第87話 「リンネの発掘現場」
翌朝俺たちは、発掘現場に向けて山道を進んだ。
ゼロ、エリナ、カルロ、フェリクス、アルク、セルマ、モリスの七人だ。
山を登るにつれて、空気が張り詰めていくのを感じた。
「もう少しで、見える」
セルマが言った。
木々の間を抜けると、視界が開けた。
眼下に、発掘現場が広がっていた。巨大な石碑の周囲に、テントや作業用の足場が、無数に組まれている。想像していたより、はるかに大規模だった。
俺は索敵を行った。
「大勢の気配があります」
俺は言った。
「五十人以上」
「動きは」
アルクが聞いた。
「今のところ、特に警戒している様子はありません」
俺は答えた。
俺たちは慎重に、山を下り始めた。
その時、前方の茂みが静かに揺れた。
俺は足を止めた。
「誰か、来る」
俺は言った。
茂みから、一人の人物が姿を現した。
白髪の老人だった。だがその体つきは、カルロやフェリクスとは、明らかに違う気配を纏っていた。静かでしかし、圧倒的な存在感。
「ようこそ」
老人は、静かに言った。
「待っていた」
カルロとフェリクスの表情が、同時に強張った。
「お前は」
カルロが、低い声で言った。
老人は、カルロとフェリクスを順番に見た。
「久しぶりだな」
老人は言った。
「二人とも、大きくなった」
「五十五年前、お前が」
フェリクスが、震える声で言った。
「お前が、師を」
老人は、否定しなかった。
「あの時の、お前たちの師は」
老人は、静かに続けた。
「私たちの正当な権利を、邪魔しようとした。だから排除した、それだけのことだ」
俺はカルロとフェリクスの、拳が固く握られているのを見た。
「名前を、聞かせてください」
俺は、老人に言った。
老人は、俺を見た。
「お前が、始祖の器か」
老人は言った。
「私は、ガレオンという」
「ガレオン」
俺は、その名を繰り返した。
「旧血族の、長老の一人だ」
ガレオンは、続けた。
「もっとも今は、この場を任されている立場だが」
俺は、ガレオンを観察した。
敵意は確かにある。だがそれ以上に、静かな確信のようなものが、その目に宿っていた。
「対話をしに、来ました」
俺は言った。
ガレオンは少し、興味深そうな顔をした。
「対話か」
ガレオンは、続けた。
「面白い。始祖の器が、そんな言葉を口にするとは」
「あなたたちの、主張を聞かせてください」
俺は続けた。
「始祖の力をなぜ、自分たちのものだと考えているのか」
ガレオンは、しばらく俺を見つめた。
「いいだろう」
ガレオンは、答えた。
「案内しよう。ただし」
ガレオンは、少し目を細めた。
「争いを望むなら、それも受けて立つ」
俺は頷いた。
「争いは、望んでいません」
俺は答えた。
「ただ正確に、理解したいだけです」
ガレオンは、静かに微笑んだ。
「ついてこい」
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俺たちはガレオンに案内され、発掘現場に足を踏み入れた。
周囲の作業員たちが俺たちを見て、少し緊張した様子を見せたが、ガレオンの合図で、誰も手を出してこなかった。
巨大な石碑の近くまで、案内された。
石碑にはオルディナの遺跡よりも、さらに複雑な文様が刻まれていた。
「これが」
俺は言った。
「あなたたちが、求めているものですか」
「そうだ」
ガレオンは頷いた。
「この石碑には始祖が現れる前の、私たちの力の記録が刻まれている」
俺はカルロを見た。
カルロは石碑を、じっと見つめていた。
「これは」
カルロが、静かに言った。
「本当に始祖より、古いものかもしれない」
俺は頭の中で、状況を整理した。
旧血族の主張が単なる妄想ではなく、本当に根拠のあるものだとしたら。
この対話は思ったより、複雑なものになるかもしれなかった。
ガレオンが、静かに言った。
「さあ」
ガレオンは続けた。
「私たちの話を、聞く準備はできているか」
俺は、エリナと目を合わせた。
エリナが、小さく頷いた。
「聞かせてください」
俺は言った。
**次回・第88話「旧血族の主張」**
> ガレオンが語る、旧血族の歴史。始祖が現れる前、彼らが失ったもの。その話は、単純な善悪では割り切れない、複雑な真実を含んでいた。
ついに旧血族の長老、ガレオンとの対面です。五十五年前師を殺した相手を前に、カルロとフェリクスの心境は、複雑です。それでも、対話を選んだゼロ。次回、旧血族の主張が語られます。
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