第99話 「モリスの報告」
数日後、モリスがランドルを訪れた。
いつもより急いだ様子で、鍛冶屋の跡に直行してきた。
「急な訪問、失礼します」
モリスは言った。
「至急、お伝えしたいことがあります」
カルロが、立ち上がった。
「何があった」
カルロは聞いた。
「大陸西部で、異変が起きています」
モリスは続けた。
「複数の街で住民が、原因不明の昏睡状態に陥っているという報告が、入っています」
俺は、眉をひそめた。
「昏睡状態というのは」
俺は聞いた。
「詳しい症状は、まだ掴めていません」
モリスは答えた。
「ただ共通しているのは、意識を失う直前に、青白い光を見たという証言です」
俺とカルロは、目を合わせた。
「マナに関係する現象かもしれない」
カルロは言った。
「天秤としても、その可能性を疑っています」
モリスは続けた。
「ただ、通常のマナ現象とは、性質が異なるようです」
「どう違うんですか」
俺は聞いた。
「昏睡した者たちの魔力を調べると」
モリスは答えた。
「一時的に極端に低下していることが、確認されています」
俺は考え込んだ。
力を奪われている。そう考えるのが自然だった。
「誰かが意図的に、力を吸い取っている可能性がありますね」
俺は言った。
「フェリクス様も、同じ見解です」
モリスは頷いた。
「ただ犯人の正体は、まだ掴めていません」
「無冠や旧血族の関与は」
俺は聞いた。
「両方に、確認を取りました」
モリスは答えた。
「どちらも、関与を否定しています」
俺は少し驚いた。
「では、また別の何かということですか」
「その可能性が高いです」
モリスは続けた。
「フェリクス様はこれが、始祖の意思が予告していた、新しい脅威かもしれないと考えています」
俺は息を止めた。
まだ見ぬ力を求める者。旧血族の登場で、その予告は解決したと思っていた。だがまだ、他にも存在するのかもしれない。
「発生している街の場所を、教えてください」
俺は言った。
モリスが地図を広げた。
いくつかの街に、印がつけられていた。ランドルからは、かなり離れた場所だ。
「共通点は、何かありますか」
俺は聞いた。
「まだ調査中です」
モリスは答えた。
「ただ、いずれの街も、古い伝承が残る地域であるという点は、確認できています」
俺は頷いた。
また、始祖に関わる何かが、そこにあるのかもしれない。
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その夜俺はエリナと、モリスからの報告について話した。
「また、新しい問題が出てきたんだね」
エリナは言った。
「そうみたいだ」
俺は答えた。
「今回はまだ、正体すら掴めていない」
「怖いね」
エリナは続けた。
「怖い」
俺は正直に答えた。
「でも少しずつ、進めていくしかない」
エリナは頷いた。
「私ももっと力をつけて、一緒に向き合いたい」
エリナは言った。
「無理はするなよ」
俺は言った。
「わかってる」
エリナは、少し笑った。
俺はステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.16
HP:70/70
MP:37/37
筋力:21 敏捷:25 魔力:14 耐久:18 知力:25
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
変化はなかった。
また新しい何かが、この世界のどこかで動き始めている。
窓の外を見た。二つの月が静かに輝いている。
橋になるという役目は、まだ終わらない。
俺はその事実を、静かに受け止めた。
**次回・第100話「百話の朝」**
> ランドルに来てから積み重ねてきた百話の物語。ゼロは、これまでの旅路を振り返りながら、新しい脅威に向き合う覚悟を固める。
新しい異変が起き始めました。無冠でも旧血族でもない、まだ正体不明の存在。次回、いよいよ100話の節目を迎えます。ここまで読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
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