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神に何も貰えなかった転生者、実は成長上限がありませんでした  作者: Nagiousen


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100/119

第100話 「積み重ねた日々」

 朝、目が覚めると、いつもより早い時間だった。

 俺は宿の窓から外を見た。ランドルの街並みが、朝の光の中で静かに佇んでいる。


 この世界に来てから、どれくらいの日数が経っただろうか。

 正確な日数は、もう数えていない。ただ、随分と長い道のりを歩んできた気がした。


 支度を整え、宿を出た。


---


 鍛冶屋の跡に向かう道すがら、これまでのことを、ゆっくりと振り返っていた。


 森で目覚めた日。名前も記憶もなく、ただ生きるために動くしかなかった、あの朝。


 エリナに助けられ、共に歩み始めた日々。


 カルロとの出会い。魔力の存在を初めて感じた、鍛冶屋の跡でのあの日。


 アルクとの共闘。


 セルマとの出会い。


 備考欄の全解放。始祖の器という真実。


 ラグドでの、始祖の意思との対話。


 エリナが、始祖の鍵であるという確定。


 カルロとフェリクスの、五十五年越しの和解。


 旧血族との対峙。対話による、新しい関係の始まり。


 Bランクへの昇格。


 そして今、また新しい脅威が、姿を現そうとしている。


 振り返れば、あっという間だったようにも思う。だが同時に、とても長い旅だったようにも感じた。


---


 鍛冶屋の跡に着くとカルロが、いつもの場所に座っていた。


「おはようございます」


 俺は言った。


「早いな」


 カルロは答えた。


 俺は、カルロの隣に座った。


「今日は少し、これまでのことを考えていました」


 俺は言った。


「珍しいな」


 カルロは、少し笑った。


「お前はあまり、過去を振り返らない性格だと思っていた」


「そうかもしれません」


 俺は続けた。


「でもなんとなく今日は、振り返りたい気分でした」


 カルロは、静かに俺を見た。


「どう感じている」


 カルロは聞いた。


 俺は、少し考えた。


「最初は、何もありませんでした」


 俺は言った。


「名前も、記憶も、力も」


「そうだったな」


「今は多くのものを、手に入れました」


 俺は続けた。


「仲間、力、居場所、そして、この世界での役割」


「それで」


 カルロは聞いた。


「満足しているか」


 俺は、少し考えた。


「満足はしていません」


 俺は正直に答えた。


「まだ、わからないことが、たくさんあります。エリナの過去。この世界に来た本当の理由。そして、これから現れるかもしれない新しい脅威」


「それでも」


 カルロは続けた。


「不安では、ないんだな」


 俺は、カルロを見た。


「不安は、あります」


 俺は答えた。


「でも、一人じゃありません。それが最初の頃と、決定的に違うところです」


 カルロは、静かに微笑んだ。


「良い答えだ」


 カルロは言った。


---


 その日の午後、エリナが鍛冶屋の跡にやってきた。


「何二人で、しみじみしてるの」


 エリナは、少し笑いながら言った。


「振り返って、いたんだ」


 俺は答えた。


「これまでのことを」


「懐かしいね」


 エリナは、俺の隣に座った。


「最初に会った時、覚えてる?」


「覚えている」


 俺は答えた。


「スライムウルフに、追われていた。情けなかったよね」


 エリナは、少し笑った。


「そうだったな」


 俺は認めた。


「今は、全然違う」


 エリナは続けた。


「強くなったし、仲間も増えたし」


「エリナも、変わった」


 俺は言った。


「最初は、一人で逃げていた」


「今は」


 エリナは言った。


「一緒にいる」


 俺は、エリナを見た。


「これからも、一緒に行こう」


 俺は言った。


「うん」


 エリナは、頷いた。


---


 夕方、アルクとセルマも、鍛冶屋の跡に集まった。


 自然とみんなで、これまでの旅について、話す時間になった。


「思えば、色々あったな」


 アルクが言った。


「街道で初めて会った時」


 セルマが続けた。


「ブラックハウンドと戦っていたな」


「懐かしいですね」


 俺は言った。


 みんなで笑いながら過去の出来事を、一つ一つ思い出していった。


 オルディナの遺跡。天秤との出会い。ラグドでの激闘。旧血族との対話。

 全てが確かに、俺たちの歩んできた道だった。


「これから、どうなるんでしょうね」


 俺は、ふと言った。


「わからない」


 アルクが答えた。


「でもこれまでも、なんとかなってきた」


「これからも、なんとかなる」


 セルマが続けた。


---


 その夜、俺はステータス画面を確認した。


 ゼロ Lv.16

 HP:70/70

 MP:37/37

 筋力:21 敏捷:25 魔力:14 耐久:18 知力:25

 スキル:なし

 備考欄:◇◇◇◇◇◇


 エリナも、自分のステータス画面を確認した。


 エリナ Lv.10

 HP:36/36

 MP:27/27

 筋力:12 敏捷:22 魔力:21 耐久:14 知力:16

 スキル:精密投擲


 数値はあの日から、大きく変わった。

 だが、数値以上に変わったものがある。

 仲間。居場所。そして、この世界と向き合う覚悟。


 窓の外を見た。二つの月が、静かに輝いている。


 俺は改めて、これからも歩み続けることを心に決めた。

 まだ見ぬ脅威が、どこかで動き始めている。


 それでも、一人ではない。

 それだけで、十分だった。


 俺は静かに、目を閉じた。

 明日も、新しい一日が始まる。



次回・第101話「西への視線」


西部の昏睡事件について、より詳しい情報を集めるため、ゼロたちは動き出す。だが、現地に向かう前に、思いがけない人物から接触があった。

第100話、到達しました! ここまで毎日読んでくださった方、本当にありがとうございます。100話という節目で、あえて大きな事件を起こさず、これまでの旅路を振り返る回にしました。次回からは、西部の異変を軸に、また新しい物語が動き始めます。引き続きよろしくお願いします!


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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