第十七話 チタナイト
毎月二十二日は記念日だ。
私が勝手に決めたものだが、私が楽しいのでヨシ。
「いえーい、チタくん。今月は栗きんとんにしてみたよー」
そんなことを言いながら、お気に入りの指輪におやつを掲げて見せる。キラリと光って応えるのは、指輪に嵌まっているチタナイトという宝石だ。何とダイヤモンドより輝きが強く、大変美しい一品である。
ちなみに愛称をつけて呼んではいるが、本当に返事をくれているなどとは思っていないので安心して欲しい。しかし私が楽しいので(二回目)、宝石がきらめいたら『何か反応くれてる』ということにしていた。
「美味しー! 秋って感じするわあ」
栗きんとんの優しい甘さが、心をしみじみとさせる。チタナイトの為の記念日だけど、一ヶ月頑張った自分へのご褒美も兼ねているのだ。お楽しみが待っていると思えば、毎日もチタナイトのように輝いて……見えると良いなと期待している。
そしてちょっと食べ過ぎたかもしれないと横になったら、私はそのままあっさりと寝てしまった。
『主、少々尋ねたいことがあるんだが……』
そんな声が聞こえて振り返ると、見たこともない麗しい青年が居る。どこの王子様かと思うような風貌だったが、宝石みたいに輝く瞳のオレンジ色にはとても見覚えがあった。
「チタくん? チタくんだよね? 凄ーい、チタくんじゃん!」
『……とりあえず、落ち着いてくれ』
私が確信してパッとテンションを上げると、青年はサラサラの金髪を揺らして溜息を吐く。
「あ、ごめんね。えっと、アキラビトだっけ? 宝石の化身なんだよね」
宝石を大切にしていると、その宝石が人の姿で持ち主の夢に出る。それが、アキラビトっていう都市伝説だ。宝石に話しかけている割に興味のない話題だったけど、一応覚えていて良かったと安堵する。
『その通りだ。まあしかしそれは置いておいてだな、俺は君に聞きたいことがある』
「はいはい、何でしょう?」
『君が俺の記念日としている二十二日には、どういう意味があるんだ?』
「ああ、それ」
そういえば、理由を語りかけたことって無かったかもしれない。でもそれを気にされているとは、露ほども思っていなかった。何だか嬉しい。
「チタくんってチタンを含有してて、チタン石とも呼ばれるでしょ? チタンの原子番号が二十二だから、チタナイトの記念日にしよーって思ったの」
大した理由じゃなくてごめんね、と加えて苦笑すれば、チタくんは納得した表情で深く頷いた。
『なるほど、承知した。では次の機会までに、おやつのリクエストを考えておこう』
「ふおっ?」
チタくん、おやつ食べられるのかい?
と尋ねようとしたところで、私の夢の記憶は途切れた。
その後の私はしばらく、『宝石が食べられるおやつ』を真面目に考えることとなる。
しかし結局、再び夢にチタくんが現れて、ごく普通のおやつをリクエストされたのだった。当然食べるのは私だけなんだけど、一緒におやつを囲むのが楽しいらしい。
日々が本当に輝いて見える時が来るとは、流石チタナイトである。




