
「どうすればいいんだろう…ここは病院なのに…」水原は心の中で呟きながら、群集を締め出すか、それとも受け入れるべきか、その間で悩んでいた。
そして病院側もまた、頭を抱えていた。パージ法が施行される前に、いかに病院を守り、また正当な患者たちを守るか。医療機関として、命を救うことが使命である。しかし、対応できる人数にも限界があり、すべての人々を保護することはできない。財力や社会的な立場がある人々が、優先的に守られる現実がある中で、病院がどこまで公平に対応できるかは、大きな課題だった。
パージまで残り五日。病院内での葛藤はすでにピークに達していた。




