第85話 「フェリクスの警告」
三日後、フェリクスとモリスが、山道の麓の村まで駆けつけてくれた。
俺たちは村の宿の一室で、フェリクスと向き合った。
「わざわざ、来てくれたんですね」
俺は言った。
「直接話すべきことだと、判断した」
フェリクスは答えた。
フェリクスは、セルマが描いた紋章の絵をじっと見つめた。
しばらく、沈黙が続いた。
「間違いない」
フェリクスは、静かに言った。
「これは、『旧血族』と呼ばれる者たちの紋章だ」
カルロが、息を止めた。
「旧血族」カルロは、その名を繰り返した。
「知っているのか」
「知っている」
フェリクスは、重い声で答えた。
「私たちの師を、殺した者たちだ」
俺は驚いて、カルロとフェリクスを見た。
「詳しく、教えてください」
俺は言った。
フェリクスは、しばらく目を閉じた。
「旧血族」
フェリクスは、語り始めた。
「始祖が力を、世界に解き放つ前から存在していた、古い一族の末裔だ」
「始祖より、古いんですか」
俺は聞いた。
「そうだ」
フェリクスは頷いた。
「彼らは始祖が現れる前、独自の方法で力を扱っていた。だが始祖の登場によって、彼らの力は時代遅れになった」
「それで始祖を、恨んでいるということですか」
俺は聞いた。
「恨んでいる、というより」
フェリクスは続けた。
「始祖が残した力を、自分たちのものだと主張しているんだ。本来、自分たちが持つべきだった力だと」
俺は頭の中で、情報を整理した。
始祖より古い力を持つ一族。彼らが、始祖の器と鍵を狙っている。
「私たちの師は」
フェリクスは続けた。
「師は、始祖の意思に関する古い記録を、解読しようとしていた。それを知った旧血族が、師を襲った」
「なぜ、師を狙ったんですか」
俺は聞いた。
「師が、始祖の力の在り処を、突き止めようとしていたからだ」
フェリクスは答えた。
「旧血族は、その情報を独占したかった」
カルロが、静かに言った。
「彼らはまた、動き始めたということか」
「そう考えるのが、自然だ」
フェリクスは頷いた。
「これまでしばらく静かにしていたが、始祖の器と鍵がこの世界に現れたことを、知ったのだろう」
俺は、少し息を吐いた。
これが始祖の意思が予告していた、「まだ見ぬ力を求める者」の正体だったのか。
「彼らの本拠地は、わかりますか」
俺は聞いた。
「わからない」
フェリクスは答えた。
「五十五年間、私たちも彼らの詳しい所在を、掴めていない」
「今、リンネの遺跡群に、集結している理由は」
俺は聞いた。
「リンネの遺跡群には、始祖より古い時代の記録が眠っているという、伝承がある」
フェリクスは続けた。
「彼らはその記録を、手に入れようとしているのだろう」
俺は、しばらく考え込んだ。
「彼らの戦力は」
俺は聞いた。
「未知数だ」
フェリクスは正直に答えた。
「五十五年前、私たちの師を、圧倒するほどの力を持っていた」
俺は緊張した。
カルロたちの師は、決して弱い存在ではなかったはずだ。それを圧倒する力。
「正面から戦うのは、危険すぎるかもしれません」
俺は言った。
「その通りだ」
フェリクスは頷いた。
「慎重に、状況を見極める必要がある」
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その夜、俺はエリナと少し話した。
「始祖より古い一族」
エリナは、少し不安そうに言った。
「私たちに、勝ち目あるのかな」
「わからない」
俺は正直に答えた。
「でも、一人じゃない」
エリナは、俺を見た。
「カルロさんも、フェリクスさんも、アルクさんも、セルマさんも、みんな一緒にいる」
俺は続けた。
「力を合わせれば、道が見つかるはずだ」
エリナは、少し微笑んだ。
「そうだね」
俺は、ステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.13
HP:58/58
MP:31/31
筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
エリナも、自分のステータス画面を確認した。
エリナ Lv.7
HP:27/27
MP:18/18
筋力:9 敏捷:18 魔力:15 耐久:10 知力:13
スキル:精密投擲
まだ二人とも、道半ばだ。
だが、始祖の意思が言っていた、「まだ見ぬ力を求める者」の正体が、ついに明らかになった。
「旧血族」。
五十五年前、カルロとフェリクスの師を奪った古い脅威。
俺たちは今その存在と、直接向き合おうとしていた。
窓の外を見た。二つの月が、静かに山々を照らしていた。
明日からまた、新しい決断を迫られることになる。
次回・第86話「決断の夜」
「旧血族」という、これまでにない脅威を前に、五人は今後の方針を話し合う。正面から立ち向かうか、情報を集めてから動くか。そしてカルロが静かに、ある覚悟を口にした。
「まだ見ぬ力を求める者」の正体が、ついに明らかになりました。「旧血族」——カルロとフェリクスの師を奪った、55年越しの因縁です。これまで積み重ねてきた伏線を回収する形で、登場させました。第2章、いよいよクライマックスに向かいます。
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