028話 魔王復活とプリムラ(義母)の玩具箱
聖剣村の宿屋の会議室でテオ神から念話があった。
『それ待った!! 魔王が復活したからアリエルちゃんは処女で居て!!』
「ちょ、ちょっとどう言うことよ!!」
泡姫は動揺して声に出してしまった。ブレイドがニヤリとしたまま泡姫に進める。
「そりゃあアリエル様が妊娠してもらうために、ヴィンスが種付けを……」
「違うのよ。テオ神から念話が入っているの」
「あ、悪い! 邪魔した」
ブレイドが引き下がったので泡姫はテオ神との念話を続けた。
『どうして魔王が復活したのよ? 私の設定だと、まだ数百年の余裕があるはずよ』
『多分だけれどアリエルちゃんがダーク・フレイムを魔王の祭壇にいっぱい使って、暗黒の瘴気をばら撒いたから復活が早くなったんじゃないかな。もう二百年くらいは復活しない予定だったんだけれど……』
『わ、私のせいなの?』
『う~ん、まあダーク・フレイムを使わないと、それはそれで聖水の影響が残って魔の森の奥の強い魔物で被害は出ていたから、どっちもどっちだよね。選択肢としては悪くなかったと思うよ』
『それで私の処女と魔王がどう関係があるのよ!』
『処女だと聖獣の加護が多いので、世界が救われる勝率が高いからね』
『ええっ! 私の処女に世界の命運がかかっているみたいな言い方は止めてよ! しかも死ぬかも知れないから添い遂げて置こうって最高のシチュエーションが使えないじゃないの!』
『女の子はそう言うの好きだよね! 僕、男の子だから分かんない!』
『……あと勝率が高いと言うことは、負ける確率もあるのね?』
『う~ん、干渉になっちゃうからあまり具体的には言えないんだけれど、聖女って魔王を倒す勇者のサポート役じゃない』
『そうね』
『つまり彼次第なんじゃないの?』
『あっ!』
テオ神の気配がヴィンスを指したような気がした。
『あともう1手が足りないから、それは援助として僕が手配するから、魔王の討伐はよろしく!』
『うわぁ、丸投げな神様ね!』
テオ神の気配が去り、泡姫は脱力すると処女の所と勇者絡みを抜かして、魔王の復活がテオ神より告げられた事を皆に説明する。トランとストレイとレオンも会議室に呼んで説明し、魔王の祭壇に向かう事にした。
一方その頃、泡姫の義母だったプリムラは、高位の神官が富豪の屋敷に訪れたので対応していた。
「プリムラを助けて魔王の祭壇に向かわせろと、テオ神から神託がございました」
「「はぁ?!」」
ディステルとウォードの親子は疑問の声を上げて、何故にプリムラがと言うような視線を向けた。プリムラは行きたくはないが、テオ神に脅されているので仕方がなく従う事にする。
「持って行く物があります。私の家に寄って下さい」
教会が用意した長距離移動用の教会兵の護衛付きの馬車に乗って、自宅の冒険者食堂に向かった。冒険者食堂に似つかわしくない高級そうな馬車と教会兵の護衛が止まったので、通行人からは不審な目を向けられた。
プリムラが久しぶりに冒険者食堂に入ると朝食の書き入れ時で、満席近い人数で埋まっている。プリムラに続いて高位の神官が入ると喧騒が止んで、不審者を見るような視線で釘付けになった。
母が驚いた表情で問いかけた。
「ぷ、プリムラ。そちらの方は?」
「テオ神からの神託で動いております。どうぞお気になさらずに」
「「「「「「「「「「……し、神託っ?!……」」」」」」」」」」
騒ぎを聞きつけたプリムラの父も厨房から出て来て、高位の神官が告げた内容に食堂の皆と共に驚いた。
「今は急いでいるの。屋根裏を探すわね」
「失礼致します」
プリムラが屋根裏に駆け上がると律義に高位の神官も着いて来た。倉庫代わりになっているので物が乱雑に積まれており、プリムラは目的の物を探すために奔走した。積まれた箱を開けたり閉めたり退かしたりしながら2時間も経過すると、高位の神官は業を煮やしたのか手伝いを申し出た。
「私が魔法で手伝います。探している物の特徴を教えて下さい」
「え、え~と、物語で聖女が持っている杖のような奴。灰色だったからレプリカだと思うけれど、私のお祖母ちゃんがお金に困ったら売りなさいって家宝にしていた奴よ。どこに仕舞ったのか忘れちゃったのよね」
「そうですか。では魔法を使います。我は求める。聖女のワンドらしき物を闇より救い光に照らし給え。探索!」
そんな魔法があるなら最初から手伝ってくれれば良かったのにと、プリムラは自分の物忘れのしやすさと普段から整理整頓をしないズボラな性格を棚に上げて憤慨した。
高位の神官の魔法が発動し、薄暗い屋根裏の奥の木箱に光が当たったのが見える。プリムラはその薄汚れた木箱の中を探ると、小さい頃に遊んでいた玩具のガラクタが無造作に詰められていた。その奥の方から灰色の聖女のワンドらしき物を取り出すと、プリムラは歓声を上げた。
「あったっ!!」
「そ、それは本物の聖女のワンドです!!」
「え? そうなの? 灰色だし、てっきりレプリカだと思っていたわ。幼い頃に聖女ごっこで振り回していたのを忘れていたわ!」
「な、何たる罰当たりな……」
杖の先端には星の煌めきを模した配置で宝石が飾られていて、その上に聖獣のケット・シーが香箱座りのデザインで彫られている。柄の下には聖獣の前足が精巧に彫られていて肉球まで再現されていた。
目的の物は見つかったので、急いで馬車で魔王の祭壇へ向かう事にした。テオ神の指示した通りに王都近くの古代遺跡に向かうと、転移門が既に開いていて一行が入れるようになっていた。これで魔の森の監視砦にショートカットが出来るので一行は転移門を潜った。
プリムラ 「この杖、ここもぶつけたし、高い所から落としても平気だったの!」
高位の神官(この女は教会として異端者の認定をすべきでは?)
プリムラ 「な、何か急に寒気が……」
次回の話は翌日の19時になります。
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