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神に何も貰えなかった転生者、実は成長上限がありませんでした  作者: Nagiousen


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103/123

第103話 「見守る者の祠」

 七日目の朝、モルンの街が、見えてきた。


 街に近づくにつれ、俺はその静けさに違和感を覚えた。

 人通りが、極端に少ない。


「以前はもっと、賑やかな街でした」


 リーゼが、悲しそうに言った。


 街に入るとその様子が、はっきりと見えた。


 多くの家の扉が、閉ざされている。開いている店も少ない。


「昏睡している人々は」


 俺は聞いた。


「どこに、保護されているんですか」


「街の集会所に」


 リーゼは答えた。


「案内します」


 俺たちは、集会所に向かった。


 中に入ると数十人の人々が、床に並んで横たわっていた。


 誰もが静かに、眠っているように見えた。だがその表情には、微かに苦しげな影があった。


「これが」


 俺は、静かに言った。


「昏睡している方々ですね」


「はい」


 リーゼは答えた。


「日に日に、増えています」


 俺は一人の女性の側に、しゃがみ込んだ。

 息はしている。だが、呼びかけても反応がない。


 俺はその手に、触れた。

 冷たかった。


「魔力を、確認できますか」


 俺は、カルロに聞いた。


 カルロが静かに、女性のステータスを読み取った。


「極端に、低下している」


 カルロは言った。


「モリスの報告通りだ」


「原因は、わかりますか」


 俺は聞いた。


「まだ、わからない」


 カルロは答えた。


「祠を、確認する必要がある」


---


 俺たちはリーゼの案内で、街の外れにある祠へと向かった。


 小さな石造りの建物だった。表面に、古い文様が刻まれている。だが、オルディナの遺跡やリンネの遺跡群ほど、大規模ではなかった。


「入り口が、開いています」


 リーゼが言った。


 俺は、その入り口を見た。

 確かに扉のようなものが、開いたままになっている。

 俺は、索敵を行った。


「中に、気配があります」


 俺は言った。


「一つだけ」


「敵意は」


 アルクが聞いた。


 俺は慎重に、感じ取ろうとした。


「わからない」


 俺は答えた。


「敵意とも違う、静かな気配です」


 俺たちは慎重に、祠の中へと進んだ。

 中は思ったより、狭かった。壁一面に、細かい文様が刻まれている。


 中央に、一人の人物が座っていた。


 若い男だった。黒っぽい服を着ている。だがリーゼの言っていた通り、その目には、敵意や野心のようなものは、感じられなかった。


 男が、俺たちを見た。


「ようやく、来ましたね」


 男は、静かに言った。


「あなたは」


 俺は聞いた。


 男は、少し微笑んだ。


「私は、見守る者の末裔です」


 男は答えた。


「名は、ラーテと申します」


「見守る者、というのは」


 俺は聞いた。


「始祖の力を記録し、見守り続けてきた一族です」


 ラーテは続けた。


「始祖が世界に力をもたらした後、その力の使われ方を見届けることを、私たちの使命として、代々受け継いできました」


 俺は頭の中で、情報を整理した。

 旧血族ともまた違う、始祖に関わる一族。


「なぜ街の人々が、昏睡しているんですか」


 俺は聞いた。


 ラーテの表情が、初めて曇った。


「それは」


 ラーテは、静かに答えた。


「私の意図しない、事故です」


「事故、というのは」


 俺は聞いた。


「私はこの祠に眠る始祖の観察記録を、確認しようとしていました」


 ラーテは続けた。


「その過程で、記録が周囲のマナに、干渉してしまいました」


「その干渉が、人々を昏睡させているんですか」


 俺は聞いた。


「そうです」


 ラーテは頷いた。


「祠の力の影響範囲が想定より広く、街の人々にまで届いてしまいました」


 俺は少し、緊張した。


「止められますか」


 俺は聞いた。


「止められます」


 ラーテは、答えた。


「ただ記録の解読を、完全に中断する必要があります」


「では、止めてください」


 俺は言った。


 ラーテは、少し俺を見た。


「一つ、条件があります」


 ラーテは言った。


「条件、というのは」


 俺は聞いた。


「私が見つけようとしていた記録には」


 ラーテは続けた。


「始祖の器についての重要な情報が、含まれている可能性があります」


 俺は身構えた。


「どんな、情報ですか」


「それを、確認するために」


 ラーテは答えた。


「あなたの協力が、必要です」


 俺は少し考えた。


「街の人々を先に、助けてください」


 俺は言った。


「それが、最優先です」


 ラーテは、静かに頷いた。


「わかりました」


 ラーテは言った。


「今すぐ、干渉を止めます」


 ラーテが目を閉じ、両手を壁の文様に向けた。

 祠の中の空気が、静かに変化していった。



**次回・第104話「観察記録」**


> ラーテが干渉を止めたことで、街の人々の容態が少しずつ、回復に向かい始める。だが、ラーテが語る始祖の観察記録の中身は、ゼロの想像を超える真実を含んでいた。


見守る者の末裔、ラーテとの出会いです。敵意のない相手、これまでとは違うタイプの登場人物です。街の人々を巻き込んでしまった事故という展開。次回、その謝罪と共に、重要な観察記録の話が進みます。


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