第86話 「決断の夜」
村の宿の一室で俺たち五人と、フェリクス、モリスが、円になって座っていた。
旧血族という新たな脅威。その正体を知った今、次の一手を決めなければならなかった。
「正面から乗り込むのは、あまりに危険だ」
アルクが言った。
「五十人以上の集団に、少人数で突入するのは、無謀に近い」
「かといって、放置もできない」
セルマが続けた。
「彼らが始祖より古い記録を手に入れたら、何が起きるかわからない」
俺はしばらく考えてから、口を開いた。
「まず目的を、はっきりさせるべきだと思います」
俺は言った。
「彼らを完全に止めることが目的なのか、それとも記録を、彼らの手に渡さないことが目的なのか」
「両方、必要じゃないのか」
セルマが聞いた。
「理想は、そうです」
俺は答えた。
「でも今の戦力で、両方を同時に達成するのは、難しいかもしれない」
カルロが、静かに言った。
「私は」
カルロは言った。
「彼らと、直接話がしたい」
全員がカルロを見た。
「話す、というのは」
俺は聞いた。
「彼らは始祖の力を、自分たちの本来の所有物だと、主張しているんだろう」
カルロは続けた。
「その主張の根拠を、聞いてみたい」
「危険すぎる」
フェリクスが、すぐに言った。
「彼らは、私たちの師を、容赦なく殺した」
「わかっている」
カルロは頷いた。
「だが五十五年前と今とでは、状況が違う。私たちには、始祖の器と鍵がいる。始祖の意思とも、直接対話した実績がある」
俺はカルロの言葉を、静かに聞いていた。
「もし、対話が成立しなかったら」
俺は聞いた。
「その時は、戦うしかない」
カルロは答えた。
「だがまず、対話を試みるべきだ」
フェリクスは、しばらく黙っていた。
「お前は、変わったな」
フェリクスは、静かに言った。
「昔のお前なら、そんなことは言わなかった」
「私も少し、学んだ」
カルロは答えた。
「若い器と鍵から」
俺は、少し照れくさく感じた。
「ではまず、対話を試みる方向で進めましょう」
俺は言った。
「ただし、危険な兆候があれば、すぐに撤退する」
「賛成だ」
アルクが言った。
「私も」
セルマが続いた。
エリナが少し緊張した表情で、口を開いた。
「私は」
エリナは言った。
「鍵として、一緒に行った方がいいと思う」
俺は、エリナを見た。
「危険だ」
俺は言った。
「わかってる」
エリナは答えた。
「でも、対話をするなら、器と鍵両方いた方が、意味があると思う」
俺は少し考えた。
エリナの言う通りだった。始祖の器と鍵が共に向き合うことに、意味があるのかもしれない。
「わかった」
俺は言った。
「一緒に行こう」
カルロが、静かに言った。
「私とフェリクスも、共に行く」
カルロは続けた。
「これは私たちの、けじめでもある」
フェリクスは、しばらく目を閉じた。
「わかった」
フェリクスは答えた。
「共に、行こう」
---
その夜俺はエリナと、二人だけで少し話した。
「本当に、大丈夫か」
俺は聞いた。
「大丈夫」
エリナは答えた。
「怖いけど、逃げたくない」
俺はエリナを見た。
「一緒に、戦おう」
俺は言った。
「戦いになったら、だけど」
「対話が、うまくいくといいね」
エリナは言った。
「そうだな」
俺は頷いた。
俺は、ステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.13
HP:58/58
MP:31/31
筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
エリナも、自分のステータス画面を確認した。
エリナ Lv.7
HP:27/27
MP:18/18
筋力:9 敏捷:18 魔力:15 耐久:10 知力:13
スキル:精密投擲
明日、リンネの遺跡群に向かう。
旧血族との対話が成立するかどうか、まだわからない。
だが対話の道を、まず試みる。
それがこれまでの旅で、俺が学んだことだった。
窓の外を見た。二つの月が山々の間で、静かに輝いていた。
決断の夜が、静かに更けていった。
**次回・第87話「リンネの発掘現場」**
> 発掘現場に近づくゼロたちの前に、旧血族の一人が姿を現す。それは、これまでのどの敵とも異なる、静かな威圧感を纏った存在だった。
旧血族との対峙を前に、対話の道を選んだゼロたち。「五十五年前と今とでは、状況が違う」というカルロの言葉に、これまでの積み重ねが表れていると思います。次回、いよいよ発掘現場に近づきます。
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