第66話 「フォルネの噂」
フォルネの街に、もう一日滞在することにした。
情報を集めるためだ。ラグドの内乱について、もう少し詳しいことを知る必要があった。
俺とエリナは、市場を回りながら、噂話を集めていた。
「南部の情勢、詳しい人がいたら、話を聞きたいね」
エリナが言った。
「ギルド以外にも、当たってみよう」
俺は答えた。
市場の一角で、商人たちが集まって話しているのが見えた。俺たちは、その近くに寄って、話に耳を傾けた。
「ラグドの取引、しばらく止まってるらしいな」
「王家の跡目争いだろう。厄介なことになってる」
「聞いた話じゃ、第一王子派と、第二王子派で、真っ二つに割れてるらしいぜ」
俺は、その会話を頭に刻んだ。
その時、後ろから声がかかった。
「あなたたちも、ラグドに向かっているのですか」
振り返ると、旅装をした若い女性が立っていた。二十代前半くらい。緑色の髪を短く切り、旅慣れた様子の服装をしている。
「そうですが」
俺は答えた。
「あなたは」
「失礼しました」
女性は頭を下げた。
「私はミレイと申します。ラグドのしがない商人です」
「ラグドの方ですか」
俺は聞いた。
「はい」
ミレイは続けた。
「今の状況を見かねて、外部に助けを求めるため、こうして各地を回っています」
俺はエリナと目を合わせた。
「詳しい話を、聞かせてもらえますか」
俺は聞いた。
「もちろんです」
ミレイは頷いた。
「ただ、立ち話では、少し」
俺たちは、近くの食堂に移動した。
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テーブルを囲んで、ミレイが話し始めた。
「ラグドは、半年ほど前まで、平和な国でした」
ミレイは言った。
「ですが、国王陛下が病に倒れてから、状況が一変しました」
「王位継承の問題ですか」
俺は聞いた。
「はい」
ミレイは続けた。
「第一王子様と、第二王子様が、それぞれ派閥を作り、対立しています」
「どちらが、正当な後継者なんですか」
俺は聞いた。
「本来なら、第一王子様です」
ミレイは答えた。
「ですが、第二王子様の派閥が、急速に力をつけています」
「急速に、というのは」
ミレイは、少し声を落とした。
「第二王子様の側近に、見慣れない魔法師が加わったのです」
ミレイは言った。
「その者が、強力な魔物を操る力を、持っているという噂です」
俺はアルクと目を合わせた。
「無冠と、関係があると思いますか」
俺は聞いた。
ミレイは、少し驚いた顔をした。
「無冠という言葉を、ご存知なのですか」
「ある程度は」
俺は答えた。
「私も、詳しくは知りません」
ミレイは続けた。
「ただ、その魔法師が、黒っぽい服を着ていたという証言があります」
俺は、頭の中で情報を整理した。
黒い服。魔物の使役。無冠の残党である可能性が高い。
「その魔法師は、なぜ第二王子を支援しているんですか」
俺は聞いた。
「わかりません」
ミレイは首を振った。
「ただ、第二王子様が即位すれば、その魔法師に大きな見返りを与える約束をしている、という噂もあります」
「見返り、というのは」
「国内の古い遺跡へのアクセス権だと言われています」
ミレイは続けた。
「ラグドには、古い時代の遺跡が、いくつかあります」
俺は息を止めた。
古い遺跡。始祖の時代のものである可能性がある。
「その遺跡の場所を、教えてもらえますか」
俺は聞いた。
「王都の近くに、一つあります」
ミレイは答えた。
「ただ現在は、第二王子様の派閥が管理していて、近づけません」
俺はアルクを見た。
「無冠の残党が、その遺跡に何かを求めている可能性がありますね」
俺は言った。
「その可能性が高い」
アルクは続けた。
「オルディナの遺跡と、似た構図だ」
セルマが口を開いた。
「王位継承に介入するのは、リスクが大きい」
セルマは言った。
「慎重に進める必要がある」
俺は頷いた。
「ミレイさん」
俺は言った。
「なぜ、外部に助けを求めているんですか」
「このままでは、国が乱れます」
ミレイは答えた。
「多くの民が、苦しんでいます。誰か、公正な立場で、状況を見てくれる人が必要だと思いました」
俺は、ミレイの目を見た。
嘘には見えなかった。切実な思いが、その目に宿っていた。
「わかりました」
俺は言った。
「ラグドまで、一緒に向かいましょう」
ミレイは、少し驚いた顔をした。
「本当ですか」
「ただし」
俺は続けた。
「まだ、何も約束はできません。状況を見て判断します」
「それで十分です」
ミレイは頷いた。
「ありがとうございます」
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その夜、俺はエリナと少し話した。
「ミレイのこと、信用できると思うか」
俺は聞いた。
「わからない」
エリナは正直に答えた。
「でも話し方に、嘘はなさそうだった」
「俺も、そう感じた」
俺は続けた。
「ただ、慎重に進める必要がある」
エリナは頷いた。
「無冠の残党が、また遺跡を狙ってるんだね」
エリナは言った。
「オルディナの時と、同じパターンだ」
俺は答えた。
「古い術式を、政治的な力と引き換えに、手に入れようとしている」
「今度は、王位継承に絡んでるから、余計に厄介そう」
「そうだな」
俺は頷いた。
俺はステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.13
HP:58/58
MP:31/31
筋力:18 敏捷:21 魔力:11 耐久:15 知力:22
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
ラグドまで、あと四日。
新しい情報が、少しずつ状況を明確にしてきている。
無冠の残党。古い遺跡。王位継承の争い。
全てが、また一つの物語として、繋がろうとしていた。
俺は窓の外を見た。
南部の夜空に、二つの月が静かに輝いていた。
**次回・第67話「王都への道」**
> フォルネを出発したゼロたちは、ミレイの案内でラグドの王都に向かう。道中、ミレイが語ったラグドの歴史と、古い遺跡に伝わる伝承。それは、始祖の時代と深く関わるものだった。




