第十三話 イエローダイヤモンド
どんなことにも傷つかない、対象を推す強い気持ち。
だけどそれは、あっけなく割れてしまうこともある。
「解釈違いとかでね……」
知らず溜息を吐く私の心は、すっかり萎れていた。大好きなヒーローアニメ『ストーンアテナ』を視聴する中、突如として解釈違いのエピソードが舞い込んできたのである。
内容は言うまい。世間の反応を見れば一目瞭然、みんな楽しんでいたからだ。この葛藤を抱えるのは、恐らく私だけなのだろう。
そんな訳で熱狂的ファンだった私は急速に作品から足が遠のき、しかしながら未練はたっぷりという有様を続けている。だって一部の解釈違い以外は大好きなのだ、仕方ない。
「こういう時は、寝るに限る」
未視聴のまま積み上がっていく録画数は、今夜も更新されるはずだ。
いつかまた、楽しめる日が来るだろうか。
『来るよ! また僕と一緒に観ようよ!』
「!?」
気づけば私は知らない場所で、オレンジがかった黄色の瞳を輝かせる、一人の青年と対峙している。
『僕もストーンアテナ、大好きなんだ。地球を侵略する宇宙人から人々を守るヒーローだもん、かっこいいよね!』
キラキラした笑顔で話す青年は、とても純粋な雰囲気をまとっていて眩しかった。
と言っても知らない人だし、周囲に何もないし、これは夢なんだろうなと考える。
『宇宙人がみんな同じ埴輪の姿なのも、ちょっと変わってて……』
「それ! それよ!!」
しかし、わだかまりを刺激された私は思わず叫んだ。
「全部の敵が寸分変わらぬ埴輪姿なのが良かったのに、この間は何故か土偶の敵が出てきたじゃん! あれ何!?」
『埴輪の仲間じゃないかな』
「埴輪と土偶は別物なの!!」
『あっ、作られた時代が違うんだよね。でもストーンアテナはフィクションだから、そういうのも楽しいと思うよ!』
「くっ……」
なんて素直な楽しみ方をしているんだ、この人は。羨ましい。
純粋さの王者みたいに光り輝いている。
『どんな相手にも負けないヒーロー、素敵だと思わない?』
「思う……」
『じゃあ明日は、ストーンアテナの日にしよう!』
「溜まってる録画、一緒に観てくれるの?」
『勿論だよ。楽しみだね!』
「……分かった。観る」
彼がそう言うならと、知らないうちに思えている自分が不思議だ。そして太陽のようなきらめきを宿した瞳には、何となく見覚えがある気がしている。思い出せないが。
――覚醒した私の視界に、オレンジがかった黄色の宝石が付いた指輪が映る。
お気に入りのイエローダイヤモンドで常に指に嵌めており、寝る時すら外すのを忘れることがしばしばの一品だ。
「もしかして、イエローダイヤモンドくんですかね?」
夢の記憶が蘇ってきて指輪に尋ねるも、当然返事はない。しかしその強く美しい輝きは青年を彷彿とさせるもので、私は心が温かくなる。
そしてイエローダイヤモンドとヒーローアニメを楽しんだ私が、宝石の化身アキラビトの存在を知るのはもう少し先のことだった。
それは大切にされた宝石が人の姿をとり、持ち主の夢に現れるという都市伝説である。




