031話 魔王四天王戦[後半] 心痛のシャドウと虚栄のサモナーとプリムラ(義母)の宅急便
強欲のキャスターが討伐されたのを見て、魔王は無表情に指示する。
「次はお前だっ! 心痛のシャドウ!!」
「御意」
青色の忍者装束を着た魔物が魔王に指示されると、即座に行動を開始する。立っていた位置から掻き消えるように居なくなると、泡姫の後ろに現れて短刀を振りかぶった。カルミアは咄嗟に泡姫を突き飛ばして自分を犠牲にして短刀の切っ先を受けてしまう。
「キャッ!!」
「くそっ!!」
「カルミア!!」
少し遅れてジスランが心痛のシャドウを剣で攻撃するが、最初の移動と同じように瞬きする間に元の位置に戻ってしまった。
カルミアが心配で泡姫は回復魔法を唱えようとするが、ストレイに止められた。
「聖女様。MP温存なので僕がやります」
「ええ、お願いするわ」
「刺し傷なので上位回復! ……顔色が悪いですね毒かな? 毒回復で上位病魔退散! ……もっと最上位じゃないと効かない!?」
「私が追加でやるわ。完全病魔退散!」
「も、申し訳ありません、アリエル様。MPを使わせてしまいました」
「温存と言っても必要な時には使うわよ。しかし最上位じゃないと効かない毒持ちで、一瞬で背後から攻撃されるのは厄介ね……」
泡姫は心痛のシャドウを睨みつけた。心痛のシャドウは無表情で仕事を熟すようで、警戒されている泡姫を外して、今度はストレイを狙って来た。ヴィンスが心痛のシャドウが出現した位置に剣を振り下ろすが、毒付きの短刀の攻撃を止めて元の位置に戻った。
「こいつは神経をすり減らすな……。セバスチャン。お前の攻撃方法に似ているので何か弱点はないのか?」
ヴィンスに言われてセバスチャンは答えた。
「仕方がないのじゃ。アリエル様、あれを使いましょうぞ」
「え? お母様の十八番かしら」
「左様でございます」
セバスチャンの指示で防御陣を敷いた。泡姫の後ろががら空きなのでヴィンスが怒り出したが、セバスチャンに言い包められて仕方がなしに納得する。泡姫は久しぶりに使うので発動に自信がなかったので、小声で呪文の詠唱をして置く。
「闇よ! 我に仇なす者を闇の鎖で捕縛せよ」
心痛のシャドウも明らかに罠がありそうな防御陣の穴に、しばらく戸惑っていた。自分が人間よりも上位の存在だと侮っているのもあり、罠だとしても力業で突破すれば良い事だと思いながら泡姫の後ろに移動した。
「暗黒縛鎖!!」
「なっ!!」
心痛のシャドウが短刀を泡姫に当てる前に、ダーク・チェーンの呪文名を言い終わって地面から伸びた暗黒の鎖で心痛のシャドウは絡め捕られた。
ジャラジャラ、ジャラジャラ、キーーーーンッ!!
無表情だった心痛のシャドウが驚愕の色に染まった。魔王も予想外の事態に驚いたようで眉を引きつらせていた。
「せ、聖女が暗黒魔法だと?!」
「雑種のくせに小賢しい真似を!」
「終わりよ!」
「終わりだな!」
「ほぐぅぅぅぅ!!!!」
カルミアとジスランが心痛のシャドウに剣を突き刺すと、黒い煤のように身体が散って行き、後には巨大な魔石が残ったのでセバスチャンが回収する。
心痛のシャドウが討伐されたので、魔王は四天王の真打に指示した。
「蹂躙せよっ! 虚栄のサモナー!!」
「陛下にお見せしましょう! 灰燼に帰せ、人族よ!」
虚栄のサモナーは全身が赤いタイツで覆われていて道化師のような恰好をしていた。両腕を魔の森の奥に掲げた後に、ダンスを踊るように身体を回転しながら呪文を詠唱した。
「瘴気より産まれる血族よ! 主である虚栄のサモナーの求めにより参集せよ。我の敵を灰燼に帰せ。召喚魔物!!」
地面に赤い魔法陣が無数に現れ、魔の森の奥からの大型の強い魔物が魔法陣の上に現れた。
「マズイのである!」
セバスチャンは虚栄のサモナーの所へ瞬間的に移動すると苦無を振り下ろすが、身体の回転が防御を兼ねているようで苦無を弾かれた。
「我々も続け!」
「「「おうっ!」」」
「ニャ!」
続けて騎士組とノワールも一斉に攻撃するが、身体の回転による防御が思いの他に強力で全ての攻撃が弾き飛ばされた。
「無駄、無駄、無駄! 召喚魔物に蹂躙されるが良い! フハハハハッ!」
「駄目だ! アリエルを中心に防御陣形!」
「「「おうっ!」」」
「ニャニャ!」
攻撃の間に魔法陣から召喚魔物が列を成して襲って来たので、皆が1ヵ所に固まって集まった。泡姫を中心として円錐形の防御陣形を取るが、数千の魔物の群れに防戦一方になってしまう。
トランは範囲攻撃魔法を連射するが、燃費が悪いので一時凌ぎにしかならなかった。
「炎と風よ! 我に仇なす者を爆炎の業火で焼き尽くせ。爆炎業火!! 炎と風よ! 我に仇なす者を爆炎の業火で焼き尽くせ。爆炎業火!! うぐぐ……MPがっ!!」
セバスチャンが決断を下す。
「アリエル様。魔王には届きませんでしたが、あれの使い所ですじゃ!」
「そ、そうよね。でもこれだけの広範囲で大量の魔物を、1回で駆逐できそうにないわ」
「む、無念ですじゃ……」
その時、魔物の群れの薄い所から女性の叫び声が上がった。ゲームでのヒロインで聖女予定だった、前世では泡姫の義母の転生した姿のプリムラである。
「泡姫! テオ神に脅されたので持って来て上げたわよ! 受け取りなさい!!」
プリムラは灰色のワンドを思いっきり振り投げると、放物線を描いて魔物の中に落ちそうになる。
「きゃーーっ!! 私の腕力じゃ足りなかった!!」
「…………ふんっ!!」
セバスチャンは大きくジャンプすると、魔物の群れに落ちる前に灰色のワンドをキャッチする。即座に泡姫の方に投げ返し、自分は魔物の頭を蹴りながら移動して戻って来た。
「ナイスよ! セバス!」
「お役に立てたようで何よりですじゃ」
「キィーーッ!! こんな所まで持って来たのは、私なのに!!」
「お下がりください、ここは危険です」
教会兵に囲まれながらプリムラは駐屯地の方に連れて行かれた。泡姫が灰色のワンドを持つと元の金色にワンドが光り輝き出した。効果は魔法効果絶大で魔法の効果範囲を広げ、効果その物の威力を上げる優れ物の聖女シリーズになる。
泡姫は聖女のワンドを掲げて、慣れないので詠唱付きの呪文を唱えた。虚栄のサモナーはあざ笑った。
「聖なる光よ!」
「無駄な足掻きを!」
泡姫の右手に眩いばかりの光が灯った。魔王が聞きなれない呪文に首を傾げる。
「邪なる闇よ!」
「聞いた事のない章句の呪文だ……」
泡姫の左手に漆黒の闇が溢れて来る。両手の平を祈るように合わせると、光と闇が混ざり混沌が産まれた。それは光っているようでもあり、常しえの闇が広がっているようにも見える不思議なエフェクトを保っていた。呪文の詠唱を最後まで聞いた魔王の顔色が変わる。
「神をも滅する無となりて、混沌の海に沈めよ」
「し、神聖魔法か? い、いや、暗黒魔法も同時に発動している! こんな呪文、余は知らん!」
泡姫の呪文の呟きで強力な召喚魔物群の下に、陰陽のようなマークが描かれた。静かに強く呪文を解き放つ呪文名を最後に唱えた。
「混沌必滅!!」
「はがぁぁぁぁっ!!!!」
その瞬間、陰陽のようなマークは混沌の海に代わり、強力な召喚魔物群を飲み込んだ。混沌の海は魔王の祭壇の全体に広がり、回転していた虚栄のサモナーも飲み込んだ。
戦闘スタイルが似ているセバスとシャドウ。
セバス 「儂の十八番を奪うな!!」
シャドウ「……」
シュンッ! シュンッ! シュンッ! …………
お互いの背後に現れる競争が始まったが決着がつかなかった。
ヴィンス「魔王四天王と互角とか凄いな……」
次回の話は翌日の19時になります。
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