第70話 「始まりの塔」
ドレクとの接触から、三日が経った。
バロンの屋敷で、次の対応を話し合っていたとき、屋敷の外が突然、騒がしくなった。
使用人が、慌てて部屋に駆け込んできた。
「大変です!」
使用人は言った。
「第二王子派が、始まりの塔に、大規模な兵を送り込んでいます!」
バロンが立ち上がった。
「何のためだ」
「わかりません」
使用人は続けた。
「ただ、王都中が、騒然としています」
俺は、アルクとセルマに目を向けた。
「行きましょう」
俺は言った。
エリナも頷いた。
俺たちは、急いで屋敷を出た。
---
始まりの塔は、王都の外れにあった。
近づくにつれて、異様な光景が見えてきた。
塔の周囲に、大勢の兵士が展開している。塔の上部から、青白い光が漏れ出していた。
俺は、索敵をした。
「大勢の気配があります」
俺は言った。
「兵士だけじゃない。強い個体が、複数」
「魔物の融合体か」
アルクが言った。
俺たちは、少し離れた場所から、様子をうかがった。
塔の入り口付近に、ドレクの姿が見えた。
「あそこにいます」
俺は言った。
ドレクが、何かを指示しているようだった。兵士たちが、塔の中へと入っていく。
「塔の中で、何をしようとしているんでしょうか」
エリナが聞いた。
「扉を無理やり、開けようとしているのかもしれない」
俺は答えた。
カルロが言っていた話を思い出した。無理に力を引き出そうとすれば、悲劇を招く。
「止めないと」
俺は言った。
セルマが、剣を抜いた。
「正面から行くのか」
「まず、状況を確認します」
俺は言った。
「無理な突入は、避けたい」
俺は、周囲の地形を確認した。塔の裏手に、比較的警備の薄い場所がある。
「あそこから、侵入できるかもしれません」
俺は言った。
全員で、慎重に移動した。
塔の裏手に近づくと、見張りが二人いた。
俺とエリナで、静かに対処した。エリナの石が、音もなく見張りを無力化した。
俺たちは、塔の中に侵入した。
---
塔の内部は、螺旋状の階段が上に続いていた。
俺は索敵を続けながら、階段を上った。
「上に、強い気配があります」
俺は言った。
「ドレクだと思います」
最上階に近づくにつれて、青白い光が強くなっていく。
最上階に到達すると、広間があった。
中央に、大きな石の扉があった。表面に、始祖の時代の術式に似た文様が刻まれている。
ドレクが、その扉の前に立っていた。杖を構え、何かの魔法を行使している。
「無理やり、開けようとしているのか」
俺は呟いた。
扉の周囲に、亀裂が入り始めていた。
「ドレク」
俺は声をかけた。
ドレクが振り返った。
「来ましたか」
ドレクは言った。
「予想していました」
「その扉を、無理に開けるのは、危険だ」
俺は言った。
「知っています」
ドレクは答えた。
「ですが、器と鍵が揃わなくても、力ずくで開ける方法があります」
「その方法は」
俺は聞いた。
「古い術式の一部を、応用しました」
ドレクは続けた。
「無冠の研究資料に、ヒントがありました」
俺は、扉の亀裂を見た。
このまま進めば、何が起きるかわからない。
「やめろ」
俺は言った。
「制御できない力を、解放するつもりか」
「制御は、できます」
ドレクは言った。
「私には、確信があります」
俺は、短剣を構えた。
「止めさせてもらう」
ドレクが、杖をこちらに向けた。
「邪魔をするなら、容赦しません」
ドレクの体が、変化し始めた。ガイウスと同じ、魔物との融合の兆候だ。
「私もこの力を、身に宿しています」
ドレクは言った。
「セイン様の研究を、正しく完成させるために」
俺は、エリナを見た。
「下がっていろ」
俺は言った。
「一緒に戦う」
エリナは答えた。
ドレクが動いた。
俺は、その速度に備えた。
---
戦いが始まると同時に、扉の亀裂が、さらに広がっていった。
塔全体が、わずかに震え始めた。
「急がないと」
アルクが言った。
「扉が、限界を迎えつつある」
俺は、ドレクとの戦いに集中しながら、扉の様子を、意識の端で確認した。
このままでは、何かが起きる。
だが、それが何なのか、まだわからなかった。
ステータス画面が、視界の端に浮かんだ。
ゼロ Lv.13
HP:58/58
MP:31/31
筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22
俺は、ドレクの攻撃を避けながら、思考を巡らせた。
止めるべきはドレクか、それとも扉そのものか。
答えは、出ていなかった。
塔がまた震えた。
時間は残されていなかった。
**次回・第71話「石の扉」**
> 塔全体が崩壊の兆候を見せる中、ドレクとの戦いが激化する。そして、亀裂が入った扉の奥から、これまで感じたことのない気配が、静かに漏れ出してきた。
始まりの塔での攻防、いよいよ始まりました。ドレクが強引に扉を開けようとしている中、ゼロたちは止めに入ります。塔の崩壊の兆候、扉の奥の気配。物語が大きなクライマックスに向かっています。
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