第94話 「王国内の対立」
男の言葉が、頭の中で重く響いていた。
「王国のある派閥」
俺は、男をじっと見た。
「詳しく、聞かせてください」
俺は言った。
「詳しくは話せないと、言ったはずだ」
男は答えた。
「ただこれだけは、伝えておく。王国の中にも、始祖の器を危険視する者たちがいる」
俺は、少し緊張した。
「危険視する、というのは」
「お前ほどの力を、野放しにしておくのは危険だ。王国内には、そう考える者もいる」
男は続けた。
「もしお前が、王国に敵対する意思を持てば、この国はどうなると思う」
俺はその言葉を、静かに受け止めた。
「俺には、そんな意思はありません」
俺は言った。
「今は、そうかもしれない」
男は答えた。
「だが、将来はわからない。だから私たちは今のうちに、お前を制御下に置きたいと、考えている」
ミラが俺の隣で、小声で言った。
「これは、王国の正式な指示ではない」
ミラは続けた。
「ディーン殿から聞いている限り、王国の公式な方針は、お前と良好な関係を築くことだ」
「では、この男たちは」
俺は聞いた。
「王国内の一部の、過激派だろう」
ミラは答えた。
「無冠にも天秤にも、そして旧血族にも、内部対立があった。王国も例外ではないのかもしれない」
俺は頭の中で、状況を整理した。
これまで対峙してきた勢力と、同じ構図。統一された意思ではなく、内部で異なる考えを持つ者たちが、存在する。
「あなたたちの目的は、何ですか」
俺は男に聞いた。
「お前を、捕らえる」
男は答えた。
「そして力を、王国の管理下に置く」
「その方法でうまくいくと、本当に思っていますか」
俺は聞いた。
男は、少し目を細めた。
「試してみるだけの、価値はある」
男は答えた。
俺は、ダイン、ノア、ガストンを見た。
「これは俺一人の、問題ではありません」
俺は言った。
「皆さんを巻き込んでしまって、申し訳ない」
「気にするな」
ダインが答えた。
「これも、試験の一部だ」
「連携すれば、なんとかなるわ」
ノアも続けた。
ガストンが、盾を構えた。
「指示を」
ガストンは言った。
俺は少し頷いた。
「ノアさん、まず統率者らしき人物を、狙ってください」
俺は言った。
「ダインさんは俺と一緒に、前線を突破します。ガストンさんは、後方の援護を」
「わかった」
三人が、同時に答えた。
俺たちは統率された盗賊団——いや、王国の過激派に立ち向かった。
戦いはこれまでのどの戦闘とも、少し違う性質を持っていた。
敵の動きは洗練されており、単純な力押しでは対処が難しかった。
だが、ダイン、ノア、ガストンとの連携は、模擬戦で確認した通り機能していた。
ガストンが前線で敵の攻撃を、確実に受け止める。その隙にノアが正確な射撃で、敵を次々と無力化していく。ダインと俺が隙を見て、素早く敵の中枢に切り込んでいった。
俺は統率者らしき男に、向かって走った。
「終わりにしましょう」
俺は言った。
男が剣を構えた。
俺はこれまでの旧血族との戦いで培った、観察力を活かした。
男の動きに隙がある。関節の使い方、重心の移動。全てが見えていた。
一撃で男の武器を、弾き飛ばした。
「降参してください」
俺は言った。
「これ以上、争う理由はありません」
男は、しばらく俺を見つめた。
それから静かに、口を開いた。
「認めよう」
男は言った。
「お前の実力は、本物だ」
---
戦いが終わり俺たちは、捕らえた男たちをギルドに引き渡した。
ミラが俺を見て、静かに言った。
「試験、合格だ」
ミラは言った。
「本当に、いいんですか」
俺は聞いた。
「予想外の事態でしたが」
「予想外の事態にこそ、真の実力が試される」
ミラは答えた。
「お前は冷静に状況を判断し、仲間との連携を活かした。Bランクとして、十分な資質がある」
俺は、ダイン、ノア、ガストンを見た。
「皆さんの力があってこそでした」
俺は言った。
「いや」
ダインが答えた。
「お前の指示が、的確だった。また機会があれば、一緒に戦いたい」
ノアと、ガストンも、頷いた。
---
その夜俺はギルドに残り、ディーンに事の顛末を報告した。
「王国内に、そのような過激派がいるとは」
ディーンは、深刻な表情で言った。
「調査する。すまなかった」
「あなたが謝ることでは、ありません」
俺は言った。
「王国全体を、責めるつもりもありません」
「それでも」
ディーンは続けた。
「この件は、しっかりと対処する」
俺は頷いた。
俺は、ステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.16
HP:70/70
MP:37/37
筋力:21 敏捷:25 魔力:14 耐久:18 知力:25
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
Bランクへの昇格試験に、合格した。
だがまた一つ、新しい課題が見えてきた。
王国内部にも、始祖の器を危険視する者たちがいる。
これからその存在と、どう向き合っていくか。
窓の外を見た。二つの月が、静かに輝いている。
橋になるという役目は、まだまだ続いていく。
**次回・第95話「Bランクの証」**
> 新しいギルドカードを受け取ったゼロに、ランドルの人々から、これまでとは違う、期待の眼差しが向けられ始める。だがその注目が、また新たな影を呼び寄せることになる。
Bランク試験、合格です! 王国内部の過激派という、新しい問題も見えてきました。ダイン、ノア、ガストンとの連携、うまくいってよかったです。次回、新しいランクと共に、また新しい日常が始まります。
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