第十六話 世界の隙間
君は知ってる?
宝石を大切にしていると、その宝石が人の姿で持ち主の夢に現れる話。
宝石の化身『アキラビト』っていう都市伝説で、結構有名なんだよ。
その噂を広めたの、実は僕だってことも知ってる?
……なんてね。
『今日もアキラビトたちは、持ち主と良い交流をしてるみたいだ』
僕は今、とある高層ビルの屋上にいる。仰げば今夜も星々がきらめいていて、広い空はとても美しい。僕の緑色の瞳も、あんな風に輝いているだろうか。
高い所が好きなのは、宇宙に手が届きそうな気がするからだ。それに視界が開けているほうが、他のアキラビトのエネルギーを感知しやすい。彼らと持ち主の穏やかな縁を眺めていると、心が温かくなる。
『うっかり、夢の外に出ちゃう宝石もいるし』
でも、大事な持ち主が危なかったら、そりゃあ助けるよね。
と、僕は誰もいない場所でひとり頷く。そもそもアキラビトは夢だけでなく、現実にも干渉できる存在だ。それがあんまり伝わっていないのは、勿論わざとなんだけど。
『いつか人間がいなくなってしまっても、宝石たちはずっと覚えているよ』
そんな想いは、きっとアキラビトの誰もが同じだろう。
涼やかに吹き抜ける風が心地よく、僕の焦げ茶色の髪を揺らしていく。
『さて、あっちの塔の上にも行ってみようかな』
あ、そうそう。僕はモルダバイトって言うんだ。
記憶の片隅にでも、残しておいて貰えたら嬉しいな。




