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僕の妹は転生者らしい。  作者: あいより碧


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番外編2 ウィリアム③


 突然押しかけた俺のことも、子爵一家は歓迎してくれて、メアリーアンとリオンが領主館を案内してくれた。


 新たな発明品も見せてもらい、その時無理を言って本来客が立ち入るべきではない場所――厨房にまで立ち入ってしまったのは失敗だったけど。


 子爵夫人は、リオンとメアリーアンを厳しく叱責し、俺にも「余所の家ではやってはいけませんよ」と釘をさした。ちょっと前なら、俺にはきっと何も言わなかっただろうから、内側に入れたようで何だかこそばゆい気分になる。


 叱られて嬉しくなるなんて、おかしな話だけれど。


 ――とはいえ、夕食の席で俺がうっかり冷凍庫の話題を出してしまったせいで、父上まで厨房に押しかけたのは、本当に申し訳なかったな。高位貴族にどうしてもと言われたら、子爵たちが断れるわけがないのだ。父上もわかっているだろうに、好奇心が抑えられなかったのだろう。


 俺も同じことをやらかした後なだけに、父上を止めることもできなかった。子爵夫人には本当に、親子共々申し訳ない。



 楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。

 フィロース領では毎日驚きの連続だった。特に驚いたのは、リオンやメアリーアンが既に魔法を学んでいて、リオンに至っては戦闘魔法まで扱え、貴族なのに冒険者であるということだ。


 ブルウッドの防壁の外に広がる魔の森、ドラグールの森は多種多様な魔物が棲む恐ろしい森として有名だ。冒険小説好きの父上からよく聞かされていたので知っている。冒険者の中で、この森の深層で活躍できるのは一流だけだとか。


 そんなドラグールの中層まで、リオンはひとりで行くことを許されているというのだ。まだ十にも満たないのに!


 これまでも、リオンの知識の豊富さや賢さ、魔道具開発の技術は尊敬に値すると思っていたけれど、まだまだ認識が甘かった。貴族として必要な、魔物を退ける強さまで既に磨いているのだ。


 メアリーアンも、七つになったら冒険者登録するために、既に訓練を積んでいるという。


 俺はまだ魔法を学ぶ許可は貰えていなくて、学ぶことといったら礼儀作法や国語や歴史、教養科目ばかりだ。剣術は体力作りに物心つく頃から始めていたけれど、魔法の訓練は禁止されている。


 学習面で他の子どもが己より先んじているという状況は、俺にとって初めてのことだった。


 だから――恐らく初めて、悔しいと思ってしまったのだろう。つい、父上に俺も戦闘魔法を習いたいと駄々をこねてしまうくらいには。


 冷静になれば、他家の騎士に戦闘魔法を習うなんて、あり得ない話だってわかるのに、どうしても気持ちが抑えきれなかったのだ。


「ウィル様もちゃんとお子様だったんですねぇ」


 などと、ジョセフにからかわれるくらいには、子どもっぽいことをしてしまったと反省しきりだ。

 まあ――そのおかげで、防水布工房の見学ついでに冒険者ギルドや、ブルウッドの防壁の見学まで出来たのだから、恥をかいた甲斐はあったと思う。



 フィロース子爵家での滞在最終日、メアリーアンからお土産にと、とても良い香りのする石けんを貰った。石けんはハーブが練り込まれていて、香りもよく見た目も華やかだ。現在研究中の試作品で、是非試して感想を教えて欲しいとのことだった。


 これは母上へのお土産にしよう。


 それからもう一つ、温室で育てていたひまわりの鉢植え。アンテック大陸原産だというその花は、初めて見る物だったから、母に見せたいと言ったのを覚えていたのだろう。本来は夏に咲く花だというから、今の時期には温室でないと育てられないらしいけれど、領地につくまでくらいは持つはずだ。


 明るい黄色の花びらは、メアリーアンの髪色とそっくりだ。


 まだ秘密の計画だけど、とこっそり教えてくれたのだが、フィロース子爵領ではひまわり畑を作って、油をとる計画をしているのだという。元気で可愛い印象のこの花の種が、食用にもなれば、油をとることもでき、絞りかすはよい飼料や肥料になると聞いて、本当に驚いた。


 うちの温室でも、ちゃんと育てられたらいいのだけれど。

 帰ったら庭師に相談してみよう。


 フィロース領では育てられなさそうなアンテック大陸の植物も、セイクリッド領なら育てられる可能性もあるかもしれない。

 魔道具だけでなく、農作物の生産でも協力できたらいいのにな。


 石けんは質が良ければ、母上がきっと社交界で宣伝してくれるだろうし、元王女である母上の愛用品となれば、貴婦人たちが注目することだろう。

 そうしたら、もっと子爵家の財政も持ち直すかもしれない。


 ローゼリアは毎日のように違うドレスをとっかえひっかえしているのに、同じ年齢のメアリーアンはいつも簡素なワンピース姿だった。本人はまったく気にしていない様子で、毎日を楽しそうに過ごしているけれど。


 ……不思議なことだが、贅沢な生活をしているローゼリアの方が、よっぽど常に不満気な表情をしているくらいだ。


 馬車の中でぼんやりと、膝に抱えた植木鉢を眺めて物思いに耽っていた俺が、フィロース子爵領に襲いかかった災難を知ったのは、翌日の早朝。

 宿泊した宿でのことだった。



次回更新→明日7時

カクヨムにて「第2回GAウェブ小説コンテスト」参加中のため、先行連載しています。

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