第五十三話 東方辺境伯の不可解な断罪5
混乱の後始末に目処が立ったので、俺たちは詳しい状況をジークフリートに報告した。
「東方辺境伯は『魔女』セラフィナの呪いを受けて操られていたようだ」
ジークフリートが言った。
「オットー様は正気に戻られたのですか?」
クローデリアが尋ねると、ジークフリートが頷く。
「はい、詳しいことはこれから聞きますが、領民を殺していないと供述を変えています。話す様子を見ても、意識ははっきりしています」
クローデリアは安堵した表情を見せる。
「しかし、なぜセラフィナは東方の辺境を標的にしたのでしょうか? どこでもよかったのかもしれませんが……」
俺は疑問に思っていたことを尋ねた。
「セラフィナの最終目的は、王都と王政府への復讐だったのだろうが……まあ、それも逆恨みだがな。自分であれだけひどい事件を起こしておいて、失敗の腹いせに王都を狙うなど……。
ともかく、呪具となった舌を集めるには、東方の辺境が最も簡単だったのだろう。東方の辺境の人々は、王都から来た元聖女とでも言えば、従順になるだろうからな。辺境の人間であればセラフィナの顔など見たこともないだろうし、光の魔法でも見せておけば信じてしまうだろう。操るのも騙すのも殺害するのも簡単だっただろう」
納得がいくような、いかないような……。そもそも今まで辺境の人々に興味を持ったこともなかったから、そんなものだと言われても、俺は釈然としない。
「それにしても、北方に続いて東方まで、なぜ辺境で事件が起きているんですかね。北方の事件はセラフィナが犯人ではなさそうですよね。手足を切断する必要はなかったわけですし」
「『反断罪戦線』の呪い……」
クローデリアが呟く。
聖女エリシアが残した言葉が思い起こされる。「種は蒔かれた」と彼女は言った。反断罪戦線の精神が、「断罪」を非難するために猟奇的な連続殺人を起こしているというのか?
「北方の事件は引き続き調査する。なかなか根深い事件かもしれんが……」
「何かわかったことがあるのですか?」
「……いや、まだ話すことはできないが、核心には近づいている」
何だよ、それ。
「わかったら教えてくださいよ。あの犯人こそ、ちゃんと断罪しないといけないですから」
そう言う俺に、ジークフリートは曖昧な苦笑いを返した。
「次は南方ですかね」
何気なく言ったつもりが、ジークフリートの顔がこわばった。
なんかありそうだな……。もう猟奇事件はうんざりなんだけど……。




