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神に何も貰えなかった転生者、実は成長上限がありませんでした  作者: Nagiousen


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第88話 「旧血族の主張」

 ガレオンが、静かに、語り始めた。


「始祖が現れる前」


 ガレオンは言った。


「私たちの一族は、独自の方法で、この世界の力を扱っていた」


「独自の方法、というのは」


 俺は聞いた。


「魔力とマナを、繋ぐのではない」


 ガレオンは続けた。


「私たちは血脈を通じて、力を代々受け継いでいた。生まれながらに、力を宿す者たちだった」


 俺は頭の中で、情報を整理した。

 魔力とマナを繋ぐ始祖の方法とは、根本的に異なるもう一つの力の在り方。


「それは今の魔法とは、全く違う仕組みですね」


 俺は言った。


「そうだ」


 ガレオンは頷いた。


「そして、始祖が現れるまで私たちの一族は、この世界で最も強い力を持つ者たちだった」


「始祖の登場で、何が変わったんですか」


 俺は聞いた。


「始祖は、誰もが力を得られる方法を、世界にもたらした」


 ガレオンは、少し苦い声で続けた。


「魔力とマナを繋ぐことさえできれば、血脈に関係なく、誰でも力を持てるようになった」


 俺は少しずつ、状況を理解し始めた。


「それまで、特別だったあなたたちの力が」


 俺は言った。


「誰にでも手に入るものに、なってしまった」


「その通りだ」


 ガレオンは答えた。


「私たちの代々の努力と誇りが、一瞬で意味を失った」


 俺はガレオンの言葉に、複雑な感情を抱いた。


 旧血族の主張には、確かに理解できる部分があった。だがそれが、暴力を正当化する理由にはならない。


「だからといって」


 俺は言った。


「カルロさんとフェリクスさんの師を、殺す理由にはならないと思います」


 ガレオンの表情が、わずかに変わった。


「あの時の彼は」


 ガレオンは言った。


「私たちの力の記録を、世に公表しようとしていた」


「それの何が、問題だったんですか」


 俺は聞いた。


「私たちの、最後の誇りだった」


 ガレオンは、静かに言った。


「私たちの独自の力の記録が世に知られれば、誰にでも真似できるものに、なってしまう。私たちは、それを守りたかった」


「守るために、人を殺したんですか」


 俺は聞いた。


 ガレオンは、しばらく沈黙した。


「後悔していない、とは言わない」


 ガレオンは、静かに答えた。


「だがあの時他に、方法が見えなかった」


 カルロが、初めて口を開いた。


「師は」


 カルロは、震える声で言った。


「あなたたちの力を、否定するつもりはなかったはずだ」


「わかっている」


 ガレオンは答えた。


「今ならわかる。だが、当時の私たちには、余裕がなかった」


 フェリクスが、拳を強く握った。


「今更、そんなことを言われても」


 フェリクスは、低い声で言った。


「わかっている」


 ガレオンは、フェリクスを見た。


「許してほしいとは、言わない。ただ、事実を伝えたかった」


 俺は、しばらく考えた。


「今、あなたたちが、この石碑を求めている理由は」


 俺は聞いた。


「私たちの力の記録を、完全な形で取り戻したい」


 ガレオンは答えた。


「それが私たちの、最後の誇りを守る方法だと、考えている」


「それを手に入れて、何をするつもりですか」


 俺は聞いた。


「わからない」


 ガレオンは、正直に答えた。


「ただ今のままでは、私たちの一族はいずれ、完全に忘れ去られる」


 俺は、ガレオンの言葉を深く受け止めた。


 旧血族の主張には、単純な悪意だけではない、複雑な事情が絡んでいた。


「一つ、提案があります」


 俺は言った。


 ガレオンが、俺を見た。


「何だ」


「石碑の記録を、独占するのではなく」


 俺は続けた。


「共有するという道は、考えられませんか」


 ガレオンは、少し驚いた顔をした。


「共有というのは」


「あなたたちの力の記録を、歴史として正しく残す」


 俺は続けた。


「独占するのではなく、誇りとして、認められる形で」


 ガレオンは、しばらく俺を見つめた。


「面白いことを言う」


ガレオンは、静かに言った。


「だがそれで、私たちの一族が、納得すると思うか」


「わかりません」


 俺は正直に答えた。


「ただ力で奪い合うより、対話で道を探る方が、良い結果に繋がると思います」


 ガレオンは、しばらく考え込んだ。


「少し、時間が欲しい」


 ガレオンは、ついに言った。


「一族の他の者たちとも、相談する必要がある」


「わかりました」


 俺は言った。


「待ちます」


 ガレオンは、静かに頷いた。


「明日また、この場所で会おう」


 ガレオンは言った。


 俺たちはその日、発掘現場を後にした。


---


 野営地に戻り、俺はエリナと少し話した。


「複雑な話だったね」


 エリナは言った。


「そうだな」


 俺は答えた。


「単純な善悪では、割り切れない」


「明日、どうなるんだろう」


 エリナが聞いた。


「わからない」


 俺は答えた。


「でも、対話の道が、まだ続いている」


 俺は、ステータス画面を確認した。


 ゼロ Lv.13

 HP:58/58

 MP:31/31

 筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22

 スキル:なし

 備考欄:◇◇◇◇◇◇


 変化はなかった。

 だが旧血族の主張を聞いて、俺の中で何かが少しずつ変わっていくのを感じた。

 力とは誰のものなのか。誇りとは何なのか。

 答えは、まだ見えない。


 窓の外を見た。二つの月が山々の間で、静かに輝いていた。

 明日また、対話が続く。



**次回・第89話「一族の決議」**


> 翌日ガレオンが、一族の決議を伝える。それは、ゼロの提案を受け入れる道か、それとも力での決着を選ぶ道か。旧血族の答えが、ついに示される。


旧血族の主張、単純な悪ではない、複雑な事情が見えてきました。「共有する」というゼロの提案、受け入れられるかどうか。カルロとフェリクスの、複雑な心境も、書いていて重かったです。次回、旧血族の答えが出ます。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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