表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/20

第十五話 コーネルピン

『やあ、こんばんは。僕はアキラって言うんだ、宜しくね』


 愛らしい子猫に話しかけられ、私は黄色い悲鳴を上げた。


「きゃあー! 可愛いぃー!!」


 猫と話ができるなんて、夢っていうのは本当に素晴らしい。


『主ちゃんは反応が良くて楽しいなー! じゃあ、こんなのはどう?』


 そんなことを言いながら猫は、瞬く間にデフォルメされたシャチの姿に変わる。


「おおーっ! 本物っぽい触り心地なのに、絶妙なぬいぐるみ感! 流石だね、ルピン」

『でしょー? 主ちゃんの好みは、バッチリ把握済みだもんねー』


 得意げにふんぞり返るシャチがまた、堪らなく愛おしい。可愛いが過ぎる。

 先程から私の望む姿に変身してくれている彼女の名は、コーネルピン。現実世界で私が大切にしている、宝石のルースだ。今は私の夢の中で、宝石の化身『アキラビト』として現れている。

 因みにルースというのは、ジュエリーになる前のカットが施された状態の宝石のこと。アキラビトというのは、宝石が持ち主の夢に人の姿で出るっていう、都市伝説だ。


「……ルピンにも、アキラビトとしての人の姿があるんだよね?」

『うん、あるよー。でも変身が得意な宝石としては、正体不明のほうが粋だと思うんだよね!』


 そう言ってウインクするシャチの瞳は、くるくると色が変わっている。その楽しそうな様子からは、己を押し殺すような雰囲気は感じられなかった。

 でも、気を遣ってくれているのは分かる。宝石の化身アキラビトは、人の姿で持ち主の夢に現れるはずなんだけど。私が人間嫌いで、ぬいぐるみとかとばかり話している為だろう。彼女は初めて夢で会った時からずっと、私の好きな『可愛いもの』の姿をしていた。


「そうだね。でも……気が向いたらでいいから、どんな人なのか見てみたいな」


 私が控えめにそう言うと、ルピンはシャチ姿からでも分かるほどポカンとしている。しかし次の瞬間、シャチはポンッと消えて人間の女性が現れた。


『主ちゃん。コーネルピンさんはいつでも、主ちゃんの味方だからね!』


 赤茶色のミディアムヘア、角度によって色が変わる瞳。色鮮やかな布をスカーフのように首に巻いた彼女は、快活な笑顔で大袈裟にこちらへ手を差し伸べる。


「ふふっ……ありがとう、ルピン。大好きだよ」


 自分に『さん』付けするのがあまりにもルピンらしくて、私は思わず笑った。




 ――朝が来る。その度に、目を覚ましたくないと願う日々。

 今日もそれは同じだったけど、今までよりは起き上がる体が軽い気がした。


「コンビニ……いや、散歩かな……」


 ちょっとだけ、必要でない外出をしてみようと。

 そう思えたことを、今度ルピンに会ったら話したいと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ