第十一話 ロッククリスタル
恐ろしく透き通った水晶玉は、まるで世界の重鎮のようだ。
今もこうして、威厳のある凛とした表情で私を見つめている。
『君、そろそろ部屋の掃除をしないか。私とその周辺は常に清潔にしてくれているが、他の場所も同じようにしたほうが良いと思うぞ』
輝く長い銀髪に、皇帝のような黄金色の瞳。無表情かつ静かな視線を向けてくる女性は、私の愛する日本産の水晶玉――ロッククリスタル――だ。補足すると現在は夢の中で、人間の見た目になっている。
「すいません、クリスタル以外のことは面倒で……じゃなくて。水晶すなわち石英って空気中の埃にも含まれてるらしいですし、クリスタルに囲まれてる感があって良いなって思って」
まさか自分の宝石がアキラビトになるとは……などと頭に過ぎらせつつ、私は少ない知識をフル回転させて応えた。
ちなみにアキラビトというのは、そこそこ有名な都市伝説の一つである。宝石を大切にしていると、持ち主の夢にその宝石が人の姿で現れるらしい。
『その理由、いま考えただろう。掃除はそれだけで、相応の不浄を取り除ける行いだ。私に頼らなくてもな』
「押忍。頑張ります、クリスタル師匠」
言い訳をしっかり見透かされていた私は、もはや言葉少なくイエスマンとなった。
それはさておき、やっぱり水晶って浄化能力があるんだな。それが知れたことのほうが都市伝説より凄い気がする。
『ふ、期待している』
そう言って薄く笑みを浮かべたロッククリスタルは、鳥肌が立つほど美しかった。
「さて、始めますか」
すっきりと目覚めた朝。
清掃の準備を整えた私は、そこはかとなく空気が澱んだ部屋を前に宣言する。
「人間もなかなかどうして、秘めたるパワーがあるってことよ」
自力で運気上昇できるんだからね。
そんなことを言いながら掃除を進める私を、水晶玉が静かに見つめていた。
……ような気がした。




