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ネオ・テラ:降下者セトの選択 ―あの日の残業、2000年後の誓い―  作者: totoさけ
2000年前からの来報

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時が止まった街

ダンジョンの扉が重厚な音を立てて閉じる。

瀬戸は一呼吸おき、暗闇に慣れない目を凝らしながら、ゆっくりとした足取りで階段を下りていった。


今のところ、視界に入るのは何の変哲もない洞窟だ。


「ただの洞窟のように見えるが……これがダンジョンなのか?」


[ディアーナ:わかりませんが確かにこの奥から異星物の反応が確認できます。]


ディアーナからの報告通りならば、ここはまだ入り口に過ぎないのだろう。もっと奥、この先の中心部に強力な異星物の反応があるという。


瀬戸は警戒を怠らずに進む。ところどころに松明が焚かれているおかげで薄暗くはあるが、進行に支障はない。


『変異種の反応はいまだありませんね。』


「そうだな。でも油断しないで進んでいくしかないな」


瀬戸は腰のホルダーに手をかけつつ慎重に進む。

しかし、足元の感触が急に岩盤から砂利へと変わった瞬間、瀬戸の背中に悪寒が走った。


[ディアーナ:瀬戸のバイタルに軽微な異常発生]


『紬、どうしました。』


「いや、なんでもない。」

(なんだ?この景色……どこかで見たような気がする。)


さらに数歩進むと、砂利の隙間から木材と鉄のレールが露出しているのが見えた。壁は洞窟のそれではなく人工的になっている。それは瀬戸には見覚えがありすぎるものだ。


「まさか……」


瀬戸の悪い予感は現実を帯びてくる。焦る気持ちからか瀬戸は駆け足で前に進む。通信でゼノから『瀬戸、戻れ。一人で突っ走るな!』という制止の声が聞こえるが、高鳴る鼓動と流行る気持ちを抑えきれない。


『紬、どうしたの。何か言って!』


エマの問いかけにもこたえる余裕がない。その答えを瀬戸は否定するべく先を急ぐ。だがそれはわずかな希望をも打ち砕くための行動にしかならなかった。


そして、その予感は見事に的中した。


暗闇の先に現れたのは、地下鉄の車両だった。窓ガラスは無残に砕け散り、明かりも灯らず、当然動く気配もない。だが、2000年という歳月が経過しているはずなのに、鉄の車体には腐食の跡が一つもなかった。


『こ、これは!』


『どうゆうことだ!歴史アーカイブの情報そのままだぞ!』


慌てるステーションメンバーをよそに、瀬戸は右手を掲げ燐光を放つ。坑道内を銀光が広がり調査用のナノマシンが散布される。


「ディアーナ、ミア! 解析を急いでくれ。この状態は異常だ」


瀬戸は車両を通り抜け、隣接するホームへと足を踏み入れた。駅の掲示板や広告の枠までが、当時のままの姿でそこに鎮座している。あまりの光景に、瀬戸は息を呑んだ。


「どうなってんだよ……」


『せと、データ解析完了したよ。この空間、分子レベルで時間の流れが極端に遅延――あるいは停止している可能性がある。異星物質の影響か、もしくは別の何かがあるのかも……』


「別の何かってなんだよ」


答えを求める瀬戸だったが、通信機の向こうも、現状の定義に苦慮しているようだった。


通信越しにゼノ艦長が渋い声で進言する。


『瀬戸、一度町へ戻って体勢を立て直せ。状況が未知数すぎる』


瀬戸は自身の身体能力とナノマシンの出力を再確認する。身体的に問題はなく、今のところ変異種の反応もない。判断材料が少なすぎる中、撤退という選択肢を取るには時期尚早だと感じた。


「……もう少しだけ先を確認させてくれ。この先、何があるか知りたいんだ」


『……わかった。だがくれぐれも無理はするな!何かあればこちらでもサポートする』


「了解、頼りにしてるぜ」


瀬戸は歩を進め、地上へと続いていたであろう階段を発見した。


「見えているか。どうやらここから上に登れそうだ。このまま進むぞ。」


『こちらからも確認した。慎重に進め。必要に応じてビームサーベルと、ビームガンの使用も許可する。2人もいいな。』


『『了解しました』』


ステーションメンバーの援護を受け瀬戸ははやる気持ちを落ち着けるため一呼吸置く。


「よし。行くぞ。ディアーナ索敵を頼む」


[ディアーナ:了解しました]


黒剣の柄に手をかけ、いつでも抜ける準備をしながら、恐る恐る階段を上っていく。頂上からわずかに明かりが見える。ゆっくりとした足並みでそれでも急ぐように進む。


登り切った先で見えたのは、かつての街並みだった。

都市が、そのままの姿で眠っている。


空はうっすらと明るい。洞窟内とは思えない開放感。感覚的には、沈みゆく夕日が街を橙色に染める、あの静かな時間帯の明かりだ。


「嘘だろ…………冗談だと言ってくれ……」


瀬戸はその光景を目にし警戒態勢を怠らず、ただただその街並みを見ている。

現地人が「ダンジョン」と呼び、国が「遺跡」として恐れる場所。その正体は、瀬戸が2000年前に過ごした、かつての日常そのものだった。


ただ一つ違うのは、そこが「時を止めた箱庭」であり、本来の住人たちの代わりに、異形の変異種たちが跋扈ばっこする死の街へと変貌していたことだ。かつての記憶と、目の前の殺伐とした現実が混ざり合い、瀬戸の心は激しく揺さぶられた。

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