015話 男子会の恋話
男子会はアリエルの父である公爵アーネストが主催して、王都近くのダンジョンに行く事になった。婿ヴィンスが娘のために婚約の贈り物を探しているというので、聖女シリーズが見つかる可能性が高いダンジョン行きを決行した感じになる。セバスチャンとノワールも同行していて、ノワールはセバスチャンの背負っている魔法鞄の上からボヤいた。
「女子会に行けば良かったニャ。あっちなら、きっとアリエルが美味しい物を出しているニャ」
「聖獣様。女子会に男は参加できませぬぞ」
「我は乙女だ……ニャニャ! ニャにをするニャ!!」
セバスチャンは後ろに手を回してノワールを掴むと前に持って来て、腹の下を探った。猫毛に埋もれている確かな存在を確認すると、そっとノワールを背負っている魔法鞄の上に戻すとルパートに聞かれた。
「雌雄どっちなのだ?」
「雄でございましたな」
「れ、歴代の聖女にも見られたことないのニャ! もうお婿に行けないニャ!」
ルパートはトレニアに良い所を見せたくて強引に着いて来たのだ。ルパートを護衛するように前後で挟んでいるヴィンスとブレイドが溜息を吐いた。左右にはルパートの護衛騎士も張り付いている。彼らの前後を更に第1騎士団と第2騎士団の精鋭5人ずつが守っていた。騎士団からの人員の餞別が大変で、極秘の任務に関わらず聖女に命を救われたので恩返しをしたいと希望者が殺到したので、精鋭に絞って連れて来ていた。お陰で魔物との戦闘もスムーズで、中心で守られているヴィンス達は物足りないようだった。
このダンジョンは2ヵ所目で、異様な団体に冒険者達は道を譲っていた。ノワールは目立つので尻尾を1本に変化させて猫の振りをして貰っている。
聖女シリーズのアクセサリ系は、各ダンジョンの中層以下で宝箱を開けると一定確率で入手が出来るようになっていて、階層が深い程に確率が高いので周回が必要になっていると泡姫から情報を得ていた。
ダンジョンの2ヵ所目なのもあり、中層になると飽きて来たのかアーネストがヴィンスに声をかけた。
「婿殿。アリエルはまだ成人しておらぬが、婚約は早かったのではないかな? 外聞があるので娼館等に通われるのは困るのだが……」
ヴィンスは二十歳で性欲旺盛な盛りであるので、同じ男として気持ちの分かるアーネストは心配した。ブレイドがヴィンスの秘密を暴露する。
「くくくっ! ヴィンスは童貞なので心配いらないぜ。アーネスト公爵」
「お前なぁ。俺にだって経験くらい……この身体だと童貞なのか?」
「あっ! そうだった。こいつ転生者だったのを忘れていた。そう言えば奥さん居たとか言っていたよな」
「そ、それならば安心であるか。どうしても衝動が抑えられなければ娘に手を出してもらって良い」
「「「「「「「「「「……はぁっ?!……」」」」」」」」」」
アーネストの言い分に皆が逆じゃないかと疑問の声を上げた。
「娼館等に行くくらいならば娘に手を出してもらった方がマシだ! 私もアマリリスも早く孫の顔が見たいのでウエルカムなのだよ!」
「貴族は分かんないなぁ……」
ブレイドは嘆いた。
別の事情もあるのでアーネストはヴィンスを味方に引き入れたいようだ。
「それからな、家族の中で私だけが男ではないか。妻と娘に反対されると身の置き所がないのだ。婿殿とは同じ男同士、仲良くしたい物なのだ!」
「は、はぁ……善処します」
本音で語ってくれるアーネストには好感が持てるので、ヴィンスは良い付き合いが出来そうだと思った。この際なのでブレイドとカルミアの進展具合をヴィンスは確かめる。
「ブレイド。カルミアさんとはどうなんだよ?」
「どうって、しっぽり、ずっぽりと行きたい所だが、身持ちの堅い女は口説くのも大変だな。まあ、そこが良いんだが……」
「やることしか考えていないから靡かないのではないか?」
ルパートは軽蔑の眼差しでブレイドを見るが、ブレイドは言い返した。
「言うねぇ、王子様! トレニア姫様とはどうなんだよ?」
「……私には不相応な気がする」
「儂も若い時分は同じような物であった。ルパート様はまだ十五歳です。若いから滲み出る自信のなさは時として武器にもなりますが、為すべきところで強く主張する事も女には必要ですぞ」
「そう言う物か……」
年の功のあるセバスチャンの激励に、ルパートは気付きを得たのか黙って噛み砕いているようだった。
無駄話に花を咲かせていると、下層の部屋に到達したが罠部屋であった。宝箱が部屋の中央にあり、皆が入ると入口が閉まって鬼系の魔物の大群が湧いて襲って来た。
「紡錘陣形だ!」
「「「「「「「「「「……了解!!……」」」」」」」」」」
ヴィンスの指揮で騎士団の精鋭達は後ろから前に集まって、中央突破する楔型の紡錘陣形を取った。このような場合は魔物に囲まれるのが一番の愚策なので、魔物群を中央突破して分断し、切り返すのを繰り返して削るのが上等だ。最初の中央突破で壁を作っている小鬼のゴブリンを蹴散らし、折り返しで宝箱を守っていた魔法を使う厄介な大鬼オーガ・メイジの1体をヴィンスが倒した。
「次でトドメだ!」
「「「「「「「「「「……おおっ!!……」」」」」」」」」」
最後の折り返しでブレイドがオーガを倒し、ルパートと護衛騎士2人が共闘して残りのオーガ1体を倒した。大量のゴブリンを騎士団の精鋭達が相手してくれていたので素早く討伐が完了した。レベルが上がった者も多く、喜びの声が上がった。
「おっ! レベルが上がった!」
「俺もだ!」
「こ、これは乗り物酔いに近いな……。私もかなりレベルが上がった」
普段は魔物討伐に参加させて貰えないルパートは連続してレベルアップしたようで、レベルアップの高揚感で酔ったようだ。
部屋の中央の宝箱が存在感を増していた。セバスチャンが近寄って罠の確認をする。
「……2重の罠とは手が込んでいますな。部屋の天井が下がる物と、毒ガスで即死を組み合わせるとか悪意の塊じゃな」
「こ、この者は執事であろう? 本当に執事なのかアーネスト?」
セバスチャンは前のダンジョンでも当然の様に罠を発見して解除していて、ルパートは疑いの目を向けた。
「ルパート王太子殿下。彼は紛れもなく執事でございます。ただ昔に勇者パーティーに所属していたので、この中で一番に経験豊富で強いと思われますが」
勇者も転生者でセバスチャンが泡姫の執事をしているのは、その為だとアーネストから説明されてルパートは納得が行ったようだった。
「アリエルは聖女になるべくしてなったと言う事か」
「……罠の解除が終わりましたな」
「聖獣の我が開けて進ぜようニャ!」
ノワールがセバスチャンの背負っている魔法鞄の上から降りて宝箱を開けた。中には灰色の布の上に、灰色のリングが乗っていて、その横に麻袋に入ったピンク色の小瓶が大量に入っていた。その麻袋に文字が書いてあった。
「灰色の布はマントですな。灰色のリングと共に聖女シリーズで間違いないでしょう」
「「「「「「「「「「……おおっ!!……」」」」」」」」」」
セバスチャンの報告に一同から歓声が上がった。ノワールが麻袋を掲げて首を傾げた。
「これは何だニャ?」
「袋の文字は転生者の世界の言葉のようです。ヴィンス様、何と書いてありますでしょうか?」
「どれどれ……『聖女ちゃんへ 婚約並びに結婚おめでとう。テオ神より』って、テオ神からアリエルに祝いの品のようだ」
聖女になると神様から祝いの品が貰えるのかと騎士達は騒めいた。
「こんな色の小瓶は見た事がありませんな。袋は預かりますので、マントとリングはヴィンス様がお持ち下さい」
「了解だ。皆、協力ありがとう!」
パチ、パチ、パチ、パチ、パチ……
こうして拍手で締めて男子会が終わった。
ノワール「もうお婿に行けないニャ……」
セバス 「実はアリエル様から預かって参りました。聖獣様」
セバスはチュ○ルをノワールに渡した。
ノワール「ニャニャ! ……ペロペロペロ。うまいニャーーーーッ!!」
セバス 「……」
現金な猫であるとセバスは決して言えなかった。
次回の話は翌日の19時になります。
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