024話 運命の再会と誤魔化し
聖女の試練ダンジョンの攻略が完了し、宙に浮いていた泡姫は宝箱の前に降り立って、抱っこして貰っていたヴィンスからも降りた。ノワールがアンデッドの体液でドロドロな状態で近づいて来る。
「楽しかったニャ!」
「ちょ、ちょっと近寄らないでノワール!」
「何でニャ?」
「汚いからに決まっているでしょ」
「ハニャ~……」
魔石を拾い終わったセバスチャンがやって来る。
「アリエル様。聖獣様を浄化で奇麗にできませんか?」
「さっきの魔法でMPを全部消費したので、回復するまでは無理よ」
「仕方がないですね。聖獣様、外で洗うまで近づかないで頂きたいのじゃ」
「ニャニャ~……」
ノワールはがっかりと俯いた。他の皆も集まって来て、セバスチャンに先程のボスを討伐するのに使用した魔法について聞かれる。
「それでアリエル様。先程の魔法は何でしょう? 凄い威力でしたが」
「神聖魔法と暗黒魔法の混合魔法で極めると撃てるのよ。全MPと引き換えで使い所が難しいのだけれど。ゾンビを直視してしまったので消え去れと思って使ってしまったわ!」
「人族の軍隊相手にも使えそうですな」
「い、嫌よ! 人に当てるなんてありえない! 設定的には混沌の海に沈める魔法だから、おそらく肉体だけでなく魂さえも無に帰すはずよ」
「「「「「「怖っ!!」」」」」」
カオス・ヴォイドは神にもダメージが入る魔法と言う設定なので、泡姫はテオ神にお仕置きで使ったら良いのではと思ったら、『止めて!』と念話が聞こえた気がした。
セバスチャンが宝箱の罠を解除して、中身を取り出した。灰色のティアラとローブが入っていて、さっそく泡姫は装備する。ティアラは金色の台座に星の煌めきを模した配置で宝石が埋め込まれている見事な品に変わった。ローブは純白の布地に星の煌めきを模した配置で刺繍が施されていた。鑑定するとティアラが詠唱破棄で呪文を唱えずとも発動する効果で、ローブは完全状態異常耐性の優れ物になる。
ダンジョンを攻略した者が使える転移陣でダンジョンの外に出た。普通の猫サイズに戻ったノワールを洗おうとするが、激しく嫌がられた。
「ニャニャニャ!!! 水は嫌だニャ!!!」
「アンデッドの体液は良くて、水が駄目なのが意味不明だわ! ジスランとリリー、洗って上げてお願い」
「ほら、水掛けるぞ」
「はい、アリエル様」
「あぁぁぁ………ニャァァン……」
ジスランが水属性魔法を使えるようでシャワー係になり、リリーにノワールはゴシゴシと洗われた。泡姫はアイテム生成でリンス入りシャンプーを渡す。洗い終わってタオルで拭いても濡れているので、馬車の御者席でノワールを乾かしながら、御者に泡姫は指示した。
「まずは転移門を通って、それから聖剣村に向かいましょう」
「はいですだ、アリエル様」
しばらくすると乾いたのか、御者席の窓からノワールが馬車内に入って来る。艶が出た毛並みを自慢しに来たようだ。
「艶々な我を崇めるが良いニャ!」
「あれだけ水で洗われるのを嫌がっていたのに、現金な猫ちゃんね……」
「我は猫ではないニャ!」
「アリエル様、この液体の石鹸、凄く良いですね!」
「温泉で私達もそれで洗いましょうか、リリー。ちなみにそれ人間用なのよね。猫用は出せないみたいで……」
「だから我は猫ではないと言っているニャ!」
「はいはい。リリー、ノワールをブラッシングして上げて」
「はい、畏まりました」
ジスランとトレニアはノワールの毛並みに興味があるようで、ブラッシングをしてみたいようだ。
「俺もやりたいな!」
「私もしてみたいわ」
「お二方と聖獣様、こちらへどうぞ」
「…………そ、そこが良いニャ!」
ノワールはブラッシングに悶える。セバスチャンが聞いて来た。
「アリエル様、それで聖女シリーズ全部が揃いましたかな? 物語では杖も持っていたような気がするのじゃが……」
「その杖が残っているのよね。本来のヒロインが入手先を知っていれば一番に簡単なのだけれど、私だと難しいのよね……」
公爵家の金と権力を使えば取得する事は出来るが、彼女に対して思う所はなくとも、彼女の両親には後ろめたい所があって実行が出来そうになかった。
「場所をお教え頂ければ、儂が取って来ましょうか?」
「取る…私の立場だと盗るが正しいかも。魔王が復活する訳でもないし、そこまで聖女シリーズをコンプリートする必要性もないので、そのままにして置きましょう」
「左様でございますか。御用命があれば申しつけ下さい」
「ええ、ありがとう」
そう言えば聖剣村の温泉は攻略キャラと温泉イベントがあるなと、横のヴィンスを見上げると温泉に入れるのでご機嫌なようで鼻歌を歌っていた。泡姫の亡くなった旦那が時々に口ずさんでいた日本のアニメソングなので懐かしくなった。
「ふふっ! ヴィンスも好きなのね、その歌。私の亡くなった旦那も時々に口ずさんでいたわ」
「そうかい? 俺はこの歌のアニメの続きがどうなったか気になるな」
「制作している方が急に亡くなって、次の季節にスタッフ交代して続きが放送されたわ」
「そうか……そうなるよな。そう言えばお互いの日本での事を話していなかったよな? 書く物があれば色々と伝えられるんだけれど」
「ございますよ。書く物はこちらになりますじゃ」
「おっ! ありがとうセバスチャン」
セバスチャンは魔法鞄から、紙とペンと下に敷く木の板を出してヴィンスに渡す。ヴィンスはスラスラと似顔絵を描いて、その下に日本語で名前を記した。
「これが俺で、横は妻……ど、どうしたんだ? アリエル」
「も、もしかして……大和なの!?」
「えっ?!」
泡姫は日本の自分と、亡くなった旦那の大和と一緒に書かれている似顔絵と名前を見て驚愕した。アイドルの恋人は、実は自分だったような衝撃を泡姫は受ける。ヴィンスは問う。
「も、もしかしてアリエルは泡姫なのか? 同じ名前でややこしい…いや、分かりやすいのか?」
「ヴィンスが大和だったなんて驚いたわ!!」
「俺もだ!!」
ヴィンスは泡姫を横抱きに抱擁した。感極まってヴィンスは泡姫の唇を自分の唇で塞いだ。それは後悔と郷愁と、新たなパートナーに対する劣情が支配する優しくて甘くて苦い物となった。
永遠に続くかと思われた抱擁と口付けが離れると、2人は見つめ合ってはにかむ。泡姫の頬に嬉しい涙が伝わった。
固唾を飲んで見守っていたリリーが静寂を破った。
「お、おふたりは転生前からご夫婦だったのでしょうか?」
「……そうみたい、リリー」
「俺もビックリしたよ」
「うわぁ! 運命の再会ですね!」
馬車の中の皆だけでなく、護衛で馬に乗っているカルミアとブレイドにも祝福される。
久しぶりに泡姫とヴィンスの2人は日本語で話をした。主に大和が亡くなってからの話をするが、大和の母であるプリムラの事を泡姫は誤魔化した。
ヴィンス「萌(娘)はどうした?」
泡姫 「もう社会人で結婚間近だったのよ」
ヴィンス「相手はどこのどいつだ!!」
泡姫 「ほら、学生の時に連れて来ていた彼よ」
ヴィンス「ああ、あいつか! 悪くはないが心配だな……」
泡姫 「私の方の両親は健在だから、あまり心配しないでね」
次回の話は翌日の19時になります。
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