第67話 「王都への道」
フォルネを出発して、王都への道を進んだ。
ミレイが先導役を務めた。ラグドの地理に詳しいらしく、迷いのない足取りだった。
「王都までは、あと三日ほどです」
ミレイは言った。
俺は馬を並べて、ミレイに聞いた。
「ラグドの歴史について、教えてもらえますか」
「もちろんです」
ミレイは頷いた。
「ラグドは、大陸でも古い歴史を持つ国です。建国から、五百年以上経っています」
「遺跡についても、詳しく知りたいのですが」
俺は続けた。
ミレイは、少し考えた。
「王都の近くにある遺跡は、『始まりの塔』と呼ばれています」
ミレイは言った。
「伝承によると、この世界に最初に魔法をもたらした存在が、そこで何かを行ったとされています」
俺は、カルロから聞いた話を思い出した。
始祖。世界に最初に魔法をもたらした存在。
「その存在について、詳しい話は残っていますか」
俺は聞いた。
「古い言い伝えでは」
ミレイは続けた。
「その存在は、力を二つに分けて、この世界に残したとされています。一つは、力そのものを宿す存在。もう一つは、その力を引き出す存在」
俺は、エリナと目を合わせた。
器と鍵の話と、一致している。
「ラグドにはその伝承が、色濃く残っているんですか」
俺は聞いた。
「はい」
ミレイは頷いた。
「『始まりの塔』は、ラグド建国以前から存在していたと言われています。国の始祖信仰の中心地でもあります」
「第二王子の派閥が、その塔を管理しているんですね」
俺は確認した。
「その通りです」
ミレイは答えた。
「魔法師の入国以降、急速に塔への立ち入りを制限し始めました」
俺は、頭の中で状況を整理した。
無冠の残党が、ラグドの王位継承に介入し、始まりの塔へのアクセスを得ようとしている。その先に、何を求めているのか。
「一つ、聞いてもいいですか」
俺は言った。
「あなたは、なぜそこまで詳しいんですか」
ミレイは、少し間を置いた。
「実は」
ミレイは静かに言った。
「私の家系は代々、始まりの塔の管理を任されていました」
俺は少し驚いた。
「では、あなたは」
「今は、その立場を追われています」
ミレイは続けた。
「魔法師が来てから私の一族は、塔の管理から排除されました」
「なぜですか」
俺は聞いた。
「わかりません」
ミレイは首を振った。
「ただ、私たちが何か知っていることを、警戒しているのかもしれません」
俺は、ミレイの背景を少し理解した。
ただの商人ではなく、塔に深く関わる一族の人間だった。
「もう一つ、聞かせてください」
俺は言った。
「あなたの一族は塔について、何か特別な知識を持っているんですか」
ミレイは、しばらく黙った。
「代々伝わる、口伝があります」
ミレイは静かに言った。
「塔の奥には、器と鍵が揃ったときにだけ開く、扉があるという言い伝えです」
俺は、息を止めた。
アルクとセルマも、驚いた表情を見せた。
「詳しく、教えてもらえますか」
俺は言った。
「それ以上のことは、私も知りません」
ミレイは答えた。
「ただその扉の先に、始祖の最後の意思が、眠っているとされています」
俺はエリナを見た。
エリナも、少し緊張した表情をしていた。
「もし、それが本当なら」
俺は言った。
「無冠の残党が、その扉を開けようとしている可能性がある」
「器と鍵が揃わなければ、開かないはずでは」
セルマが言った。
「無理やり開けようとしている可能性もある」
アルクが続けた。
「オルディナの遺跡でも、封印を無理に緩めようとしていた」
俺は頷いた。
「急ぎましょう」
俺は言った。
「王都に着く前に、状況をもっと詳しく知る必要があります」
ミレイが頷いた。
「私もできる限り、協力します」
---
その夜、野営をしながら、俺はエリナと少し話した。
「もし、その扉があるなら」
俺は言った。
「エリナと俺が揃って初めて、開くということになる」
「もし、私が本当に鍵なら、だけどね」
エリナは少し不安そうに言った。
「確証はまだない」
俺は続けた。
「ただ、可能性は考えておく必要がある」
「無理やり開けようとしてる連中に、利用されないように、気をつけないと」
エリナは言った。
「そうだな」
俺は頷いた。
「エリナを、危険にさらさない」
エリナは、少し微笑んだ。
「一人で守ろうとしないで」
エリナは言った。
「一緒に、乗り越えよう」
俺は少し考えて、頷いた。
「わかった」
ステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.13
HP:58/58
MP:31/31
筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
王都まであと三日。
始まりの塔。器と鍵で開く扉。始祖の最後の意思。
全ての謎が一つの場所に、集約されようとしていた。
俺は夜空を見上げた。二つの月が静かに輝いている。
この旅の先に、何が待っているのか。
まだ、わからない。
だが、進むしかなかった。
**次回・第68話「第二王子」**
> 王都に到着したゼロたちは、ミレイの伝手を頼り、第一王子派の重鎮と接触する。そこで語られたのは、第二王子の急激な変貌の理由だった。
「始まりの塔」に眠る、器と鍵が揃ったときにだけ開く扉。ミレイの一族が、代々その管理を担っていたという新事実。物語の核心に、また一歩近づいた気がします。次回、王都でいよいよ政治の中枢に触れます。
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