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第四話 マリアライト


 今日も今日とて、私は漫画を読み耽る。

 一日の終わりに相応しい、至福の時間だ。


「はあー……ピーちゃん、マジ女神」


 お気に入りのキラキラした女性キャラを眺めていると、疲れも吹き飛ぶというもの。明日は仕事も休みだし、夜更かししても平気だ。まあ大体、翌日の予定なんて気にせず読むけど。


「……マリアライトがアキラビトになったら、絶対ピーちゃんみたいな感じだよね」


 漫画の切りがいい所でお茶を飲みながら、私はふと視界に入ったペンダントを見やる。黄色いマリアライトという宝石がついた、お気に入りのジュエリーだ。目立つ色のはずなのに柔らかい印象で、マリアの名が最高に似合っている。

 ちなみにアキラビトは都市伝説の一つなんだけど、怖くない割に結構有名な話。大切にされた宝石が人の姿になって、持ち主の夢に現れるそうだ。それが宝石の化身『アキラビト』。

 

「穏やかで優しくて、美人でスタイルが良くて、光り輝く女神……」


 完璧だ、私のマリアライト。是非、夢に出てきてくれ。


 うっとりとそんなことを想像していたら、何故か急に眠気が襲ってくる。まだ日付が変わったばかりなのにおかしいな、と思いつつ、私はちょっとだけ仮眠することにした。




『仮眠じゃかんわ、熟睡しやあ』


 突然そんな呆れ声が降ってきて、私の体は跳ね起きる。ふわふわと身が軽いことを不思議に思う暇もなく、目の前に立つ青年が言葉を続けた。


『おみゃあさん、まあちょっと早く寝んとかんがね』


 柔らかい黄色の瞳に濃い茶色の短い髪をした、細身のイケメンである。しかし。


「ど、どちら様でしょうか……?」

『おみゃあさんのマリアライトだがや。形態としてはアキラビトだで』

「いやいやいやいや、私のマリアは女神ですし」

『まあ、そこは諦めてちょーよ』


 苦笑する青年の瞳は確かに、私のマリアライトと寸分違わぬ色をしていた。


「マジか……」


 絶世の美女が良かった……と膝をつく私の肩を、マリアライトがぽんと叩く。


『とりあえず、趣味は偏ってもええでよ。睡眠はひずまんようにしよまい』


 慰めるようにかけられる声は、思いのほか優しくて温かい。

 睡眠は大切だ。それは分かっている。余りにも眠いと、漫画の内容が頭に入らないし。

 性懲りもなくそんなことを考えながら顔を上げれば、マリアライトは笑ってこちらに手を振った。


『ほしたら、もう休みゃー』

「みゃー……」


 つい妙なオウム返しをしてしまったが、私はそのまま意識を手放していた。




 眩しい太陽光が降り注ぐ朝、ぱちりと目が覚める。


「んんー……!」


 大きく伸びをすると、体がすっきりして気持ち良かった。夢を見ていたことは記憶しているのに、とても深く眠っていた感覚がある。


「魔法使いなの、マリア」


 昨夜と同じ場所に鎮座するペンダントを見つめ、そんな呟きがこぼれた。

 いや、いつもよりは早く寝たからかもしれない。分からないけど、でも。


「早寝早起き、ね」


 少しは頑張ってみようか。

 と、そう思えた清々しい朝だった。


 実行できた日がどれくらいあったかは、神のみぞ知る。



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