007話 勇者の秘密とギガントロール戦、そして他の転生者が発覚!
王都近くの古代遺跡から魔の森の監視砦遺跡に転移門で向かった泡姫達。ゲーム中で推しキャラだったヴィンスが瀕死だったので聖女の回復魔法で助ける。魔物の群衆はセバスチャンとノワールが倒してくれたが、森の奥から出て来た強い魔物のギガントロールを倒さなければならない。
副騎士団長のブレイドがセバスチャンを訝しんだ。
「おい、お前。もしかして灰色のセバスじゃねぇか?」
「それは懐かしい呼び名ですね」
「おっ! こいつは良い所に現れたな! 南の勇者のパーティー・メンバーだった男だ!」
「えっ?! セバスは強いと思っていたけれど、勇者のパーティー・メンバーだったのね」
泡姫も初耳であった。
「昔の話ですが左様でございます。勇者が亡くなった所で奥様に拾われまして、輿入れに同行致しました」
「勇者は死んでいたのか! どうやって死んだんだ?」
ブレイドは気になったようでセバスチャンに尋ねる。セバスチャンは言いたくないようで言葉を濁した。
「妙齢のお嬢様2人の前では言いにくいですね……」
「私、聞きたいのでお言いなさいな」
「アリエル様がそこまでおっしゃるなら……勇者は童貞を拗らせて腹上死したのでございます」
「「はっ!?」」
「「ブフッ!!」」
泡姫とカルミアの女性陣は聞き間違いかと思った。ヴィンスとブレイドの男性陣は噴き出してしまった。勇者は成長期を自己鍛錬や修行で過ごし、女性を知らずに童貞のままに青年期を迎えてしまった。幸いにも魔王が誕生しなかった時期なので平和であり、好いた女性と事に及んでいる時に腹上死したそうだ。
死の間際に勇者は達していて勇者が好いた女性は身籠ったそうだ。勇者の醜聞となるので、事件は闇に葬られて世間には公表されなかったようだ。
勇者が達した状況を何故にセバスチャンが知っているのか気になったヴィンスとブレイドは問い詰めた。
「何故、そこまで詳しく知っているのだ? ……勇者が達したとか」
「そうだぞ。作り話じゃないのか?」
「詳しくは話せませんが、儂は勇者を見張る仕事をしていました。勇者が好いた女性は最中に失神していて、勇者の遺体はそこで回収しましたので萎えて抜け落ちて白濁が滴り落ちる所まで……」
「「あーっ!! それ以上は聞いては駄目な奴だっ!!」」
カルミアが顔を真っ赤にしているのを見て、ヴィンスとブレイドはセバスチャンの口を止めた。泡姫は前世の記憶があるので、そこまで詳細に設定はしていないので興味深く聞いていた。
ブレイドはそんなカルミアを見て言った。
「お前、可愛いな」
「!!」
更に顔を真っ赤にしたカルミアを見て、泡姫は脈ありと思う。そう言えばブレイドとカルミアはゲーム中では面識がないので面白い組み合わせとも言える。
「男としてはあやかりたい死に様でございましたな」
「ぶっちゃけ過ぎだ……」
「羨ましいよな勇者!」
セバスチャンは、そうまとめて締めくくった。それにヴィンスが諫めてブレイドが追従する。
騎士達の回復が終わってホーリー・サンクチュアリの黄色い光の柱が消え、泡姫は次に話を進めた。
「もう居ない勇者の話は良いから、あれを倒す算段を話し合いましょう」
ギカントロールは結界を破れないと思ったのか転移門の周りをウロウロと周回し出す。勇者が居ない状態で討伐しないとならないので話し合いになった。
「それでギカントロールをどうやって倒したのよ、セバス?」
「前回は勇者の攻撃力があって成し遂げられた感じですな。ギカントロールは回復力が強すぎて、今の我々の攻撃で傷を付けても即座に回復されてしまいますのじゃ」
「ノワールは何かない?」
「聖女の神聖魔法で魔の森の瘴気を払うとギカントロールの超回復力も止まるニャ」
泡姫の魔法の着弾と共にギカントロールの討伐に皆が動き出す事になり、呪文を唱えて解き放った。
「破魔の光よ。雨の恵みとなりて瘴気を撃ち払い給え。聖域聖雨!」
空に光の帯が広がって行き、光の粒が雨の様に降り注いで来る。
グギャーーーーーーーオンッ!!!
ギカントロールが光の雨粒を受けると、黒い霧が蒸発するように瘴気を撒き散らして苦悶の咆哮を上げる。それを合図にノワールとセバスチャンが飛び出して行き、騎士達がそれに続いた。
「特攻ニャニャ!!」
「足止めをお願いします。聖獣様」
「任せるニャ!」
「我々も続けーーーっ!!」
「「「「「「「「「「……おおっ!!……」」」」」」」」」」
ノワールがギカントロールの足に食いつくと大きな音を立てて倒れる。
ドドォォォォン!!!
先程までの超回復が止まってギカントロールは起き上がれなくなった。ギカントロールは噛みついているノワールを手で鷲掴みしようとしていたので、騎士達が手や胴体を重点的に攻めてノワールを守った。ヴィンスは右手首の腱を、ブレイドは左手首の腱をそれぞれに切り裂き、ギカントロールは再び咆哮した。
ギャォォォォォンッ!!!!
「トドメは頂きますのじゃ!」
セバスチャンがギカントロールの胴体を軽く駆け上がり、苦無で首に切りつけた。傷は太い動脈まで達したようでギカントロールは噴き出す緑色の血液に溺れるように倒れた。
泡姫とカルミアの頭の中に経験値の増加によってレベルアップしたファンファーレが響き渡る。今度は連続で絶え間なく鳴り続けたので2人は煩く思った。ファンファーレが鳴り止んでからレベルを確認すると十二も上がってレベル五十三になっていた。2人は恐る恐る結界の外に出てギカントロールの亡骸に近づき、泡姫はセバスチャンに尋ねた。
「お、終わったのかしら?」
「アリエル様の魔法のお陰で、前回よりは随分と楽でございましたな」
「お腹が減ったニャニャ!!」
ノワールは2足歩行タイプに戻って駆け寄って来た。
「それが御者とリリーがレベルアップ酔いでダウンしてしまったので、落ち着くまで待って欲しいの」
「そ、そんニャ~?!」
ブレイドは騎士達に指示を出した。
「よ~し野郎共! 魔石を回収するぞ!」
「「「「「「「「「「……おおっ!!……」」」」」」」」」」
泡姫は仕方がないので液体おやつの小容量パックをデバッグ・モードのアイテム生成で出して上げると、見つけたノワールは袋を奪うようにもぎ取って舐め出した。ヴィンスは液体おやつを凝視していたので、こちらでは普通は手に入らない品だと知っているようだ。転生の話をヴィンスとしたかったので、泡姫はカルミアを一時的に遠ざけた。
「カルミア。私はヴィンスさんとお話がしたいので、ブレイドさんの所へ行って来て良いのよ」
「な、なりません!」
「私、主として使用人の恋路を邪魔したくはないのよね。ほら、行ってらっしゃい!」
「こ、恋路とかそんなのではありません! す、少しですよ! 何かありましたら、お呼び下さい!」
カルミアがブレイドの元に行くと、ヴィンスは液体おやつの商品名を言い当ててしまう。
「ペロペロペロ……うまいニャニャ!!」
「そ、それはもしかしてチュ○ルでは?」
「あら、ヴィンスさんはお判りになるのね。私と同じ同郷なのかしら?」
「ここが日本ではないと気づいたのは子供の時分だった。何の説明もなく日本での記憶が蘇って苦労させられたよ」
「テオ神にお会いになりませんでしたか?」
「俺は日本で死んでから、こちらで記憶を思い出した間に会った覚えはないね」
『……テオ神!?』
泡姫は虚空を睨むとテオ神に念話で呼びかけた。
『何かな? アリエルちゃん』
『こちらのヴィンスさんは私と同郷なのだけれど、転生した時に説明も何もなかったそうよ!』
『全員に会って説明する時間なんてないよ。僕はこれでも忙しいんだ。アリエルちゃんは特別なんだからね!』
テオ神の気配が消えたので泡姫は溜息を吐いた。
「テオ神にヴィンスさんへ説明していないって文句を言ったのだけれど忙しいそうよ……」
「え? アリエルさんはテオ神と会話ができるのか! 流石、聖女だな。俺の為に文句を言ってくれてありがとう」
その後は魔の森の監視砦遺跡に宿泊する準備が整うまで、ヴィンスが死んだ後の日本の話等で盛り上がる。連載歴の長い漫画が完結した話でヴィンスはショックを受けていたのは面白かった。しかしお互いに日本での名前等は名乗らずにいたが、これだけは聞いて置きたいと思って泡姫はヴィンスに尋ねた。
「え~と答えたくないならば答えなくて良いのだけれど、恋人が居たとか、ご結婚されていましたか? 私は旦那と死別しました」
「……俺も結婚していた。死んだ後はどうなったか気になるが、彼女ならば立ち直って元気に過ごしてくれていると信じている」
泡姫は現役の推しアイドルに恋人が発覚した感覚を味わった。
泡姫 「そう言えば女性総理が誕生したわよ」
ヴィンス「す、凄い!!」
次回の話は翌日の19時になります。
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