第12話:『大丈夫』という名の引導
日付が変わった6月7日、午前1時。静まり返った自室でスマートフォンを開くと、そこには唯月からの長文の謝罪と縋るような懇願が届いていた。だが、私の指先が刻んだのは修復の言葉ではなく、冷淡な二行の拒絶——『大丈夫』『もう二度と行かないから』。パニックに陥り、一度送信した『電話かけて良い??』をすぐに取り消す彼女の狼狽。液晶を裏返し、目を閉じた私は、大宮の夜の残響を自ら締め出していく。壊れた関係に引導を渡す、冷たい深夜の孤独。
日付が変わって、6月7日の午前1時。
静まり返った自室で、私は一度だけスマートフォンの画面を開いた。
23時55分に届いていた、彼女からの通知。
そこには、私の席で起きていたことへの必死な謝罪と、「お別れは本当に嫌だから連絡くれたら嬉しいです」という、縋りつくような長い文字列が並んでいた。
だが、私の指先が画面に刻んだのは、修復を望む言葉ではなかった。
『大丈夫』
『もう二度と行かないから』
極めて短く、冷淡な二行だけを突き放すように送信する。
直後、画面の向こうで『電話かけて良い??』という焦りの混じった文字が躍った。
だがそれも数秒ののち、パニックに陥った彼女の手によって送信取り消しにされ、静かに消えていった。
液晶の明かりを消し、画面を裏返す。
私は深い溜息とともに、ゆっくりと目を閉じた。
(――これで、終わりだ)
そう自分に強く言い聞かせるように、胸の中にくすぶる大宮の夜の残響を、意識の奥底へと締め出した。




