030話 魔王四天王戦[前半] 憤怒のクラッシャーと強欲のキャスター
魔王の祭壇に行くと魔王が話して来た。魔王テオ・リバースはテオ神にソックリで、黒髪で黒色のマントを羽織っていて宙に浮いていた。
「余はテオ神を屠りし新たな神となるテオ・リバースなるぞ! 何者か分からぬが余の祭壇で暗黒魔法を使った者がおるようで復活が早められたのだ。大儀である!」
「……」
暗黒魔法の件は泡姫に覚えがあるので何も言えなかった。
「其の方は当代の聖女であるか。勇者は居らぬ……聖剣を持たぬもどきは居るようだが、余に仕えぬか?」
「魔王は人類の敵よ! 私達が撃ち滅ぼします!」
「ほざくな雑種めっ! 余が世界を支配する礎としてくれようぞ!! 行けっ! 憤怒のクラッシャー!!」
「お任せ下さい、陛下。全てを粉砕してくれようぞ!」
褐色の肌で褌だけ巻いた巨人が前に出て来て拳を構えた。身の丈3メートルはあるので、ノワールが巨大化したサイズと同じくらいだ。
「聖域聖雨!」
泡姫は開幕にホーリー・レインの魔法を発動した。聖女のティアラは詠唱破棄の効果があるので、呪文を省略して呪文名だけで行使した。本来ならば呪文名も必要ないので無詠唱にも出来るが、パーティー・メンバーに何をしているか分かりやすいように呪文名だけは唱えるようにしている。
空に光の帯が広がって行き、光の粒が雨の様に降り注いで来た。ギカントロールの時の様に光の雨粒を受けると、憤怒のクラッシャーから黒い霧が蒸発するように瘴気を撒き散らした。光の雨粒は魔王達にも届いていて、瘴気の吸収を妨げていた。忌々しそうに魔王は顔を顰める。
「聖女め、小賢しい技を!」
ガォォォォォーーーン!!
憤怒のクラッシャーが吠えて襲い掛かって来た。
同じくらいの体長の巨大化したノワールが抑え、騎士組のヴィンス、ブレイド、レオンが前に出て攻撃するようだ。ノワールが前足の爪で攻撃し、怯んだ隙に憤怒のクラッシャーの左足に噛みついて捕らえた。
「小賢しい猫めっ!」
「我は猫じゃないニャニャ!」
「聖獣様に続け!」
「「おおっ!」」
ヴィンスの号令で騎士組が続く。ヴィンスは憤怒のクラッシャーの腰を切りつけるが、カウンターとして右腕を食らって吹き飛ばされた。
「嫌っ!」
「アリエル様。落ち着くのじゃ。ほれ、ストレイが回復しますぞ」
「上位回復!」
「助かった! ストレイ」
ストレイからハイ・ヒールがヴィンスに飛んでダメージを回復して戦闘に復帰する。その間にブレイド、レオンは憤怒のクラッシャーに確実にダメージを与えていた。
「まったく、ちょこまかと小賢しい。これでどうだっ! 粉砕!」
ドォォンッ!!
憤怒のクラッシャーは右足を振り上げて地面に叩きつけると、魔王の祭壇の全体が地震のように大きく揺れてノワールと騎士組が転がった。そこを好機と見て憤怒のクラッシャーは左足で転がったノワールを蹴ろうとする。
「ニャんてニャニャ! ケット・シー・アタックッ!!」
ノワールは転がった勢いで反転すると、憤怒のクラッシャーに飛び掛かった。巨体同士のぶつかり合いだが、飛び掛かったノワールの方に分があり、憤怒のクラッシャーが仰向けに転んでノワールが喉元に食いついた。その機会を逃さずにトランは魔法を放った。
「氷よ! 我に仇なす者を氷結で拘束せよ。氷結槍擲!! 続けてもう1発ね! 氷よ! 我に仇なす者を氷結で拘束せよ。氷結槍擲!!」
2発のアイシクル・ランスは憤怒のクラッシャーの両手にそれぞれ命中し、地面と氷が接触して縫い付け拘束した。騎士組は憤怒のクラッシャーの頭の方に回り、ブレイドは右目、レオンは左目、ヴィンスは口に対して剣を突き立てようとする。
「これで終わりだ!! やれっ!!」
「「おおっ!!」」
「ンゴッ!!!!」
ヴィンスの合図で一斉に顔の弱点に剣を突き立てられて、憤怒のクラッシャーは絶命した。黒い煤のように身体が散って行き、後には巨大な魔石が残ったのでセバスチャンが回収する。
憤怒のクラッシャーが討伐されたのを見て、魔王はあざ笑った。
「ハッ、ハッ、ハッ! 雑種に殺られるとは片腹痛いわ! 次はお前が行けっ! 強欲のキャスター!!」
「陛下の仰せのままに。全てを魔法の生贄としましょう! 炎舞爆発!! 水噴爆流!! 竜巻爆轟!! 土石爆砕!!」
緑色のローブで顔が見えない杖持ちの強欲のキャスターは、魔法を4連発した。フレイム・ノヴァは地面から火柱が吹き上がり、ジェット・ノヴァは地面から水柱が吹き上がった。トルネド・ノヴァは地面から竜巻が吹き上がり、タイタン・ノヴァは地面から土石が吹き上がった。それらは憤怒のクラッシャーを相手していた騎士組とノワールに放ったようで、彼等から悲鳴が上がる。
ヴィンスは火柱を避けそこなった。
「あ、アチチッ!!」
ノワールは水柱に弾き飛ばされ、苦手な水を被って意気消沈した。
「み、みずニャニャニャァァァン!!」
ブレイドは竜巻に吹き飛ばされ、目が回った。
「し、死ぬかと思った……め、目が回るぞ!!」
レオンは土石を浴びて打撲を負い、口の中に砂利が入った。
「い、痛っ!! ペッ、ペッ、ペッ!!」
強欲のキャスターが、また詠唱をしようとするので、泡姫は皆を呼び寄せた。
「皆、集まって! 破魔の光よ。魔を退ける盾となり給え。神聖結界!」
泡姫を中心に魔法を防ぐ結界が張られた。皆はその中に退避する。
ストレイが魔法でダメージを負った者に対して回復魔法を行使した。
「ヴィンス様は火傷なので上位回復! 聖獣様は不要ですね。ブレイドさんは目眩だから状態異常回復で上位病魔退散! レオン君は打撲なので上位回復! 少しMPを使い過ぎました……」
ゴォォォッ!! ブシャーーー!! ビュゥゥゥッ!! ドンドンドドンッ!!
強欲のキャスターは連続で魔法を放って結界を攻撃していた。
「いつまでも結界が持つ物か! 撃ち壊してくれる!!」
セバスチャンが出るようでジスランを呼ぶ。
「ジスラン。儂と共に出るぞい。あれが詠唱のタイミングで1撃を食らわせてみたいのじゃ」
「分かった、親父。タイミングを頼む」
「3、2、1の1と同時に出るぞい」
「了解!」
「では参る……3、……2、……1!!」
「ふははははっ! 怖気づいたか! それ、炎舞爆発!! 水噴……んがっ!!」
セバスチャンが号令した瞬間、2人は消えたように見えた。セバスチャンは強欲のキャスターの背後に回り、苦無で背中を切りつける。強欲のキャスターの呪文詠唱が一瞬止まり、ジスランは地面を滑空するように剣を構えながら疾走し、セバスチャンが作った隙に剣を突き刺せたように見えた。
「じ、水噴爆流!!」
強欲のキャスターはセバスチャンの苦無の攻撃を受けた後、未発動だったジェット・ノヴァを自分に対して発動した。強欲のキャスターは水柱に乗って浮かび上がり、ジスランの剣先を避けた。
避けられて危険だと察したセバスチャンは退却を宣言する。
「ジスラン、戻るぞい!」
「了解!」
セバスチャンとジスランが結界内に戻って来る。
強欲のキャスターはセバスチャンから与えられたダメージはそれ程でもなかったようで、背中から立ち昇る瘴気の霧がしばらく漂って修復し、その後は再び連続で魔法を放って結界を攻撃して来た。
今の攻撃で気づけた事があったようで、セバスチャンはジスランの投入を止める。
「ジスラン。次は儂のみでやるぞい」
「分かった親父」
そしてトランに内緒で頼み事をした。
「まあっ! そんなので旨く行くかしら?」
「奴は無詠唱でないと分かっただけでも、先程の攻撃には意味があったのじゃ」
「分かったわ。やってみるわよ」
セバスチャンが苦無を構えると、それに合わせてトランが呪文を唱えて発動した。
「風よ! 突風となって散れ。真空突風!!」
「参る!」
「土石……!!!!」
バキューム・ウインドで強欲のキャスターの周囲を急激な減圧によって真空状態になって呼吸不全にした。普通の人間であれば呼吸不全で意識を失うが、そこは魔物なので声が出せなくなっただけである。しかし声を出せないと言うことは呪文の詠唱も止まるので、その隙を突いてセバスチャンは強欲のキャスターの背後に回り、今度はローブの正面の頭に手を回して苦無を差し込み、下に引いて移動させ切り裂いた。
「ふがぁぁぁぁ!!!!」
急激な減圧が戻ると、強欲のキャスターだった物体は断末魔を上げて黒い煤のように身体が散って行き、後には巨大な魔石が残ったのでセバスチャンが回収する。
クラッシャーの左足に噛みついたノワール。
ノワール 「ガシガシ……出汁が出ていて美味しいニャ!」
クラッシャー「……」
次回の話は翌日の19時になります。
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