032話 中二病の魔王戦、そして……
四天王の全部が散り、そして最後の魔王テオ・リバースが動き出した。
「良くぞ余の四天王を撃ち滅ぼした。褒めて遣わそう! しかしこれで終いだ。真の恐怖と絶望を味わわせてやろう!! まずは聖女の大事な者であり、勇者の成り損ないを屠ろうか。深闇滅球!!」
魔王が指を鳴らすと漆黒の球体が4個現れた。最初はビー玉くらいのサイズだったが、急に巨大化してノワールを飲み込める程の大きさになった。ブレイドとレオンは漆黒の球体が離れていたので避けられたが、ヴィンスは3個に囲まれて逃げ場がなくなった。漆黒の球体がヴィンスの持っていた剣と共に右半身を抉り取って俯せに倒れた。
「ぐわっ!!!」
「ヴ、ウィンス!! い、いやーーーー!!!!」
大和が事故で亡くなった時の記憶が走馬灯のように思い出され、何も出来ずに泡姫は頭が真っ白になって絶望する。泡姫はカオス・ヴォイドを使った後なので全MPが消失していて回復魔法が使えない。このままではMPの回復速度が蘇生限界時間を超えてしまい、蘇生不可になってしまう。
ストレイが急いで回復魔法をヴィンスにかけた。
「そ、其は光の調律者なり。清浄なる癒しの腕で包み給え。完全回復! 上位回復! うぐぐMPが……上位回復! だ、駄目だ。僕では高位の神聖魔法のリザレクションは使えないし、死んでいるぞ!!」
ヴィンスの抉り取られた傷口から出血が止まり、命の灯が消えるように目から光が失われていった。
泡姫は呆然自失になって立ち上がり、魔王の元に歩んで行った。
「どうした聖女よ。自棄でも起こしたのか?」
「……我が魂を対価に捧げる」
「そ、その呪文は!!」
泡姫は自身の命を対価に捧げて敵を撃ち滅ぼす、聖女のみが使える究極の自己犠牲の呪文を唱えだした。
「い、いかん来るな!! 深闇滅球!! 深闇滅球!! 深闇滅球!! 深闇滅球!! はぁ、はぁ……」
究極の自己犠牲の呪文には魂を燃やし尽くす呪文なので強力な防御機構も備わっていて、魔王のダークネス・スフィアによる漆黒の球体も打ち消した。
「や、止めるのだ!!」
「我が魂の灯を持って彼の者を撃ち滅ぼ……」
「なりませぬ! アリエル様!!」
セバスチャンが泡姫に駆け寄って口を塞ぎ、自陣に連れ戻した。泡姫の口を塞いだまま言い聞かせる。セバスチャンは背中の魔法鞄からエリクサーの瓶を取り出した。ゲームとしてはパーティー戦を基本としているので、薬品はレア・ドロップ扱いなので入手が困難な品になる。
「儂の手持ちにエリクサーの飲みかけが1本だけありますのじゃ。一口分を勇者に使ってしまいましたが、蘇生は叶いませんでした。しかしMPはある程度は回復するはずなので、お飲み下さい」
「!!」
セバスチャンの手が口から離れると、泡姫は頷いてエリクサーを飲んだ。
エリクサーで回復する時間稼ぎとして騎士達とノワールが魔王に襲い掛かり、トランが攻撃魔法で援護する。
「攻撃が届かない!」
「氷よ! 我に仇なす者を氷結で拘束せよ。氷結槍擲!! だ、駄目ね。打ち消されるわ!」
「ふははははっ、雑種の攻撃など片腹痛いだけだ!」
泡姫はMPが全開とは行かないが7割くらいは回復したのが分かると、ヴィンスに蘇生魔法を唱えて発動した。
「奇跡の伝道者よ。其は光の支配者なり。我の同胞の彷徨える魂を戻し給え。蘇生復活!」
ヴィンスの亡骸が光輝き、抉られた右半身が復活した。生気を失った瞳に色が戻って起き上がると激怒していた。
「また泡姫を置いて逝く所だった!! しかも彼女に自滅の道を選ばせる所だったとか、俺は不甲斐ない!! 今度は抗う力を存分に振るわせて貰う。来いっ! 聖剣!!」
空に流れ星のような煌めきの軌跡が描かれて落ちて来ると、ヴィンスの目の前に聖剣が浮かんで出現した。
『キャーーッ!! 呼んでくれたのね、童貞のイケメンさん!! お名前を伺いたいわ』
『ヴィンスだ。力を貸せ』
『あたくしと契約したいなら、名付けて頂戴』
『面倒な剣だな。……チェリーブロッサムでどうだ?』
『まあ、素敵な響きの名前。由来は?』
『語源は桃色の薄い花が春にだけ咲いて散る、桜と言う樹木だ。お前は童貞とか処女が好きなんだろう? 童貞とか処女は散るのが前提だ。それを名前で持って受け入れろ!』
『童貞が散る……凄く素敵な響き。気に入ったわ! 前のエクスカリバーも良かったけれどチェリーブロッサムで契約しましょう!』
ヴィンスは聖剣の柄を持ち手で握り、何度か手に馴染ませるように振るった。
魔王は聖剣を持った勇者の誕生に恐怖し攻撃して来た。しかし泡姫によるサクリファイスの時に連続発射した疲れが取れていないようである。
「深闇滅球!! はぁ、はぁ……まだ全力で撃てぬか」
ヴィンスが聖剣を振るい漆黒の球体をかき消す。一気に魔王に詰め寄って聖剣を撃ち込むが、透明な壁のような物に聖剣が弾かれた。
「ふははははっ! 余は祭壇で使われた暗黒魔法により完全復活しておるのだ。勇者が振るう聖剣と言えども、そう簡単には届くまい!」
「くそっ!」
ヴィンスが悪態をつくと聖剣が提案して来る。
『ふふっ! 勇者が一生の童貞を捧げるなら真の力を発揮しましょう!』
「き、気持ち悪い聖剣だな! もしかして魔剣の類じゃないのか?」
『きーーっ! あたくしを魔剣呼ばわりするなんて!』
「ヴィンス様。これをお使い下され」
「何だ、これは?」
セバスチャンが背中の魔法鞄から取り出した、剣に使用する柄巻皮を受け取る。聖剣の念話は勇者に取って精神的な負担になるので、念話を防ぐ装備品らしい。それを見た聖剣は念話で喚いた。
『キャーーッ!! 相思相愛の勇者ちゃんとのラブ・ラブ・トークを防ぐ…………』
ヴィンスが聖剣の柄に柄巻皮を巻くと念話が止んだ。セバスチャンが由来を語った。
「前の勇者も聖剣の念話に精神を病みそうになったので、素材を集めて作らせたのじゃ。お陰で好いた女と添い遂げたが、不幸にも聖剣の加護が切れたと同時にあの世に行ってしまわれた。エリクサーを一口飲ませたのじゃが、蘇生は叶わんかったのじゃ……」
「そうか……。俺は泡姫と再び添い遂げて今度は大往生したいので、その轍は踏まない。泡姫。カオス・ヴォイドは使えるか?」
「え? 使えるけれどMPがギリギリなので、聖女のワンドがあっても威力がそんなに出ないと思うわ。魔王を撃ち滅ぼす程ではないと思う」
「それなら聖剣にカオス・ヴォイドをかけてくれ」
「ええっ?! う~ん、非破壊オブジェクト指定されているから行けるかも? やってみるわ」
カオス・ヴォイドの話を聞いた途端、聖剣は刀身がピカピカと青色の光の輝きが点滅した。
「混沌必滅!!」
聖剣は自身の危険を察知して真の力が発揮されたようで、泡姫の呪文を受けると刀身の光の輝きの点滅が止んで光輝き続けた。そしてカオス・ヴォイドの混沌の海が刀身に纏わりつき、混沌の海に揺蕩う光剣となる。聖剣を振るうと混沌の海が揺らめきながら追従し、ここに無であらゆる防御を突き破り光で対象を撃ち滅ぼす聖剣が誕生した。
それを見た魔王は恐れをなした。
「な、なんだそれは?! あってはならぬ!! それでは神所か世界その物が無に帰せてしまうではないか!!」
「泡姫、着いて来てくれるかい?」
「ええ、私達の平和のために、魔王テオ・リバースを撃ち滅ぼしましょう」
泡姫はヴィンスの左腕にお姫様抱っこをされた。2人は聖女のブーツの効果で飛翔した。高く舞い上がり、魔王を見据える。
飛んで逃げようとする魔王の足をノワールが捕まえた。
「捕まえたニャ! 今だニャ!!」
「私達の」
「俺達の」
「「愛の為に撃ち滅べ!!」」
「い、いやだぁぁぁぁ!! そんな物を食らったら、余は、余は!! 無に帰りたくないぃぃぃぃ!!!!」
魔王の透明な壁はカオス・ヴォイドによる混沌の波にかき消された。そして聖剣の光輝く刀身によって魔王は切り裂かれる。最後にノワールが離れると、混沌の海が虚無の泡を弾けさせながら魔王を包み込んで無に帰した。
魔王討伐を成し遂げ、皆が歓声を上げた。
「やったぜ、カルミア!」
「ブレイドも頑張りました!」
「親父! 凄かったな!」
「ジスランは成長したのである」
「聖獣様! ご褒美に抱かせてよ!」
「ニャニャニャ!!」
「僕、一時はどうなることかと……」
「まあ喜んだら良いじゃんか!」
泡姫とヴィンスは辛抱堪らなそうな表情で、駐屯地に飛んで行って駆け込んだ。
「泡姫。もう我慢できない! また処女を頂く!!」
「喜んで! 私も待ち遠しかったの!!」
魔王戦が終わった後、戦いの興奮が冷めないので泡姫とヴィンスは、激しい夜を過ごして処女と童貞を同時に散らせ、素敵な夜を過ごした。
泡姫とヴィンスが駆け込んだ駐屯地の寝所に突然に現れるセバス。
泡姫 「キャッ!」
ヴィンス「うおっ!」
セバス 「ご入用と思いましてお持ちしました。1口で丁度よろしいかと」
セバスはベッドサイドに媚薬を置いて消え去ったように見えた。
次回の話は翌日の19時になります。
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