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神に何も貰えなかった転生者、実は成長上限がありませんでした  作者: Nagiousen


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第58話 「森の砦」

 森の奥に、古い砦が見えてきた。


 石造りの、崩れかけた建物だ。かつては要塞として使われていたのだろう。壁の一部は崩落しているが、まだ十分な規模を保っている。


 五人は森の中に、馬を止めた。


「ここからは、徒歩で行きます」


 俺は言った。


 全員が馬を降りた。


 俺はエリナを見た。


「大丈夫?」


 エリナは少し驚いた顔をした。それから、小さく頷いた。


「大丈夫」


 エリナは答えた。


 俺たちは砦に向かって、慎重に進んだ。索敵を続けながら、木々の間を移動する。

 砦の入り口が見えてきたところで、俺は足を止めた。


「見張りがいる」


 俺は小声で言った。 


「四人。予想より多い」


「配置は」


 アルクが聞いた。


「入り口の両脇に二人。塔の上に二人」


 俺は続けた。


「距離があるから、詳しい装備まではわからない」


 カルロが静かに言った。


「団長本人は、まだ確認できないか」


「確認できていません」


 俺は答えた。


 「奥にいる可能性が高いです」


 セルマが剣に手をかけた。


「どう攻める」


 俺は少し考えた。


「まず、見張りを静かに無力化する」


 俺は言った。


「音を立てずに」


「できるのか」


 アルクが聞いた。


「エリナと二人で」


 俺は続けた。


「エリナの石は、遠距離から音を立てずに当てられる」


 エリナが頷いた。


「やってみる」


 俺とエリナは、砦の側面に回り込んだ。木々の陰から、見張りの位置を確認する。


「あそこ」


 俺は指さした。


「二人まとめて狙える、位置にある」


 エリナが石を構えた。手のひらに、小さな光が集まっている。修行の成果だ。


「一発で仕留める」


 エリナは言った。


 石が放たれた。


 風を切る音すらしなかった。石が見張りの一人の頭に当たり、男が声もなく崩れ落ちた。

 もう一人が異変に気づく前に、エリナが二発目を投げた。同じく、音もなく倒れた。


 俺は素早く走り、二人を確認した。気絶しているだけだ。命は奪っていない。


「見事だ」


 俺はエリナに言った。


 エリナが少し照れたように笑った。


「ゼロの真似」


 俺たちは残りの二人がいる塔に向かった。アルクとセルマが、反対側から接近している。


 合図を送り合い、同時に動いた。


 塔の上の見張りは、アルクが素早く制圧した。剣の柄で気絶させる、鮮やかな動きだった。


 もう一人は、セルマが対応した。


 全ての見張りが、静かに無力化された。


 俺たちは砦の入り口に集まった。


「ここまでは、順調だ」


 セルマが言った。


 カルロが砦を見上げた。


「中に、まだ多くの気配がある」


 老魔法師は続けた。


「油断するな」


 俺は頷いた。


 砦の扉を、慎重に開けた。

 中は薄暗く、松明の light が壁に沿って灯されていた。長い通路が奥まで続いている。


 俺は索敵をした。


「奥に、複数の気配がある」


 俺は言った。


「十人以上」


「予想通りだ」


 アルクが言った。


 通路を進んでいくと、広い空間に出た。


 そこに、武装した男たちが待ち構えていた。

 十五人ほどだ。全員が武器を構えている。


 その中央に、一人の大柄な男が立っていた。

 筋骨隆々とした体格。傷だらけの顔。目つきが鋭い。


「来たか」


 男が低い声で言った。


 エリナが小さく息を飲んだ。


「団長」


 エリナが呟いた。


 ガイウスと呼ばれた男が、エリナを見た。口元に、歪んだ笑みが浮かんだ。


「戻ってきたか、エリナ」


 ガイウスは続けた。


「待っていたぞ」


 俺はエリナの前に立った。


「エリナに近づけさせない」


 俺は言った。


 ガイウスが俺を見た。


「お前は誰だ」


「ゼロだ」


「聞いたことがある名前だな」


 ガイウスは続けた。


「Fランクから、あっという間にCランクになった、変わり者だと」


「そうだ」


 ガイウスが、周囲の部下たちに合図した。男たちが武器を構え直した。


「エリナには、まだ使い道がある」


 ガイウスは続けた。


「渡してもらおうか」


「渡さない」


 俺は答えた。


 ガイウスが笑った。


「なら、力ずくで奪うまでだ」


 男の体が、変化した。

 全身の筋肉が膨れ上がり、肌が黒ずんだ色に変わっていく。目が赤く光った。


「無冠から授かった力だ」


 ガイウスは続けた。


「魔物の力を、この身に宿している」


 俺はステータス画面を確認した。


 ガイウス(強化状態) Lv.???

 HP:???

 危険度:???


 読めない。


 カルロが低い声で言った。


「かなり強い」


 老魔法師は続けた。


「魔物と人間の融合の、初期実験体だ」


 俺は短剣を構えた。


「エリナ」


 俺は言った。


「後ろにいろ」


 エリナが首を振った。


「一緒に戦う」


 エリナは言った。


「もう、逃げない」


 俺はエリナを見た。


 その目に、迷いはなかった。


「わかった」


 俺は言った。


「一緒に戦おう」


 ガイウスが咆哮を上げた。


 部下たちが一斉に襲いかかってきた。



**次回・第59話「決着」**


> 十五人の部下と、強化されたガイウス。五人対多数の戦いが始まった。そしてゼロは、エリナを守りながら、団長との一騎打ちに挑む。


ついにガイウスとの対決です。魔物と人間の融合、無冠の研究の一端が姿を現しました。ゼロのエリナへの口調、今回からタメ語に変えています。二人の関係の変化を、口調でも感じてもらえたら嬉しいです。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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