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ネオ・テラ:降下者セトの選択 ―あの日の残業、2000年後の誓い―  作者: totoさけ
侵食する過去と今

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人形たちの終焉

鋼と鋼がぶつかり合い、火花が激しく廊下に散る。ナオミは一瞬の隙を見出し、男の喉元を突かんと剣を鋭く突き出す。しかし、その刹那、どこからともなく飛び出した一番小柄な少女が、己の身体を盾にしてその攻撃を受けようとする。


「……ッ!」


ナオミは舌打ちとともに剣筋を微かに変える。動きはそのままに、男を仕留めるのではなく、突きかかってきた少女の剣へと軌道を修正しはじき返す。バランスを崩したところに力任せに少女を蹴り飛ばす。口から空気が漏れる音がすると、少女は糸の切れた操り人形のように床に崩れ落ち、動かなくなった。


「うっとうしい……!」


ナオミは吐き捨てるように呟く。怒りはない。ただ、虫が這い回るような生理的な嫌悪が、彼女の冷静な判断を支えていた。残る2人の少女が、主を守る鉄壁のごとくナオミの周囲を旋回する。


「マ、マリアたん、お、お友達を傷つけるのはよくないなぁ」


男は床に伏した少女を、まるでただの不要物であるかのように無関心な目で一瞥し、それから嬉しそうにナオミを見つめた。


「ほんと、最低」


ナオミの言葉は氷のように冷たくかえす。しかし男はナオミの侮蔑など一切意に介すようすはない。


「ひ、ひどいなぁ」


本気で悲しんでいるわけでもない様子で、ヘラヘラと笑いながら一歩ずつ距離を詰めてくる。男が近づくたびに、空間の濃度が変わり、重苦しい悪寒がナオミの肌を刺した。


しかし、少女2人の連携攻撃を捌き続けるナオミに、後退する余裕はない。


「ナオミに近づくな!」


響き渡る声とともに、空気が切り裂かれる。リズが交戦していた2人の少女のうち、1人を魔力を乗せた強烈なパンチで男へと吹き飛ばした。男は避けようともせず、歩みを止め、ただ向かってきた少女を冷めた目で見つめる。


男は受け止めるそぶりすら見せず、足元に叩きつけられた少女が動かなくなったのを確認するだけだ。


「ナオミ!」


「リズ、大丈夫?」


「万全とは言い難いけど、何とか……そっちは?」


リズはナオミと背中合わせになり、荒い息をつきながら構える。少女たちを行動不能に追い込んだものの、リズの消耗は激しい。


「こっちも似たようなもの。それよりリズ、この子たち何か変……」


「……やっぱり、ナオミもそう感じる?」


「攻撃をしても避ける素振りも、痛がる素振りもない。まるで人形みたいに動く。でも、切ったり、殴ったりした感触は、確かに生き物そのもの」


矛盾した事実にナオミ自身の眉がひそまる。


「考えるのは後! とにかく今は――」


「――目の前の敵を倒す!」


二人は深く息を吸い込み、乱れた呼吸を整える。少女たちもそれを待っていたかのように、再び無機質な殺意を剥き出しにして迫りくる。


鋭い槍の突きがリズの眉間を狙う。リズは即座に左手のガントレットに沿わせて軌道を変え、身体を回転させると、勢いのまま右手で槍を強引に掴み取った。


「そこっ!」


引き寄せられてバランスを崩した槍使いの少女。その隙を見逃さず、ナオミが閃光のような一撃を叩き込む。槍使いが意識を失い、倒れ込む。勢い余ったナオミがわずかに隙を晒す。すかさず別の少女が切りかかるが、ナオミは待っていましたとばかりに身体を大きくのけぞらせ、攻撃を回避した。


「今!」


大振りで隙だらけになった少女の目の前に、ナオミの影から飛び出したリズが現れる。リズのガントレットに魔力が過剰なほどに込められ、少女の腹部を強烈に殴り抜いた。少女は壁まで吹き飛ばされ、そのまま沈黙する。


「最後の一人!」


二人同時に残った少女へ突っ込む。少女は剣を横殴りに振るうが、リズが前に出てガントレットで強引に受け止める。その隙にナオミが背後に回り込み、少女の意識を刈り取った。


静寂が廊下に訪れる。二人は息をつく暇もなく、男の方を向いた。


男は少女たちを見下ろし、つまらなそうにぼやくと、無造作に足元の少女を踏みつけた。


「……ッ! あなた、仲間をそんな風に足蹴にするなんて!」


「う、うるさいな……ざ、罪人のくせして……」


「罪人?あなたのやっていることはなんだというのですか!」


リズが電光石火の勢いで飛び出していく。男はよけるそぶりなく足元の少女をリズに蹴り飛ばす。とっさの出来事だったが何とか少女を抱き留める。


「お、お前、どこまで!……」


「つっ、作り物の合法ロリなんかが、えっ偉そうにするんじゃ、な、ないよ」


男は不快そうに顔を歪め、両腕をだらりと下げた。その瞬間、男の身体から禍々しい異星物質が異常な量で噴き出し、周囲の空間を黒く染め上げていく。


「でっ、でもい、いいか。マリアたんを新しくむ、迎えればいいんだもの」


男が不気味な笑みを浮かべた。その目は、もはや人間のものではなかった。ナオミとリズは、彼がこれから解き放とうとしている異様なエネルギーに、身動きがとれないほどの圧迫感を感じていた。逃げ場のない廊下で、決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

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