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トラック野郎2025 2/8

パージ法が発表された翌日から、運送業界は劇的に変わった。


富裕層をターゲットにした建物の防御対策を見越し、大手建設業者や警備会社がこぞって建築資材を注文するようになった。その一方で、物価の高騰を恐れた大手問屋や卸業者たちは、あらゆる商品を買い占めに走る。これらの物流を支えるために、運送業者はここ数ヶ月、まさに目の回るような忙しさに追われていた。


辰雄もその波に飲まれ、今日も長距離配送を終えたばかりだった。東京郊外のトラック食堂で、ようやくひと息ついていたところに、知り合いのドライバーが声をかけてきた。


「おう、辰雄さん!悪いんだけどさ、吉田さんと連絡取れないか?」


「吉田さんって、関西方面のオーナードライバーの?」

辰雄は顔を上げ、相手に確認する。長年交流のある仲間の一人だが、最近忙しくしていたのか、顔を見ていなかった。


「そうそう!それなんだよ。吉田さんの車、車庫には置いてあるんだ。で、家にも行ってみたけど、姿が見えなくてさ。知り合いに聞きまわっちゃいるんだけど、実は……この数週間、連絡が全く取れなくて困ってんだよ~。」


「数週間か……」

辰雄の眉間にしわが寄る。フリーランスの長距離ドライバーが、無断で仕事を休むなど普通では考えられない。ましてや、彼のような真面目な性格ならなおさらだ。


「後で俺からも連絡してみるよ。」

辰雄はそう答えたものの、胸の奥では一抹の不安を抱いていた。


実は辰雄も、このところ耳にしていた噂を思い出していたのだ。運送業界では最近、吉田の他にも、顔見知りのベテランドライバーが次々と行方不明になっているという話が広まっていた。それも、事故や事件に巻き込まれたという情報がまったく出てこない。ただ失踪するように消えるだけだった。


そして、それと同じ時期に、大手配送業者が突然倒産するという不自然な出来事も発生していた。まるで何か得体の知れない力が業界全体に影を落としているような、不穏な空気が漂っていた。


「何かがおかしい……」

辰雄はコーヒーカップを置き、窓の外に目をやった。トラックのヘッドライトが暗い夜道を照らす光景が見えたが、それすらどこかぼんやりと霞んでいるように思えた。



駐車場に止めてあった自分の車両に乗り込むと、エンジンを始動させた。ヘッド部分だけの軽やかな状態で走り出すはずなのに、その足取りはどこか重い。行き先が得体の知れない発注主のもと――そう思うと、車体の軽さが気分を楽にはしてくれなかった。


首都高湾岸線を走り、小一時間ほどで目的地に到着した。見えてきたのは、大井ふ頭にある巨大な倉庫街。港湾施設が広がり、活気あるエリアがある一方で、一部の倉庫は長年使われていないようで、外観も古び、どこか寂れた雰囲気が漂っている。辰雄の胸の奥に、言葉にできない不安がじわじわと広がっていく。


「5番館は……ここか。」


ナビに示された地点で車を停めると、突然、倉庫の前に設置された照明が一斉に点灯した。その明るさが辰雄の目を刺し、薄暗い闇に慣れていた瞳が反射的に細まる。続いて、倉庫のシャッターが重々しく開き始めた。その音は、まるで錆びついた金属が悲鳴をあげているように耳障りだった。


開いたシャッターの向こうから、警備員らしき人物が現れた。2~3人ほどの男たちが、それぞれ誘導棒を持ち、赤い光を振りながら辰雄を奥へと誘導してくる。


「ここまで来ちまったら、もう引き返すわけにはいかねぇな……」


辰雄はそう呟くと、ヘッドのハンドルを握り直し、ゆっくりと倉庫の中へ車を進めた。背後でシャッターが再び閉じられる音が響いたとき、その空気は完全に外界と隔絶され、冷たい静寂が広がった。

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