14話 バリケードの中
丸本珠紀ちゃんとは、ほとんど対話にならなかった。
池崎さんと真知さんが、二階の一室の押入れに隠れていたところを発見したらしい。
珠紀ちゃんは一度そこから出て、ぼくに警告を発したものの、すぐに元いた場所へ潜り込み、泣き叫び、震え、頑なに出てこなくなった。
今は、珠紀ちゃんと唯一の顔見知りである真知さんが、押入れの外から優しく呼びかけ、落ち着かせようと懸命に頑張っている。
お父さんと池崎さんは一階でトイレのドアをじっと見つめながら話し合っていた。
「よーするに、中になにか、いるな」
「ええ、多分、だれか、だとは思いますけど……ただ、なんで出てこないんでしょうね?」
二人とももう気を取り直しているらしく、驚くほど声が落ち着いていた。ぼくなんてずっと身体が小刻みに震え続けているのに。
そして二人は、
「よし。じゃんけんだ。じゃんけんで負けた方が外から回り込んでこの中を確認しよう。トイレなら多分、外に小窓があるはずだから」
「おっけー、です。じゃんけん」
「ぽん」
本当にじゃんけんをした。負けた池崎さんが、
「ぐああ……なんかイヤな予感がしたんだよなあ」
そんなことをぼやきながら小走りに玄関を出ていく。ぼくは二人の余裕っぷりに半分、感心、半分、呆れていた。その時、二階から、
「池崎さん! 石川さん! ちょっと上がってきて頂けませんか?」
そんな真知さんの呼ぶ声がした。ぼくとお父さんは一度、顔を見合わせてから急いで二階に上がる。真知さんは珠紀ちゃんのいる部屋を出て、廊下に立っていた。
お父さんを認めると困ったような顔で、
「今、LINEが一瞬だけ通じたんです。で、グループLINE……主にこの島の若い人たちとのグループLINEでこんな写真が貼られていて」
そんなことを言いながらその画像を指でピンチして拡大した。ぼくにも見やすいようにスマホの位置を少し下げてくれる。正直なところ暗すぎてなにが写っているのかよく分からなかった。
「……林の中?」
「人がいるの、かな?」
お父さんとぼくで首を捻る。多分、木々の間に人らしき影が幾つか映っている。
「ただ、この写真に添えられている文章が気になって……送り主は須磨〔すま〕くんと言って、ここからもう少し先に行ったところにある水産加工場で働いている男の子なんですけど」
真知さんが『スマ』という人のメッセージも示してくれた。
そこにはこう書かれていた。
『人と人がつながっている。やべえ。はやく』
慌てて送信したのかそこで文章が途切れていた。
「……どういう意味でしょう、これ?」
お父さんに尋ねる真知さんの声は困惑と不安に満ちていた。
「……つながっている?」
お父さんが顎に手をやって眉間にしわを寄せる。同時にびっくりするくらいの勢いで池崎さんが二階に駆け上がってきた。
「や、ば」
顔面が見たことないくらい真っ青だった。
「やっば、い、すよ、センパイ」
いつも飄々としている池崎さんが明らかに激しく動揺していた。その姿を見てぼくや真知さん以上に驚いていたのがお父さんだ。
「しゅん。どした?」
目を見開いて尋ねる。池崎さんは引きつったような笑いを浮かべ、
「三」
指を三本立てた。
「三人いました」
「は?」
「え?」
声を上げたお父さんとぼくの目の前に池崎さんはその指を近づけ、
「あのトイレの中、人が三人いました。一人はおじいさん。一人は若い男。一人は中年くらいの女性。みっちみちになって」
肌が粟立った。
(あの中に? あんな狭い中に三人?)
そんな気配が一切しないことが逆におぞましい。先ほど激しい物音を立てていたことより、今、トイレが無機質に静まり返っている。その事実の方が百倍恐ろしかった。
池崎さんは早口で続ける。
「そいつら、僕が小窓から覗き込むと一斉にこちらに目を向けてきて……なのに身体は微動だにせず。感情もなく。淀んだ目だけ、キロってこちらに向けてきて」
見れば池崎さんは笑いながらも震えていた。
「で。そいつら、全員」
池崎さんは自分の右と左の手の平を握らせた。
「こうやって手と手をつないでいて」
真知さんが喉の奥で悲鳴を上げていた。ぼくはよろめく。池崎さんは苦い顔で、
「そのせいでドアノブに肩とか頭が引っかかって自分たちではドアを開けられないみたいなんです。手を解けばすぐに出てこれるはずなのに。なぜかずっと手をつないだまま」
お父さんが、
「――人と人とがずっとつながっている、って訳か」
押し殺した声で呟いた。ぼくもはっと思い出していた。
(あのLINE! 須磨って人から届いたメッセージ! そういう意味なの?)
人と人が手をつないで、つながっている。まるで鎖のように。蛇のように。
その時、どこか遠いところで車のクラクションが鳴った。それと誰かの怒鳴り声。ぼくたちは示し合わせたように近くの部屋に飛び込み、窓際まで走り寄った。大人たちの身体で前が塞がれたけど、真知さんがぼくも外を覗けるように少し場所を空けてくれる。
見えたのは煙るような雨の中、立ち並ぶ家々と小さな果樹園、車やトラクターなど。それと少し目立っているのが送電線を支える二本の電柱の上にちょっとした小屋みたいなのが乗った多分、変電のための設備。街灯がかなり明るく点いているのと、ほとんどの家に黄色い明かりが灯っているため、ぼんやりとだけどこの地区全体が見渡せる。
灰色に沈んだ景色の中で、唯一、動きを持っているがこの家から少し下った道を横切る一台の軽トラックだった。
黄色いヘッドライトをつけ、のろのろと動いていたけど、やがて完全に停止し、再び大きなクラクションを鳴らした。
そしてよく聞き取れない怒声。多分、〝危ないだろ!〟とでも言ったんだと思う。運転席から短パンとTシャツ姿の大柄な男性が降りてくる。
指を進行方向に突きつけ、また大きな声で文句を言っていた。
ぼくたちの位置からだと最初は分からなかったけど、そのおじさんが指さす方向から、ヘッドライトが照らす淡く黄色い空間に人が一人現れた。
やがて二人。三人。
四人。
五人。
その全員が。
(手をつないでいる!)
身体中の毛が逆立つような思いがした。ぼくは思いっきり叫んでいた。
「逃げて!」
自分でも分からない衝動に駆られて叫んでいた。ぼくの周りに立っていた大人たちはぼくの行動にぎょっとしていたみたいだけどすぐに、
「おい! 逃げろ!」
「なんかよく分かんないけど早く逃げろ!」
一緒になって声を上げてくれた。軽トラックを運転していたおじさんは、お父さんと池崎さんが発したその騒ぎに気がついたみたいで、怪訝そうな顔をこちらに向けてくる。
「はやくう!」
ぼくはもう一度、必死で呼びかけたけどもう遅かった。ヘッドライトの中に現れた五人はそれぞれつないだ腕を波のようにくねらせ、そのくねりを推進力に変えるようにして、するするとおじさんに近づいていった。そしておじさんをまるで古い遊びのカゴメカゴメのように取り囲む。
次の瞬間、あっという間にその包囲の輪が小さくなった。
おじさんは、
「あ」
一回だけ大きくはっきりと叫んで右手を突き上げた。やがて五人が作る人の鎖の中にその身体が完全に沈み込む。三秒くらい経つと再び人の輪が解け、おじさんが地面に倒れ込んでいるのが見えた。
「お、おい。なんだ、あれ」
お父さんが指さす。
おじさんはうつ伏せになったままだけど、いつの間にかその右手が人の鎖の先端――青い作業着を着た若い男の人の左手と、しっかりつながっていた。
「ひ!」
真知さんが口を両手で押さえて悲鳴を上げる。そばにいるぼくの身体にもその震えが伝わるほど激しく動揺していた。
「今、気がついたんですけど、あれ……あの青い作業着の男の子」
真知さんはお父さんの服をぐっと掴んで訴えた。
「あれ、たぶん、須磨くんです! さっき写真付きのLINEを送ってきた男の子!」
お父さんが驚いて振り返った。ぼくも固まっている。須磨さんはさっき警告のような文章を送ってきた人だ。
それが今、他の人たちとの数珠つなぎになっていて今度は新しい犠牲者をその輪の中に加えている。
やがてゆらり、とTシャツ姿のおじさんが立ち上がった。まるで天から糸で吊られて引っぱられたみたいな不自然な動き方だった。
ぼくらが固唾を吞んで見守っていると、仲間を増やした人の鎖はこちらへ首を巡らしてきた。一斉に虚ろな目を向けてくる。
そのまま。
「来る! こっち来るぞ!」
池崎さんが上ずった声で叫んだ。手をつないだ六人は腕をくねらせ、坂を登ってこちらへ一直線に進んでくる。まるで本物の蛇が暗い夜道を這い上がってくるみたいだった。
それと同時にさっきまで静まり返っていたトイレのドアがまた激しく叩かれ始めた。
不安を煽る大きな打音。
どん。
どん。
どん。
近寄ってくる人蛇に呼応しているかのようだった。
ぼくらは皆、あまりの出来事に一瞬だけ放心状態になったけど、隣の部屋から珠紀ちゃんうが悲鳴を上げ始めたので、はっと我に返った。
まず、池崎さんが無言で走り出した。階段を恐ろしいほどのスピードで駆け下りていく。恐らく開けっぱなしだった玄関を施錠しにいったのだろう。
あの人蛇は明らかにぼくたちを次のターゲットとして向かってきていた。
このままだと家に侵入されてしまう。
お父さんが真っ青な顔をした真知さんの肩をがっしりと掴んで目を見ながら力強く指示を出す。
「真知さん! あなたは珠紀ちゃんについていてあげてください! 絶対に離れないように!」
真知さんは何度も頷き、よろめくように隣の部屋へと向かった。
その時、階下から頼もしい声が聞こえてきた。
「センパイ! 玄関、閉じ終わりました! このまま一階見て回ります!」
「たのむ!」
お父さんは怒鳴り返し、少しためらったものの、
「流時! 俺と一緒にトイレの前にバリケードを作るのを手伝え! このままだと扉が壊されちまう!」
そう言って階段をドタドタ駆け降りていった。ぼくもお父さんの後をついていく。
池崎さんが飛ぶように走りながら一階を見て回っている。
ずしん。
ぎっ。ぎっ。
トイレのドアは少しずつ軋み音を大きくさせていっている。確かにお父さんの言うとおり、このままだとまずい。扉が破られてしまう。
ぼくとお父さんはとりあえず廊下におかれた傘立てや電話台なんかも引きずってきて前に置いた。だけどそれだけじゃ心許ない。
そこでダイニングテーブルを運ぼうと台所に入ったちょうどその時、
「一階、ぜんぶ、見て回りました! とりあえず鍵は全てかかってます!」
池崎さんが手助けしに来てくれた。お父さんと対角の位置になるようにテーブルを持ち上げたところで、
「……」
池崎さんの動きが止まった。
ぼくもお父さんもそちらを振り返る。そして見てしまった。
台所の窓。白いブラインドが半開きになっている。その外側に虚ろな目をした人たちが並んでこちらを覗き込んでいた。
その中には青い作業着を着た須磨さんや軽トラックを運転していたおじさんもいる。
(もう近づいてきていたんだ!)
ぼくたちが硬直している間、人の列はすうっと流れるように動き、同時に。
がん!
がん!
目の前の勝手口のドアが激しく揺れ出す。人蛇たちが恐らく体当たりでもしているんだろう。
お父さんと池崎さんも咄嗟にどうしたら良いか判断に迷っているようだ。その間、ぼくはあることに気がついて押し殺した声で叫んだ。
「お父さん! トイレのドアが!」
今までと明らかに音が変わり始めている。みしみし、から、めりめりに。
もうもたない。扉が壊れる。その時、お父さんが大声で叫んだ。
「流時! しゅん! 二階に上がるぞ!」
一階は放棄して二階に立て籠もる決断をしたんだ。手で合図を出され、まずぼくが台所を飛び出して二階に駆け上がる。その後をお父さん、最後に後ろの安全を確認しながら池崎さんが続く。
そしてぼくら三人は息を切らしながら真知さんがいる部屋になだれ込んだ。
「あ、あの」
真知さんが小さな女の子を抱き締めながら怯えた顔でこちらを見つめてきた。
「下で、一体なにが?」
「はっはは。なに。ちょっとしたイレギュラーってやつですよ」
池崎さんは多少、息が上がっているけど余裕のある表情をしている。そしてお父さんと協力して勉強机やタンスを次々にドアの前に積んでいった。
この部屋はどうやら普段、珠紀ちゃんが使っているらしく、棚には可愛らしいぬいぐるみがたくさん飾られ、壁には色々な種類の猫の写真がペタペタと貼られていた。
「すまない」
「ごめんな」
お父さんと池崎さんは口々に謝りながら室内にある家具でバリケードを築いていく。ぼくも内心で謝罪しながら大人たちを手伝った。
だけど、部屋の主である珠紀ちゃんは真知さんにしっかりしがみつき、その胸元に顔を埋め、文句を言うことは一切なかった。もう泣きも、叫びもせずただ震えている。その様子がひたすら痛々しい。
「これで当分は大丈夫だな」
最後に一番の重量物であるシングルベッドを家具の山に加えて、お父さんがふうっと溜息をついた。池崎さんが額の汗を拭って黙って天井を見上げている。
ぼくは耳をそばだてていた。
(もうトイレの扉は破られたのかな? もう二階まで上がってきているんだろうか?)
そんなことを想像していると背筋がぞわぞわしてきた。今のところバリケードの向こうにはなんの気配もなかった。
「いったい」
真知さんが震え声で誰にともなく言った。
「なにが起こっているのですか?」
しかし、誰もその質問に答えることはできなかった。
「今のうちに脱出の方法を考えとかないとですね」
池崎さんが真知さんから目をそらしながらぼそっと言った。お父さんは黙って頷く。
ぼくはたまらず、
「でも、美津亜ちゃんが!」
叫んだ。まだ見つかっていない。大人たちは困ったような、哀しそうな、はっとしたような顔をそれぞれぼくに向けてきた。
お父さんが低い声で真知さんに質問した。
「珠紀ちゃんからなにか美津亜ちゃんに関することは聞けましたか?」
真知さんが小さく頷き、喋り出した。
「あまり要領を得ない断片的な感じですけど――ただトイレに人を閉じ込めたのは、美津亜の機転だったみたいです」
ぼくはある可能性を思いついていたし、お父さん、池崎さん、そして恐らく真知さんも薄々、察しているのかもしれない。
あのトイレの中にいた人たちは珠紀ちゃんのご家族である可能性が非常に高かった。
だから、珠紀ちゃんはこんなに死ぬほど怯えているんだ。
真知さんは少し涙ぐみながらそんな珠紀ちゃんの頭を撫で、気丈に言った。
「そして珠紀ちゃんを守るために別の一団を引きつけ、外に飛び出していったみたいなんです。珠紀ちゃんに隠れているよう言い残して」
ぼくはたまらず立ち上がって窓際に向かった。
(美津亜ちゃん、無事で。お願いだから)
ぼくは外の景色を必死で確認した。またこちらに這い寄ってくる人の鎖を見つけてしまうのではないかと内心、恐ろしかったけど、どこかに美津亜ちゃんがいるかもしれないという想いがその恐怖を上回った。
だいぶ、雨が小降りになってきている。
黄色く光をともす家々。
視界の範囲に動くモノは見当たらない。
(そう言えばさっき来る途中で会った山口さんたちは大丈夫なんだろうか?)
背後でお父さん、池崎さんがぼそぼそと小声で相談しあっているのが聞こえる。真知さんが珠紀ちゃんに涙混じりの優しい声をかけていた。
ぼくは頭をフル回転させていた。
美津亜ちゃんはこの家の外にいる。そして必ず無事でいると考える。
するとどういう行動を取るだろう?
(子供の足でこの集落から歩いて離れるのはちょっと考えにくい。立てこもれる空間、隠れられる場所で助けを待っていると考える方が自然だ。それならどこだろう?)
その場合、さっきのクラクションや騒ぎは当然、耳にしているはずだ。そんなに広い集落じゃないので、もしかしたらぼくたちがこの家にやってきたことも把握しているのかもしれない。
ただなにかアクションを起こすと人蛇に見つかってしまう可能性が高くなる。声も上げられない。姿も見せられない。
(なら、美津亜ちゃんは一体どうする?)
その時、ふとあることに気がついてぼくはガラスに額を押しつけて目を凝らした。
眼鏡が結露の水で濡れたので何度も指で拭く。
じっと祈るように視線を据えた。
そして見つけた。
ぶるっと身体が震え、口元が自然と緩むのを自覚した。
(美津亜ちゃん!)
同時に背後でナニかがぶつかるような音が規則正しく聞こえ始めた。振り返ると積み上がった家具の山がほんのわずか振動している。
「ちくしょう。来やがったか……」
「まあ、このバリケードの量ならさすがにすぐは破れんでしょう」
お父さんと池崎さんが緊張感のある声で囁き合っていた。真知さんは珠紀ちゃんをぎゅっと抱き締めている。
ぼくだけは嬉しくて叫んだ。笑っていた。
「お父さん! 美津亜ちゃんの居場所、見つけたよ!」
大人たちの視線がぼくに集中するのが分かった。ぼくは早口で言って手で差し招いた。
「あれ! あの二本の電柱の上! はしごを上がったところに変電設備があるでしょ? あそこに美津亜ちゃんは登ったんだと思う」
「はあ?」
「ほんとうかい、流時くん?」
お父さんと池崎さんがどやどやと窓際へ近寄ってきた。真知さんも珠紀ちゃんを抱えたまま無言でぼくの横に立った。
「いや、見えないけど」
「多分、死角に隠れているんだよ。でも、ほら、よーく見て!」
ぼくは必死で指さした。
「あそこの下の方に結わえてあるでしょ? 赤い布みたいなの! あれ、美津亜ちゃんのリボンだよ! アレがぼくたちに対するメッセージなんだよ!」
お父さんと池崎さんはそれでも辺りが薄暗い上に対象物が小さすぎて全く見えていないみたいだ。ぼくだってすごく意図的に探したからようやく分かったくらいだ。でも、真知さんは視力が相当、良いようで、
「美津亜……ほんとうだ。多分、あれ、ほんとうに美津亜のリボンです」
口元を片手で覆って本格的に泣き出した。ずり落ちそうになった珠紀ちゃんをしゃがみ込んで抱え直している。
「すごいな、流時くん。どうやって分かったんだい?」
池崎さんが驚きと感心の入り交じった表情でぼくを見てくる。お父さんは、
「ナイスだ。息子」
それだけ言ってぼくの頭をくしゃくしゃ撫でた。決意のこもった声で、
「なら、早くあそこから美津亜ちゃんを助け出してあげないとな」
ぼくは黙って頷く。池崎さんが苦笑しながら顎を撫でた。
「ただ我々もここにどん詰まっているのは一緒ですからね。なんとか方法を考えないと」




