第78話 「返信」
数日後、モリスが、再びランドルを訪れた。
「フェリクス様から、返信を預かっています」
モリスは言った。
俺は、カルロを呼びに行った。
鍛冶屋の跡でカルロが、モリスから手紙を受け取った。
老魔法師の手が、わずかに震えていた。
「読んでもいいか」
カルロは、自分自身に問うように呟いた。
俺とエリナ、モリスが静かに見守った。
カルロが封を開けた。
**カルロへ**
**手紙、確かに受け取った。**
**正直に言うと、驚いた。お前がこうして、自分の言葉で、気持ちを伝えてくるとは、思っていなかった。**
**五十五年間、私もお前のことを、忘れたことはなかった。**
**ただ、それぞれの道を信じるあまり、連絡を取ることを避けていた。**
**お前の言う通りだ。別々の道を選んでも、支え合うことはできたはずだった。**
**それを忘れていたのは、お前だけではない。私も同じだ。**
**若い器と鍵の話を聞いた。彼らが私たちに、大切なことを思い出させてくれたようだ。**
**もし機会があれば、また会って話したい。**
**今度は五十五年も、待たせないでほしい。**
**フェリクスより**
カルロは手紙を読み終えて、しばらく黙っていた。
「カルロさん」
俺は、声をかけた。
カルロが、顔を上げた。
その目に、涙が浮かんでいた。
「すまない」
カルロは、少し照れたように言った。
「歳を取ると、涙もろくなる」
「いえ」
俺は、静かに首を振った。
エリナがそっと、カルロの肩に手を置いた。
「よかったですね」
エリナは言った。
「そうだな」
カルロは頷いた。
「本当に、よかった」
モリスが、少し微笑んで言った。
「フェリクス様もこの手紙を書くのに、随分と時間をかけていました」
モリスは続けた。
「珍しく何度も、書き直していました」
「そうだったのか」
カルロは、少し笑った。
「フェリクス様は、直接お会いする機会を設けたいと、おっしゃっていました」
モリスは続けた。
「もしよろしければ、近いうちに」
カルロは、少し考えた。
「そうしよう」
カルロは答えた。
「私も、直接会って話したい」
「日程は後日改めて、お伝えします」
モリスは言った。
モリスが、去っていった。
---
その日の夜、俺はカルロと少し話した。
「五十五年、長かったですか」
俺は聞いた。
「長かった」
カルロは、静かに答えた。
「だが今、この瞬間に繋がったことが、何より嬉しい」
「フェリクスさんに、会う日が楽しみですね」
俺は言った。
「そうだな」
カルロは頷いた。
「お前たちのおかげだ」
「俺たちは、何もしていません」
俺は言った。
「カルロさんが自分で、一歩を踏み出したんです」
カルロは、少し微笑んだ。
「そう言ってくれると、救われる」
俺は、ステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.13
HP:58/58
MP:31/31
筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
数値に、変化はなかった。
だがこの世界でまた一つ、大切な繋がりが修復されようとしていた。
窓の外を見た。二つの月が静かに輝いている。
カルロとフェリクス、五十五年の空白が、少しずつ埋まっていく。
その様子を俺は、心から嬉しく思った。
**次回・第79話「湖畔にて」**
> カルロとフェリクスの、五十五年ぶりの、直接の再会。その場に立ち会うことになったゼロは、二人の間に流れる、深い絆を、目の当たりにする。
フェリクスからの返信、カルロが涙を見せる場面でした。五十五年という長い年月、それでも忘れられなかった絆。次回、いよいよ二人の直接の再会です。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「続きが気になる」と思っていただけたら、ぜひ★評価・ブックマークをお願いします。ブックマークしておくと更新通知が届きます。
感想・コメントも全部読んでいます。毎日21時更新中です!




