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神に何も貰えなかった転生者、実は成長上限がありませんでした  作者: Nagiousen


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第71話 「石の扉」

 塔が、さらに強く震えた。


 俺は、ドレクの拳を紙一重で避けた。


「その拳、ガイウスと同じ力か」


 俺は言った。


「同じ研究の成果です」


 ドレクは答えた。


「ですが、私の方が、完成度が高い」


 ドレクの動きは、確かにガイウスより洗練されていた。無駄がなく、次の一手が読みにくい。


 俺は、覚醒反応に頼らず、これまで積み重ねてきた技術だけで対処しようとした。だが、押され気味だった。


「ゼロ!」


 エリナの声が響いた。


 俺は、視界の端で、石が飛ぶのを見た。


 マナを纏った石が、ドレクの側面に命中した。ドレクの動きが、わずかに乱れた。


「今!」


 エリナが叫んだ。


 俺は、その隙を突いて、短剣をドレクの肩に叩き込んだ。


 ドレクが、後退した。


「連携、悪くないですね」


 ドレクは言った。


「ですが」


 ドレクが、扉の方に目を向けた。


「もう、止められません」


 俺も、扉を見た。


 亀裂が、扉全体に広がっていた。石が、内側から光を放っている。


 その時、塔全体が、大きく揺れた。


「まずい」


 アルクが言った。


「崩れる!」


 天井から、石片が落ちてきた。俺は、とっさにエリナを庇った。


「大丈夫か」


 俺は聞いた。


「大丈夫」


 エリナは答えた。


 扉が、ついに、完全に砕けた。


 中から、光が、爆発的に溢れ出した。


 俺は、目を細めた。


 光が収まると、扉の奥に、小さな空間が見えた。


 中央に、一つの台座があった。台座の上に、何かが置かれている。


 小さな、石の欠片だった。表面に、文様が刻まれている。


 ドレクが、それに向かって歩き出した。


「待て」


 俺は言った。


 だが、ドレクは止まらなかった。


 石の欠片に、手を伸ばした。


 その瞬間、何かが起きた。


 石の欠片から、強い光が放たれ、ドレクの体を包んだ。


 ドレクが、悲鳴を上げた。


「これは」


 ドレクが呻いた。


「なんだ、これは」


 俺は、状況を見守った。


 光が、ドレクの体を、内側から侵食していくように見えた。


「器と鍵が揃っていない状態で、力に触れると」


 カルロの言葉を思い出した。


「悲劇が起きる」


 俺は、走った。


「離れろ!」


 俺は叫んだ。


 だが、間に合わなかった。


 ドレクの体が、光の中で、崩れていくように見えた。


 悲鳴が、次第に、小さくなっていった。


 そして、光が消えたとき、ドレクの姿は、そこにはなかった。


 俺は、その場に立ち尽くした。


「消えた」


 エリナが、震える声で言った。


「本当に」


 俺は、何も言えなかった。


 力を求めた人間が、その力に飲み込まれた。カルロの警告が、現実になった瞬間だった。


 台座の上を見た。


 石の欠片は、まだそこにあった。


「これは」


 俺は呟いた。


 俺は、慎重に、その欠片に近づいた。


「危ないかもしれない」


 セルマが言った。


「触るな」


 俺は、立ち止まった。


「カルロさんに、相談すべきだ」


 アルクが続けた。


 俺は頷いた。


 だがその時、視界に、青白い光が浮かんだ。


 ステータス画面ではない。別の何かだ。


 文字が頭の中に、直接響いてきた。


『器よ、鍵と共に、触れよ』


 俺は、息を止めた。


「聞こえたか」


 俺は、エリナに聞いた。


「聞こえた」


 エリナも、驚いた顔をしていた。


「同じ言葉」


 俺たちは、目を合わせた。


 石の欠片が、静かに、光を放っている。


 ドレクは、一人で触れて、消えた。


 器と鍵が、共に触れれば、何が起きるのか。


 俺は、まだ答えを持っていなかった。


 塔の崩壊が、まだ続いていた。


 決断を、迫られていた。




**次回・第72話「共に触れる」**


> 崩れゆく塔の中で、ゼロとエリナは、決断を迫られる。石の欠片に触れるべきか、それとも、このまま塔を離れるべきか。エリナが、静かに手を差し出した。



ドレクの結末、力を求めすぎた者の悲劇として描きました。そして、ゼロとエリナに直接語りかける、始祖の声のようなもの。「器よ、鍵と共に、触れよ」。二人にとって、大きな決断の時が来ています。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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