第五十二話 東方辺境伯の不可解な断罪4
死を覚悟した俺はクローデリアの方を見た。最期にこれまでの感謝と、俺の想いを伝えなければと思ったのだ。
「クローデリア……様」
俺は必死に這った。
俺は自省によって、「剣姫」クローデリアさえ倒せなかった断罪聖獣まで倒したのだ。
他のやつらとは、精神汚染への耐性が違うのだ。
「ユウ……マ……。私……もう……だ……め」
クローデリアが涙を流し、苦しそうに声を出す。
俺は必死に手を伸ばす。
死の瞬間に……せめてその手に触れさせてください……。
俺は最後の力を振り絞り、一歩を踏みしめ、クローデリアに向けて倒れかかった。倒れながら、俺の手が、剣にかけていたクローデリアの手に触れる。
そのとき、俺の体重がかかった衝撃で、剣の刀身がわずかに鞘から出た。
その瞬間、セラフィナの呪いの煙に触れた刀身が光を放ち、一気に周囲の煙を吸収した。
……声が消えた。頭の痛みも嘘のように霧散した。
断罪聖獣の角の破邪の力……? セラフィナの闇の力を無効化したのだ……。あの厄介な力が今は味方になってくれるとは……。
立ち直ったクローデリアが即座に剣を抜きながら立ち上がった。
「静寂の宣告」
間髪を入れずクローデリアが剣技スキルを放つと、セラフィナの高笑いが止まった。その剣筋は俺の目にはまったく見えなかったが、確実にセラフィナを捕らえたようだった。
「ちくしょうぉぉぉ!」と断末魔の声を上げながらセラフィナが膝をつき、地面に倒れ込んだ。
セラフィナの呪いの魔法が途切れ、クローデリアの「断罪聖剣」が呪いの煙を吸収していく。
瞬く間に、王城前広場の煙が晴れていく。
呪いの根源が絶たれた今、王都に巻き散らかされた煙もやがて消えていくだろう。
「助かった……。ありがとうございます、クローデリア様」
クローデリアが俺を見て、小さく微笑む。
「ユウマが剣に込めてくれた祈りが、呪いから守ってくれたのね。またあなたに助けられてしまったわ」
いや、俺じゃなくて断罪聖獣の力でしょう。
ぜっんぜん俺が助けた感じはしないんだけど。
「ともかくも、よかったです」
本当に……王都の人々が全滅するところだった……。




