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Beautiful Mother Blues 美女はエッチがお好き? その1

 あれから一週間ばかり経ち、俺は再び『Blue Moon』のステージに立っていた。もちろん、約束どおり俺の横にメルはいない。前回からそれほどの時間は経っていないとはいえ、俺のソロステージだ。

 こんな短い期間でステージに立ったのは、メルとのライブの勢いで観客が増えるのではないかと、邪な期待を抱いたわけではない。いや、若干はそんな期待はあったのだけれど……。

 だが、そんな期待は見事に打ち砕かれた。俺の目の前にいるのは、時おり見かける若めの男と、初めて見る客が一人。少なすぎて、普通にパイプ椅子を出して座れるくらいである。

 一つ問題があるとすれば、俺のライブでは常連であったはずの、あの渋いおっさんの姿が見えない。噂によれば、メルという女神を無くした今、新たなる偶像を求め、地下アイドルのライブなんかに入り浸っているのだという。ちくしょう。イメージ丸崩れじゃねえか!

 だが、別にたった一人の常連客がいなくなろうが、口惜しくなんかない。口惜しくなんかないんだからね!

 正直に言えば、もしも客が時おり見る男一人とかだったら、泣いていたかもしれない。だが、今の俺は常連のおっさんに見捨てられようが、そんなことはどうでもいいくらいに浮かれていた。その理由とは……。

 俺は演奏しながらも、ついつい正面の客をチラ見してしまう。客席の最前線、もしかしたら、唾が飛んでしまうかもしれないほどの距離で俺を見つめているのは、とんでもない美女だった。

 年の頃は、俺より二つ三つ上だろうか。長い黒髪は腰まで届き、体にピッタリと張り付くような小さなTシャツからは、はちきれんばかりの大きさのオッパイの形がハッキリとわかる。おまけに、胸元はVの字に大きく切れ込んでおり、今にもシャツから零れ落ちそうになっている。驚くべきことにブラジャーを着けていないようで、大きな膨らみの先端には、プックリとした突起が浮き出ている。いや、最近は付け乳首なんて物もあるみたいだし、一概には言えないのだが……。

 しかし、Tシャツの着こなしを見るかぎり、その下に下着らしい凹凸は見当たらない。自然とそういう妄想になってしまうのも仕方ないだろう。

 さらには、そのスカートの短さである。タイトなジーンズタイプのミニスカートからは、長く綺麗な足がすらりと伸びている。時おり足を組み替える仕草をするのだが、ステージのアオリ照明が当たるのと、その動作が絶妙なシンクロをするたびに、スカートの中からはチラチラと黒いものが見える。

 もちろん普通に考えれば、黒いパンティだろう。だが、ブラジャーを着けていないこと(俺判断)から考えれば、あの黒い物はまさか……、と思ってしまうのも許して欲しい。所詮童貞の俺には、女性のファッションなんてわかるわけ無いし。

 ただ一言言えるのは、それは可憐のクマさんや、メルのプリキュンなどのお子様パンツとは比較にならない、破壊的なセクシーさを感じるものだった。

 もしかしたら、この前デモテープを送った音楽レーベルの関係者かも……。そんな思いも浮かんだが、さすがに仕事で来ているにしては格好がヤラシすぎる。

 そんな美女が、目の前で(たぶん)熱い瞳で俺を見つめているのだ。おまけに、時おり舌を艶かしく動かし、唇をペロリと舐める仕草をする。座ってライブをするスタイルの俺が、少しばかり前かがみで演奏してしまうのも理解して欲しい。

 よーし、ノッてきたことだし、アップテンポに『They’re Red Hot』なんて演っちゃおうかな。もちろん、ホットなタマーレは君のことだぜ!

 などと、童貞の俺に言える度胸など有るはずも無く、何事もなくステージは終わりを告げたのだった。ただ、なんとなくではあるが、その美女をどこかで見たような疑問を残しながら……。

 

 ☆ ☆ ☆


「お兄はん、素敵どしたなぁ」


 それは、ステージから降りようとした時だった。不意に背後から声をかけられ、俺は慌てて振り返る。


「ウチには音楽はようわかりませんけど、熱ぅい感じが伝わってきましたえ。本当に、濡れてしまうくらいに」


 そこには、ステージの間中俺のために?ずっと胸チラやパンチラ(たぶん)を披露してくれていた、あの美女が立っていた。

 

「い、いえ、そんな……。お、俺なんてまだまだですよ……」


 突然声をかけられた俺は、かなりテンパっていた。脳内ではいろいろな口説き文句を考えていたのだが、いざこんな想定外の美女に声を掛けられたら、なんと答えていいのかもわからない。可憐とは平然と話せるとはいえ、所詮は女慣れしていない童貞だ。こんな時、店長なら何と言って会話を続けるのだろう。

 いや、それよりもこの人、最後になんか妙なことを言わなかったか?

 

「いえいえ、そないに謙遜しはらんでも。女を口説く言うんは、何も言葉や外見だけが必要なわけではありまへんえ。特技や情熱いうんも、女を濡らす(・・・)には十分な武器どす」

「…………」


 やっぱりだ。俺の聞き違いかと思ったが、明らかに言っていた。だが、どういうつもりだ。もしかして、俺のステージを見て一目惚れ!?いやいや、そんな都合の良いことが……。まさか……、美人局?けど、こんな金の無さそうな若い男を、わざわざ狙うだろうか?

 関西方面の人なのだろうか。俺は詳しくないからわからないが、京言葉とも関西弁ともつかないような、妙ちくりんな言葉を喋る女性は、頭の回転が追いつかずに黙りこくる俺を気遣ったのだろうか。返答の無い俺を気にせず話しかけてくる。

 

「ウフフフ……。見ず知らずの女に急に声を掛けられましも、戸惑ってしまいますわなぁ。とは言っても、ウチはお兄はんのことを、まったく知らんわけではないんどすけど」


 そんな言葉に、俺の中で少しばかり余裕が出来る。向こうが知っている……、つまり、ネットの動画を見て、俺のファンになった女性なのか?そうか、そういうことか。いやー、あのメルとのセッションも、無駄ではなかったわけだ。


「そっ、そうでしたか。じゃあ、ネットの動画を見て、俺……、いえ、ブルースに興味を?」


 まあ、もしも俺に一目惚れしたのだとしても、いきなり『俺に興味が?』などと聞くのは自意識過剰だろう。ここは無難に、音楽の話題を前面に出すべきだろう。中学時代に友達に借りてやった、恋愛シミュレーションゲームを思い出すぜ。ゲームと違いリセットボタンが無い以上、選択コマンドは慎重に……だ。

 そういや、いつものごとく不意に部屋に入って来た可憐にゲームをやっているのを見られた時、なんか不機嫌になってたな。まあ、あいつも女子中学生だったし、単純に恋愛ゲームをしている俺がキモかったんだろう。そのくらいの歳の女の子は、妙に潔癖なとこがあるしな。


「ねっと……?ああ、まあ、そのようなもんどすか。遠くを覗き見れるゆうたら、似たようなもんですやろ」

「はい?」

「いえいえ、なんでもあらしません。それよりも、いかがどすか?」


 そう言うと、美女は俺との距離を更に詰めてきた。そして……。

 

「うひっ!」


 思わず妙な声を出してしまった。なぜなら、美女は俺の胸に指先を当て、くりくりと動かし始めたのだ。いや、胸と言ったが、性格にはもっとピンポイントに胸の先端、つまりは乳首の部分だ。

 ぶっちゃけ、男の乳首が弄られている絵面など、誰が見たいんだと思うかもしれない。だが、俺はこの時理解したのだ。別に授乳できるわけでもないし、男の乳首など人類が存続して行くうえで何の必要もない。では、なぜ男に乳首があるのか。それはこの時のためである。断言してもいい!

 女性が乳首を弄られて、気持ち良さそうにしている(AVでしか見たことはないが)ように、男にだって乳首に性感帯はあるのだ。いや、このことをもっと世間に知らしめるべきだ!男が乳首を責められるAVとかも、もっと増やすべきだ!

 …………。いかん。つい暴走しかけたが、それほどまでに美女の責めは的確だった。なんていうか、その動きは俺が気持ち良くなるポイントを、知り尽くしていてるかのように……。おかげで俺の姿勢は、どんどん前傾姿勢になって行く。というか、このまま弄られ続けられたら、少しばかりヤバいことになる。

 だが、このまま行ったら発射してしまうのを見越したように、美女は指先の動きを止める。残念だが、正直助かった。

 

「ウフフ……。若いって素敵どすなぁ。良かったら、この後二人で少ぉしお話しまへんか?」

 

 はちきれんばかりのオッパイを密着させ、耳元で囁く美女の吐息を感じてしまったら、その言葉に抗えるはずもない。


「は……、はひっ!」


 俺は、空気の抜けたような声で即答するしかできなかった。

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