挨拶はしないで、さくっと移動です。
義父さんの希望でお泊まり旅行を計画中。
姪っ子ちゃんが希望する体験イベントを中心に考えると、そこそこ限られてきます。
後は金額ですよね。
個人的には温泉があってご飯が美味しい宿だと嬉しいです。
動画で憧れているオールインクルーシブで良いところあるかしら?
皆と一緒にいるせいか、食べる量は多かった。
当初決めていたフォーとお粥以外に、フルーツヨーグルトを食べたのだ。
もっちりとしたギリシャ風ヨーグルトに似た物にたっぷりの各種フルーツ。
これだけで十分な朝食とする人も多いだろう一品を、ぺろりと食べてしまった。
朝食で取ると良い栄養分は、炭水化物、タンパク質、ビタミン&ミネラル類といわれているので大満足だ。
きっと喬人さんも納得してくれるはず……。
私も同じ料理をいただきましたよ。
一から準備するのは大変ですが、最近では専門店が出している便利なキットがありますからね。
おぉ、屋台飯もいいが、夫お手製料理に叶うものはない。
あちらへ戻ったら是非堪能したいものだ。
私もこちらで食べた料理を食べさせたい。
……異世界特有食材、持ち帰れないかしら。
「……さすがにこれだけ目立つ者が多いと、人の目を避けるのが難しいのぅ」
「だよね! そろそろ別れて移動しようか」
「くれぐれも気をつけてくだされ。頼んだぞ、ノワール、そしてペーシュ殿」
「任された」
「言われるまでもなく」
彩絲が周囲を伺って溜め息を吐いていた。
どうやら私たちを探している人たちが多いらしい。
そこにはローザリンデやエックハルトも入っているのだろう。
「移動は私の蛇たちが頑張るよー」
どこからともなく人が二、三人は乗れそうな巨大サイズの蛇が現れる。
さすがに周囲がざわついて遠巻きになった。
「では、御主人様。またお会いできる日を楽しみに、王都拠点を守っております」
フェリシアが深々と頭を下げる。
どんな服装をしても騎士に見える所作が美しい。
他の家族も彼女に倣った。
「ええ、よろしくね。皆、健康で仲良く過ごしてください」
私の言葉にリス三姉妹が肩に乗ってきて、高速ですりすりとしてきた。
はい、可愛い。
周囲の離れた距離が再び近くなる前に、颯爽と蛇に乗った家族たちが人の波をかき分けて去って行く。
「……一気に人数が減って寂しいわ」
「けど、これで人目はかなり避けられるぞ。我と奥方だけなら無敵だ」
「……自分が人目を引くのは理解しております。ですがこの人数であれば、私も隠蔽いたしましょう」
「それがいいな。奥方、まだ何か欲しい物はあるか?」
「ええ、大丈夫。十分堪能したわ」
「では、我らも街を出るとしよう」
ペーシュがそう告げた途端、ノワールの気配が消える。
思わず周囲を見回してしまった。
「右側、三歩下がった位置におります」
「我が肩に乗ろう。奥方のスキルも大概だから、攻撃も心配ないと思うけどな。リス族三姉妹ほどではないが、ここに誰かが乗っていれば寂しくないだろう?」
「ふふふ。ありがとう、ペーシュ。頬にもふもふが触れるのは最高だけど、つるすべが触れるのも同様だわ」
基本暑いこの街で、頬に触れるひんやりとしたペーシュは気持ち良かった。
「……宿の手続きをしてまいります。先に行ってくださいませ」
「了解だ」
「よろしくね」
宿には荷物も置いてある。
金払いの良い上客が予定より早く切り上げるのは何か問題になるかもしれない。
ノワールに任せておけば上手くやってくれるだろう。
この街に再び訪れる機会はないかもしれないが、最愛としてでなければありかもしれない。
ダンジョンは楽しかった。
「……ふむ。良い勘をしておる。女王と魔導師が来るぞ」
「え?」
ペーシュの体に頬を押されて、首の向きを変える。
そこには二人の姿があった。
護衛はいない。
イェレミアスの魔法で同じように隠蔽しているのだろう。
「……あー、今ノワール殿が宿の手続きをしているみたいですね」
「え?」
「それと……蛇に乗って移動している中に、最愛様はいらっしゃらないみたいですよ」
「別行動をしているということ?」
「でしょうね。会話が全く聞き取れないので、何処へ向かおうとしているのか。何故二手に分かれたのかわからないのが気になります」
イェレミアスは頭をぐしゃりと掻いた。
苛立ちが強く見える。
「あの子たちは王都へ戻ると思うけど……」
「はぁ。絡みすぎましたかね。可愛いし、全員善良な人たちばかりなので、つい気安く接しちゃうんですよ。嫌われていたら……寂しいなぁ」
なかなか良い線をいっている判断だ。
彼本人を嫌ってはいない。
ただ少し疎まれてはいる。
「やはり身分が問題なのだろうか」
「寵愛しているように見えているのでしょう。今後距離を置いた方が無難かもしれません。ああ、残念です」
がっくりと肩を落としている。
この姿を見たら、イェレミアス本人だけならこっそりと来てもいいと言い出しそうだ。
それだけ落ち込んでいる。
「難しいわね。アリッサには王城とはいかなくても、王都にいてほしいんだけど」
「それは……本人に言わない方がよろしいでしょう」
「わかっているわ。言ってしまったら最期、友人の縁を切られそうだもの」
そう、この二人にならば話は通るのだ。
ただ、その周囲にいる人間には無理だけれど。
「……誰かを間に挟んでやり取りをするといいかもしれないな」
「そうね。手紙ぐらいは書くわ。ローザリンデ自身が嫌いなわけではないから」
相手は女王。
女王より位が高いとされる最愛が健全に付き合うには柵が多すぎる。
手紙のやりとりが基本、時々お茶を楽しむ程度がお互いのためなのだ。
だから二人とすれ違っても、あえて反応しなかった。
「神殿もこんな感じならいいんだけど……」
「フュルヒテゴットは大丈夫だろう。マテーウスとカールハインツも恐らく。ただその下は駄目だな」
「トップが健全なだけ感謝しないとだね」
「王都を守る皆は、善良であるが故に、有象無象を惹きつけやすい。彩絲と雪華の眷属が上手くやるだろう」
「嫉妬しない女性の冒険者に屋敷を警護してもらうのはどうかしら?」
「ありだな。キャンベルに言っておけば上手く回すと思うぞ」
「ノワールにお願いすれば早そうね」
「ああ。我が伝えたら卒倒しそうだからな」
ペーシュが肩? を竦める。
スライムとは思えない所作だ。
他にもこんな感情表現が豊かなスライムがいるのだろうか。
「次はどの町に行く予定なんだ?」
「えーと? ちょっと待ってね」
久しぶりに地図を起動する。
移動は他の皆に任せているので、なかなか使う機会がないスキルだ。
一人で行動していたら必須だったと思うけれど。
「タンザンコ……かしらね?」
「肉ダンジョンと酒ダンジョンがあるな」
「そう! 特に肉ダンジョンが楽しみだわ」
「あそこは寒いからなぁ……良い酒も肉もドロップするぞ」
「寒さ対策って必要?」
「外は氷ダンジョン装備と同程度で大丈夫だ。宿の中は適温で整えられているから、外に出なければ過ごしやすいぞ」
「ダンジョンの中は?」
「こちらも適温だな。肉ダンジョンが暖かめ、酒ダンジョンが涼しげだ」
「じゃあ、ダンジョンに入ったら、装備を大半解除する感じかしら」
「ああ、そうだ。それを狙う専門の盗賊が出るぞ。まぁ、さくっと捕縛してまとめておけば報奨金が出るからな。任せておけ」
胸? を張るペーシュの頭を撫でる。
本当に頼りがいのあるスライムだ。
「ダンジョンでは人型になるか迷うな」
「え! なれるの?」
「なれるさ。基本は老人だけどな。奥方が望むならイケメンにもなれるぞ」
「イケメンは主人だけで間に合っています」
「あー彼を見慣れていれば、そうなるか」
うんうんと大きく頷かれる。
スライム目線でも夫はイケメンのようだ。
ええ、自慢の夫ですから。
外見だけじゃなくて内面も素敵なのよ?
「必要に応じて変化するとしよう。酒に酔った冒険者相手だと、イケメンで圧倒する方が面白いからな」
「そう? 一流を気取っている冒険者がスライムにやられるっていうのも、なかなか屈辱的だと思うけど」
「言うなぁ?」
「駄目だった?」
「構わぬよ。そう言いたくなる輩が多いのもまた事実だしな」
そう、この世界は人の命が軽い。
犯罪者も格段に多いのだ。
「お。ノワールが待っているぞ。さすがに優秀なシルキーだな」
「ノワールに直接言ってあげてよ。喜ぶから」
「そうか? 恐縮しそうな気がするぞ」
「あー、そうかも」
圧倒的な力の差があるからか、ノワールたちはペーシュに対して畏怖を抱いているようだ。
時折萎縮する様子を見せる。
「三人で過ごせば褒める場面も多かろう。今の距離感で不便は感じないが、奥方の意向は優先するぞ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
和やかな会話をしながら全ての手配をすませているだろうノワールに向かって手を振る。
ホークアイとモリオンに何やら話しかけていたノワールは、私たちの姿を視界に入れた瞬間、深々と頭を下げた。
柊麻莉彩 ひいらぎまりさ
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リゼット・バローのギルドカード
魚屋紹介状
衣類屋紹介状
称号 時空制御師の最愛
誕生日にアフタヌーンティーに行きたいなぁと検索してみました。
6月だと抹茶、メロン、薔薇などのテーマが多いようです。
ナイトアフタヌーンティーも気になるんですよね……。
次回は、タンサンゴに移動中。(仮)の予定です。
お読みいただいてありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。




