第98話 「静かな成長」
エリナの修行は、順調に進んでいた。
旧血族の知識を取り入れてから、体への負担が大きく軽減され、修行の効率は目に見えて上がっていた。
ある日の夕方俺は、エリナの修行の様子を見守っていた。
カルロが少し離れた場所で、静かにその光景を見つめていた。
俺はカルロの表情に、いつもと違う何かを感じた。
「どうしたんですか」
俺は、小声で聞いた。
カルロは、しばらく黙っていた。
「エリナの、成長速度が」
カルロは、静かに言った。
「少し、早すぎる気がする」
俺は、少し驚いた。
「早すぎる、というのは」
俺は聞いた。
「エリナの成長速度が」
カルロは静かに言った。
「私が知るどんな才能ある者の成長よりも、明らかに早い」
「俺と同じような成長上限解放の力が、あるということですか」
俺は聞いた。
「それも、可能性の一つだ」
カルロは答えた。
「だが、それだけとは限らない」
俺は少し緊張した。
「他に何か考えられることが、あるんですか」
俺は聞いた。
カルロは、少し考え込んだ。
「エリナの過去に、何か関係しているのかもしれない」
カルロは、静かに、言った。
俺は少し驚いて、カルロを見た。
「エリナの過去、というのは」
俺は聞いた。
「団長に狙われていた、本当の理由」
カルロは続けた。
「まだエリナ自身が話していない、部分があるのではないかと思っている」
俺はその言葉を、静かに受け止めた。
確かにエリナは団長に、何をされそうになったのか、まだ詳しくは話していなかった。
「無理に聞き出すべきではないと、思います」
俺は言った。
「わかっている」
カルロは答えた。
「エリナが自分から、話す時を待つべきだ。ただ、その成長速度の理由が、その過去と繋がっている可能性を、頭の隅に置いておいた方がいい」
俺は頷いた。
---
その日の夜俺はエリナに、修行の様子について聞いた。
「調子は、どうだ」
俺は聞いた。
「すごく、いい」
エリナは、笑顔で答えた。
「前よりずっと力の扱いが、うまくなってる気がする」
「無理は、していないか」
俺は、念のため聞いた。
「していない」
エリナは、頷いた。
「むしろ、体が軽くなってる感じ」
俺は少し迷ってから、口を開いた。
「エリナ」
俺は言った。
「団長に狙われていた本当の理由、まだ話せないか」
エリナの表情が、少し曇った。
「まだ、少し難しい」
エリナは、静かに答えた。
「ごめん」
「謝らなくていい」
俺は、すぐに言った。
「無理に、聞くつもりはなかった。話せる時に、話してくれればいい」
エリナは、少し微笑んだ。
「ありがとう」
エリナは、続けた。
「いつか、ちゃんと話す」
「待ってる」
俺は頷いた。
その夜、俺はステータス画面を、確認した。
ゼロ Lv.16
HP:70/70
MP:37/37
筋力:21 敏捷:25 魔力:14 耐久:18 知力:25
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
エリナも、自分のステータス画面を確認した。
エリナ Lv.10
HP:36/36
MP:27/27
筋力:12 敏捷:22 魔力:21 耐久:14 知力:16
スキル:精密投擲
「またレベルが、上がってる」
エリナは、驚いた顔で言った。
俺はその数値を、静かに見つめた。
カルロの懸念が、頭の中で響いていた。
エリナの成長の速さ。まだ話されていない過去。
全てがいつか一つの真実に、繋がっていくのかもしれない。
だが今は、まだその時ではない。
俺はエリナが自分の言葉で話せるようになるまで、静かに待つことにした。
窓の外を見た。二つの月が、静かに輝いていた。
エリナの静かな成長のその奥に、まだ見えていない何かがあるのかもしれない。
**次回・第99話「モリスの報告」**
> 天秤のモリスが、思いがけない情報を持って、ランドルを訪れる。それは、大陸のどこかで進行している、新たな異変の兆候だった。
エリナの成長速度に、カルロが懸念を抱きます。まだ語られていない、エリナの過去。焦らず、彼女が話せる時を待つゼロの姿勢を、大切にしたいです。次回、また新しい情報が動き出します。
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