025話 聖剣村の混浴温泉
聖剣村に着いたので宿を取って何泊かする事にした。宿にも源泉を流せる風呂があるが、到着したのが夕方だったのもあり、村の端に元ドレイク伯爵が建設した村営の大浴場があるので自然とそちらに行く流れになった。御者は時間をずらして行くようで、お湯に濡れるのも嫌なノワールはお留守番である。
村営の大浴場は古代ローマ様式のテルマエのような石作りの施設で、老若男女が楽しめる施設であるがゲームの温泉イベントの場所でもあるので攻略対象とドッキリなシチュエーションを楽しめる仕掛けが用意してあるのを、ヴィンスがどう感じるのか泡姫は気になった。
泡姫も子供の時分からの記憶があって貴族と言う物を感覚的に理解はしているが、日本人だった頃の常識が通用しないシーンもあって混乱する事がある。貴族は着替えを使用人任せにするので、裸になる事に対して恥じらいを持たないように教育されるのである。
脱衣所も男女一緒で、そこからヴィンスは首を傾げていた。セバスチャンとジスランは来た事があるようで当然と言う顔をして脱いでいた。
リリーに聞かれる。
「アリエル様、トレニア様。湯着はどうなさいますか?」
「面倒だから必要ないわ」
「着たことがないわ」
「承知しました」
ここは混浴で湯着を着て入浴も出来るが身体を洗うのに面倒で、ほとんどの人は着ないのである。カルミアも少し裸になる事に抵抗があったようだが、覚悟を決めて全裸になった。女性陣は用意が整ったので浴場に行こうとすると、男性陣が固まって騒いでいた。
「私達は先に行っているわよ」
「ヴィンス様の決意が固まるまで、しばらくかかりそうなので先に行っていて下され」
そうセバスチャンに言われ、やはりヴィンスは日本人としての倫理観が邪魔をして決断が難しいようだ。ブレイドが「脱がせるぞ!」と騒いでいたのを後ろに聞きながら、泡姫達は浴場に入った。
浴場は屋内にあって洗い場の他に有料の垢スリ場が併設されている。外に出られる屋外の露天風呂もあるようで観光地らしく老若男女で賑わっていた。折角なので外の露天風呂に入ろうとすると、聖戦の後に別れたトランとストレイとレオンの3人組に再会した。
「あら、聖女様じゃないの!」
「奇遇ですね。トラン先生達もこちらに観光ですか?」
「そうなの! 聖剣を抜きたいって話になって来たんだけれど、ビクともしなかったのよ!」
「男性は聖剣に興味があるんですね」
「そりゃあ私だって男ですもの!」
お姉言葉を話すトランはゲームで攻略対象でもあるので、別に男性が好きと言う訳でもなく、泡姫達の女性陣を遠慮なく眺めて堪能している。テオ神が天真爛漫なので地球での宗教観と異なって禁欲的ではないので、女性は逆にセックス・アピールとして多くの男性に見て貰った方が良いとされている位だ。ただ見るのはOKだが、触れたり淫猥な言葉をかけたりはNGとマナーはあった。
泡姫が設定していない裏事情も聴けそうなので3人に聞く。当然だが男性は女性を観察していると劣情を催したりするので処理する必要が出て来る。その処理は隣に隣接されている娼館か有料の垢スリ場で発散が出来るようだ。こうして話している間も3人共に大変な事になっていて、先程はどちらに行くか迷っていたらしい。
「サウスインダス王国に帰る時にどうされますか? 私達の観光が終わるまで待って頂ければ、転移門で移動が楽ですよ」
「まあっ! そうしてもらえると楽ね!」
「僕もまた転移門を見たい!」
「俺も賛成。よろしくお願いします、聖女様」
連絡先を交換して3人と別れた。
露天風呂は近くに川が流れていて風光明媚な景色が楽しめる。ゲームとしてデザインされた日本風の露天風呂がそのまま存在していた。ここでは攻略対象と混浴するイベントの場所なので、そのシーンでのヒロインが入浴していた場所に泡姫は入浴の場所取りをした。
泡姫達の女性陣が入浴を楽しんでいると、男性陣がやって来た。ヴィンスを手招きして攻略対象が入浴していた場所に入浴させる事に成功する。推しキャラと温泉イベントで混浴が出来たので泡姫は嬉しくなった。リリーはトレニアと会話していて、セバスチャンとジスランは親子で会話しながら入浴するようだ。ブレイドはカルミアの隣に強引に入っていた。
ヴィンスは手の平で顔を覆った。耳が赤くなっているので恥ずかしいようだ。
「これ泡姫が設定したゲームの世界観だろ? も、もしかしてエッチなゲームを作っていたのか?」
「違うわよ。きちんと家庭用ゲーム機のコンシューマーにも移植されていたわ。このシーンでは皆が湯着を着て出ていたし」
「そ、そんな物があるのか! 何も言われなかったぞ!」
ヴィンスは何度か訪れたことがあるはずのセバスチャンとジスラン親子の方を睨んだ。ジスランはともかくセバスチャンは悪い笑みを浮かべて、こちらを見たので思惑通りに事が運んだらしい。余計なお節介であるが、結果として泡姫の望み通りになったので心の中で感謝した。
「ヴィンスは侯爵家の息子だったでしょう? 貴族は着替えを使用人任せにするのに、裸を見せるのに抵抗があるのね」
「俺の場合は冷遇されていたから母が使用人代わりだった。母が亡くなってからは1人でやっていたし、騎士団は男所帯だろう」
「そうだったわね、ごめんなさい」
「いや、母の事は話の流れで話しただけで、もう思い出の中に居るだけだし問題ない。それよりも……す、好きな人に裸を見られるのが恥ずかしいだけだ! アリエルのどこに視線を向けたら良いか分からない」
「好きな所を見て」
好意のある人の視線は気持ちが良いので自然と泡姫は笑顔になる。アリエル公女殿下に転生して大きく育った胸をヴィンスに見られて嬉しくなった。ヴィンスはアリエル公女殿下の裸体を堪能すると生唾を飲み込んだ。
「大和は仕事が大変で痩せていたけれど、ヴィンスは騎士だから逞しくなったわね」
「前はアニメの作画監督で絵描きだったからな。こっちは訓練とか遠征で嫌でも筋肉が付くよ」
ヴィンスは腕を持ち上げて握り拳を作ると、上腕二頭筋を膨らませた。
「ちょっと触らせて」
「どうぞ」
「……硬いわね」
泡姫はヴィンスの腕の硬さを確かめた。ヴィンスは泡姫の胸を見下ろして凝視した。
「君は……とても奇麗になった。書いてみたい」
「私を書いてくれるの? 嬉しい、書いて! ヴィンスなら裸も書いて欲しい!」
「は、裸は遠慮するよ。それでなくとも今日は大変な事態に……なった!?」
泡姫はそっとヴィンスの腕を取って胸を押し付けながら肩に頭を寄せる。しばらくするとヴィンスは逆上せてしまって大変な事態が加速した。
セバス 「まだ本調子ではなかろう、ジスラン」
ジスラン「アリエル様の魔法のお陰で元気になった」
セバスはジスランの下を見て判断した。
セバス 「その様子なら本当に大丈夫そうなのである」
ジスラン「どこ見て判断してんだよ! 親父!」
次回の話は翌日の19時になります。
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