第102話 「モルンへの道」
出発は、翌朝早くだった。
俺、エリナ、カルロ、アルク、セルマ、そしてリーゼの六人だ。
西部への道はこれまでの旅とは、また違う景色が広がっていた。乾燥した土地が多く、緑が少ない。
「モルンまでは、どれくらいですか」
俺は、リーゼに聞いた。
「馬で、七日ほどです」
リーゼは答えた。
俺は頷いた。
道中俺はリーゼに、モルンの街について詳しく聞いた。
「モルンには古い伝承が、残っているんですよね」
俺は聞いた。
「はい」
リーゼは頷いた。
「私たちの街には遠い昔、この地を訪れた旅人の物語が、伝わっています」
「どんな物語ですか」
俺は聞いた。
リーゼは、少し記憶を辿るように、目を閉じた。
「その旅人は」
リーゼは、語り始めた。
「世界中を巡り様々な力の在り方を、見て回っていたとされています」
俺は少し、興味を持った。
「その旅人の名前は、伝わっていますか」
「伝わっていません」
リーゼは答えた。
「ただ、村の古い言葉で『見守る者』と、呼ばれていたそうです」
「見守る者」
俺はその言葉を、繰り返した。
「その旅人が」
リーゼは続けた。
「街の外れに小さな祠を、建てたと言われています。その祠が後に、遺跡として封鎖されました」
俺は、カルロを見た。
「聞き覚えは、ありますか」
俺は聞いた。
カルロは、少し考えた。
「見守る者という言葉は」
カルロは答えた。
「始祖の時代の記録に、時々出てくる表現だ」
「始祖と、関係があるんですか」
俺は聞いた。
「断定はできない」
カルロは続けた。
「ただ、始祖の力を観察し記録するために、世界中を旅した者たちがいたという伝承は、聞いたことがある」
「見守る者たちが始祖の力の番人だった、ということですか」
俺は聞いた。
「その可能性はある」
カルロは答えた。
俺は頭の中で、情報を整理した。
モルンの祠に、始祖に関わる何かが眠っていた。それが遺跡として、封鎖されていた。そして今、その封鎖が解かれた。
「なぜ今になって、封鎖が解かれたんでしょうか」
俺は言った。
「わかりません」
リーゼは答えた。
「ただ、封鎖が解かれる少し前に、街に見慣れない旅人が、訪れていました」
俺は、緊張した。
「その旅人について、詳しく教えてください」
俺は言った。
「一人の、若い男でした」
リーゼは続けた。
「静かな物腰で、街の古い伝承について、熱心に尋ねていました」
「その男の、特徴は」
俺は聞いた。
「黒っぽい服を、着ていました」
リーゼは答えた。
「ですがこれまで、噂に聞いていた無冠の人間とは、少し雰囲気が違いました」
「どう、違ったんですか」
俺は聞いた。
「目が」
リーゼは少し、迷いながら答えた。
「とても穏やかでした。敵意や野心を感じさせない、目でした」
俺はその言葉を、静かに受け止めた。
これまで対峙してきた相手とは、違う何か。
「その男は、今どこに」
俺は聞いた。
「わかりません」
リーゼは答えた。
「封鎖が解かれた後、姿を見ていません」
俺は頭の中で、状況を整理した。
まだ、正体の掴めない相手。だがこれまでのような、明確な敵意を持つ勢力とは、違うのかもしれない。
---
三日ほど進んだところで、俺たちは小さな村で休息を取った。
その夜エリナが、俺のところに来た。
「モルンの話、聞いてた」
エリナは言った。
「見守る者って、なんか気になるね」
「そうだな」
俺は答えた。
「敵意のない旅人というのも、これまでと違う」
「敵じゃないってこと?」
エリナが聞いた。
「まだ、わからない」
俺は答えた。
「でも、これまでとは違う対応が、必要かもしれない」
エリナは頷いた。
「対話、できるといいね」
エリナは言った。
「そうだな」
俺は同意した。
俺はステータス画面を確認した。
ゼロ Lv.16
HP:70/70
MP:37/37
筋力:21 敏捷:25 魔力:14 耐久:18 知力:25
スキル:なし
備考欄:◇◇◇◇◇◇
見守る者。穏やかな目を持つ謎の旅人。
モルンの遺跡に、何が眠っているのか。
窓の外を見た。二つの月が、静かに輝いている。
答えは、まだ遠かった。
**次回・第103話「見守る者の祠」**
> モルンに近づくにつれ街の様子が、次第に明らかになっていく。そして、封鎖が解かれた祠の入り口で、ゼロたちは一人の人物と出会うことになる。
モルンに伝わる「見守る者」の伝承。始祖の時代に、世界を旅した観察者たちがいたという新情報です。これまでの敵とは違う、穏やかな目を持つ謎の旅人の存在も気になるところです。次回、モルンに到着します。
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