008話 暗殺者な執事セバスチャン
昨夜のヴィンスとの転生に関する会話を盗み聞きしていたセバスチャンを、泡姫は監視砦の塀の上に呼び出して問い詰めた。この時間は見回りの騎士達が出払っているので2人だけになった。
「セバス。私とヴィンスさんとの会話を聞いていたでしょ?」
「何の事でございましょう」
「この際なのでハッキリと言うけれど、貴方がサウスインダス王国で暗殺者をしていた事は知っているのよ」
「……それはアリエル様が転生者だから知り得た情報でしょうか?」
「そうよ」
「…………」
「…………」
泡姫とセバスチャンの間にしばし沈黙が流れる。それをセバスチャンは破った。
「アリエル様が腹を割って話されているので、儂も覚悟を決めました。アリエル様は勇者と聖女について、どこまでご存じですかな?」
「聖剣に認められた者が勇者に、聖獣に認められた者が聖女になるはずよ。その他にも国に認められた者は英雄の称号が与えられるわ」
「その認識でよろしゅうございます。それでは亡くなった先代の勇者が転生者だったことは?」
「えっ?! 勇者って転生者だったの?」
「左様でございます。サウスインダス王国では過ぎた力の持ち主である勇者を監視する役割があり、儂が担っておりました。ちなみに儂はもう引退しましたのでご安心を」
「安心ができないから、こうして話し合っているわ。転生者として知った情報の中から貴方に関して未来予知のような助言をするけれど、信じてもらえるかどうか……」
「以前のアリエル様でしたら信じなかったかも知れませんが、聖女となられたからには信じねばならないでしょうな」
セバスチャンは珍しく溜息を吐いた。
「セバスには息子がサウスインダス王国に居るでしょう?」
「そこまでご存じとは……」
「主戦派に彼を人質に取られて、セバスに私を暗殺するように依頼して来るわ。サウスインダス王国と戦争を行う口実を、私達のノースグラナリー王国に与えるためよ」
「な、何とっ!!」
これまた珍しくセバスチャンは絶句する。泡姫から告白された情報を吟味するように、セバスチャンは顎髭を撫でつけた。
「その依頼が来たら私に教えて頂戴」
「教えても何も出来ますまい……」
「あら? 私、聖女になったので転移門が使用できるようになったのを忘れてないかしら? セバス」
「!!」
泡姫は耳にある聖女のイヤリングを触った。転移門を使ってサウスインダス王国の主戦派に拘束されるはずの、セバスチャンの息子を救出する予定である事を話す。セバスチャンは片膝を床に付けて跪いた。
「セバスの息子が拘束されたなら助けに行くつもりだったのよ」
「老骨ながら儂セバスチャンは、アリエル様に生涯をかけての忠誠を誓います!」
「その誓いに恥じないように主として報いたいと思うわ」
泡姫は手を出してセバスチャンの腕を掴んで立ち上がらせた。セバスチャンと色々と話すと、泡姫だけが知らなかった事実が明るみになった。
「えっ?! お父様とお母様も、リリーとカルミアも私が転生者だって知っていたの?!」
「左様でございます。幼い時分からアリエル様は理解不明な言語を呟いたりしていたので、転生者ではないかと奥様が当たりをつけておられました。儂がアリエル様付きの執事に任命されたのも転生者故の奥様なりの配慮でございます」
「そ、そうするとお母様はセバスが暗殺者とか勇者を監視する仕事をしていたことまで把握していて、使用人になってもらっていたの?」
「奥様には雇われる前に全てお話致しました。寛容な心遣いに感謝の言葉もございません」
泡姫の母アマリリスは寛容な心ではなくて、考えても仕方がない派なので少し違うと苦笑する。その性格が災いしてゲームのアリエル公女殿下は暗殺エンドがあるので皮肉な物だ。これで暗殺エンドは回避出来そうなので泡姫は嘆息した。
後でヴィンスに転生者と伝える相手の相談をされる。ヴィンスはブレイドと他の幼馴染には転生者である事を既に打ち明けているようだ。
「アリエルさん。ブレイドとは幼馴染なのだが、他の幼馴染にも俺が転生者として打ち明けているんだ。アリエルさんが転生者と伝えても良いだろうか?」
「あら。それならば私の家族と私付きの使用人も私が転生者だと知っているので、ヴィンスが転生者だと教えても良いかしら?」
「それは妙案だな! お互いにそうしようか」
「そうしましょう!」
泡姫 「ヴィンスさんはブレイドさんと幼馴染なのね」
ブレイド「何? ヴィンスがおねしょした事を聞きたい……い、痛っ!!」
ヴィンス「(ブレイドを拳で殴る。)お前のそう言う所だけ嫌いだ!」
次回の話は翌日の19時になります。
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