第100話 「積み重ねた日々」
朝、目が覚めると、いつもより早い時間だった。
俺は宿の窓から外を見た。ランドルの街並みが、朝の光の中で静かに佇んでいる。
この世界に来てから、どれくらいの日数が経っただろうか。
正確な日数は、もう数えていない。ただ、随分と長い道のりを歩んできた気がした。
支度を整え、宿を出た。
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鍛冶屋の跡に向かう道すがら、これまでのことを、ゆっくりと振り返っていた。
森で目覚めた日。名前も記憶もなく、ただ生きるために動くしかなかった、あの朝。
エリナに助けられ、共に歩み始めた日々。
カルロとの出会い。魔力の存在を初めて感じた、鍛冶屋の跡でのあの日。
アルクとの共闘。
セルマとの出会い。
備考欄の全解放。始祖の器という真実。
ラグドでの、始祖の意思との対話。
エリナが、始祖の鍵であるという確定。
カルロとフェリクスの、五十五年越しの和解。
旧血族との対峙。対話による、新しい関係の始まり。
Bランクへの昇格。
そして今、また新しい脅威が、姿を現そうとしている。
振り返れば、あっという間だったようにも思う。だが同時に、とても長い旅だったようにも感じた。
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鍛冶屋の跡に着くとカルロが、いつもの場所に座っていた。
「おはようございます」
俺は言った。
「早いな」
カルロは答えた。
俺は、カルロの隣に座った。
「今日は少し、これまでのことを考えていました」
俺は言った。
「珍しいな」
カルロは、少し笑った。
「お前はあまり、過去を振り返らない性格だと思っていた」
「そうかもしれません」
俺は続けた。
「でもなんとなく今日は、振り返りたい気分でした」
カルロは、静かに俺を見た。
「どう感じている」
カルロは聞いた。
俺は、少し考えた。
「最初は、何もありませんでした」
俺は言った。
「名前も、記憶も、力も」
「そうだったな」
「今は多くのものを、手に入れました」
俺は続けた。
「仲間、力、居場所、そして、この世界での役割」
「それで」
カルロは聞いた。
「満足しているか」
俺は、少し考えた。
「満足はしていません」
俺は正直に答えた。
「まだ、わからないことが、たくさんあります。エリナの過去。この世界に来た本当の理由。そして、これから現れるかもしれない新しい脅威」
「それでも」
カルロは続けた。
「不安では、ないんだな」
俺は、カルロを見た。
「不安は、あります」
俺は答えた。
「でも、一人じゃありません。それが最初の頃と、決定的に違うところです」
カルロは、静かに微笑んだ。
「良い答えだ」
カルロは言った。
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その日の午後、エリナが鍛冶屋の跡にやってきた。
「何二人で、しみじみしてるの」
エリナは、少し笑いながら言った。
「振り返って、いたんだ」
俺は答えた。
「これまでのことを」
「懐かしいね」
エリナは、俺の隣に座った。
「最初に会った時、覚えてる?」
「覚えている」
俺は答えた。
「スライムウルフに、追われていた。情けなかったよね」
エリナは、少し笑った。
「そうだったな」
俺は認めた。
「今は、全然違う」
エリナは続けた。
「強くなったし、仲間も増えたし」
「エリナも、変わった」
俺は言った。
「最初は、一人で逃げていた」
「今は」
エリナは言った。
「一緒にいる」
俺は、エリナを見た。
「これからも、一緒に行こう」
俺は言った。
「うん」
エリナは、頷いた。
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夕方、アルクとセルマも、鍛冶屋の跡に集まった。
自然とみんなで、これまでの旅について、話す時間になった。
「思えば、色々あったな」
アルクが言った。
「街道で初めて会った時」
セルマが続けた。
「ブラックハウンドと戦っていたな」
「懐かしいですね」
俺は言った。
みんなで笑いながら過去の出来事を、一つ一つ思い出していった。
オルディナの遺跡。天秤との出会い。ラグドでの激闘。旧血族との対話。
全てが確かに、俺たちの歩んできた道だった。
「これから、どうなるんでしょうね」
俺は、ふと言った。
「わからない」
アルクが答えた。
「でもこれまでも、なんとかなってきた」
「これからも、なんとかなる」
セルマが続けた。
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その夜、俺はステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.16
HP:70/70
MP:37/37
筋力:21 敏捷:25 魔力:14 耐久:18 知力:25
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
エリナも、自分のステータス画面を確認した。
エリナ Lv.10
HP:36/36
MP:27/27
筋力:12 敏捷:22 魔力:21 耐久:14 知力:16
スキル:精密投擲
数値はあの日から、大きく変わった。
だが、数値以上に変わったものがある。
仲間。居場所。そして、この世界と向き合う覚悟。
窓の外を見た。二つの月が、静かに輝いている。
俺は改めて、これからも歩み続けることを心に決めた。
まだ見ぬ脅威が、どこかで動き始めている。
それでも、一人ではない。
それだけで、十分だった。
俺は静かに、目を閉じた。
明日も、新しい一日が始まる。
次回・第101話「西への視線」
西部の昏睡事件について、より詳しい情報を集めるため、ゼロたちは動き出す。だが、現地に向かう前に、思いがけない人物から接触があった。
第100話、到達しました! ここまで毎日読んでくださった方、本当にありがとうございます。100話という節目で、あえて大きな事件を起こさず、これまでの旅路を振り返る回にしました。次回からは、西部の異変を軸に、また新しい物語が動き始めます。引き続きよろしくお願いします!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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